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知らない天井だった。
「ご主人様!」
すぐ横から聞き慣れた声が響く。
視線を向けると、安心したような表情のはなが駆け寄ってきた。
「起きましたか!」
「……ん。」
起き上がろうと力を入れる。
「いっっっ!!」
全身に激痛が走った。
まるで全身が酷い筋肉痛になったような痛み。
指一本動かすだけでも辛い。
「無理しないでください。」
「今はまだ動かない方がいいです。」
仕方なく目だけを動かして部屋を見渡す。
宿の一室らしい。
少し離れた椅子には、あの助けた少女も座っていた。
俺が目を覚ましたことに気付くと、嬉しそうに頭を下げる。
「ここは?」
「目的地の町、フェルンです。」
「倒れたご主人様を運び、そのまま到着しました。」
「現在は宿の部屋です。」
「クロードは依頼の報告へ。」
「少女も健康状態に問題はありません。」
「そして、ご主人様は三日間眠っていました。」
「三日!?」
身体を起こそうとして、再び激痛に襲われる。
「いだだだだっ!」
「だから言ったじゃないですか。」
はなが呆れたようにため息をつく。
俺は天井を見上げた。
「そうだ。」
俺ははなへ視線を向ける。
「ゼノスから色々聞いたよ。」
「あと、謝っといてくれって。」
「ありがとうとも言ってたよ。」
はなの目が少し潤む。
「……そうですか。」
「ご主人様らしいですね。」
「あとさ。」
「厄介なのが来るかもしれないって言ってたんだけど。」
「何か心当たりある?」
はなは少し考え込み、小さくため息をつく。
「……おそらくあります。」
「ですが、今は考えても仕方ありません。」
「来た時に考えましょう。」
「聞かなかったことにしていい?」
「駄目です。」
即答だった。
「当分動けそうにないな……。」
「そうですね。」
「最低でも数日は安静でしょう。」
俺は少女へ視線を向ける。
「そういえば。」
「これからどうする?」
少女は少し俯いた。
「私は……盗賊に攫われました。」
「お家には帰りたいです。」
「でも……村から出たことがなくて。」
「帰り道が分かりません。」
「村の名前だけなら分かります。」
「シルフィア村です。」
「それと……。」
「ちゃんとお礼もしたいです。」
俺は考える間もなく答えた。
「じゃあ送るよ。」
「それまで一緒にいよう。」
少女は目を丸くし、嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
その時だった。
はなが少女をじっと見つめる。
「……ご主人様。」
「この子。」
「認識阻害の魔法が掛かっています。」
「え?」
少女自身も驚いた表情を浮かべる。
「そうなんですか?」
「私は何も……。」
はなは俺へ視線を向ける。
「解除してもよろしいでしょうか?」
「痛くないなら。」
「お願いします。」
「承知しました。」
はなが少女へ手をかざす。
「解除。」
淡い光が少女を包み込む。
すると。
少女の姿がゆっくり変わっていく。
隠されていた長い耳が現れた。
透き通るような白い肌。
淡い金色の髪。
幻想的な美しさ。
「……。」
「……。」
「エルフだ。」
俺は思わず呟いた。
「異世界あるある!」
喜んだ勢いで身体を動かし――
「いっっっったぁぁぁぁ!!」
全身に激痛が走る。
「だから無理しないでください。」
はなの呆れた声だけが、部屋に静かに響いていた。




