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「じゃあ、まずはその子を助けようか。」
葵は穏やかにそう言うと、軽く人差し指を振った。
次の瞬間。
少女の首に付けられていた隷属の首輪が音もなく消え去る。
同時に、柔らかな光の幕が少女を優しく包み込んだ。
少女の表情から苦痛が消え、首輪の跡も傷も見る間に癒えていく。
続けてもう一度、指を振る。
少女の手に握られていた爆裂結晶がふわりと宙へ浮かび、同じ光の幕に包まれながら葵の手元へと移動する。
「これで安心だね。」
葵は小さく微笑むと、盗賊たちへ視線を向けた。
「もう君たちとは、同じ場所にいることすら嫌なんだ。」
「……さようなら。」
静かに目を閉じ、語りかけるように言葉を紡ぐ。
「美しく舞い。」
「儚く咲き誇れ。」
「おいで――胡蝶。」
その瞬間。
一匹の蝶が現れた。
透き通るような羽。
七色に輝く幻想的な姿。
あまりの美しさに、その場にいた誰もが息を呑む。
次の瞬間。
一匹だった蝶は光となって分かれ始める。
二匹。
三匹。
四匹――。
やがて盗賊の人数と同じ数の蝶が空を舞っていた。
幻想的な光景に、誰もが目を奪われる。
まるで世界から音が消えたように。
時間だけが止まってしまったかのようだった。
蝶たちはそれぞれ一人ずつの盗賊へ舞い降りる。
誰一人、その美しさから目を逸らすことができない。
そして。
全ての蝶が盗賊へ止まった、その瞬間――。
轟ォォォォッ!!
無数の灼熱の炎柱が一斉に天へ噴き上がった。
悲鳴は一つも聞こえない。
盗賊たちは炎に包まれた瞬間、肉体ごと蒸発する。
灰すら残らない。
数秒後。
炎は静かに消え去った。
そこには盗賊たちがいた痕跡は何一つ残っていなかった。
まるで最初から存在しなかったかのように。
葵は少女の前まで歩くと、その様子を見て小さく頷く。
「うん。」
「ちゃんと解呪も回復も効いてるみたい。」
そう言って苦笑する。
「久々だったから少し心配だったんだよね。」
葵ははなの方を見た。
「白虎。」
「この子の経過を見てあげてね。」
はなは慌てて頭を下げる。
「分かりました!」
葵は少し照れくさそうに笑う。
「さて。」
「僕の普通の感覚で術を使っちゃったからさ。」
「反動で、多分三日くらい寝込むと思う。」
「だから心配しないでね。」
そう言ってクロードへ視線を向ける。
「白虎も……えーっと。」
「今はクロードだっけ。」
「二人とも色々聞きたいことはあるだろうけど。」
「そろそろ限界かな。」
「寝ている間に、葵とは少し話しておくよ。」
そして最後に、いつもの優しい笑顔を浮かべた。
「じゃあ。」
「二人とも、またね。」
その言葉を最後に。
葵の身体から力が抜ける。
ドサッ。
「ご主人様!!」
「葵!!」
はなとクロードは同時に駆け寄り、倒れた葵を抱き支えた。




