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黒い扉が現れた。
……いや。
よく見ると、それだけじゃなかった。
扉の前には白い台座が現れ、その上には人の頭ほどの大きさの水晶玉が静かに置かれている。
「こんなの、さっきまで無かったよな?」
四人で顔を見合わせながら、水晶へ近付く。
「触ってみましょうか。」
そう言ったのは田中さんだった。
誰も止める間もなく、水晶へ手を置く。
次の瞬間――
『個体を確認しました。』
機械のような、感情のない声が部屋中に響いた。
「しゃ、しゃべった!」
俺が驚いて後ずさる。
しかし声は構わず続ける。
『これより説明を開始します。』
『あなた方は既に死亡しています。』
空気が止まった。
誰一人として言葉を発しない。
『現在、魂の転移処理を行っています。』
『触れた者の魂の情報及び生前の経歴を読み取り、最も適した転移先を決定します。』
『決定後、この扉は対象者が進むべき世界へ接続されます。』
俺は思わず口を開く。
「つまり……異世界ってこと?」
『基本的には、別世界への転移、または転生となります。』
『魂は世界を巡り循環することで、それぞれの世界の均衡が維持されています。』
「つまり俺たちは、その循環の一部ってことか。」
『肯定。』
田中さんが落ち着いた様子で質問する。
「質問してもよろしいですか?」
『許可します。』
「行き先は一つだけなのでしょうか?」
『複数の世界が存在します。
対象者に最も適した世界へ接続されます。』
「自分で選ぶことは?」
『原則、不可能です。』
「例外はありますか?」
わずかな間を置いて、水晶が答える。
『ごく稀に、魂の循環へ適応できない個体が存在します。』
『その場合は別の措置が取られます。』
「その措置とは?」
『該当者のみに説明します。』
「確率は?」
『極めて低確率です。』
それだけ言うと、水晶は静かになった。
「なるほど……。」
田中さんが頷いた、その時だった。
水晶が再び光を放つ。
『生前情報の読み取りを開始します。』
「え?」
『対象者。
田中 竜司。』
田中さんの表情が固まる。
『職業。
武器・麻薬を主に扱う闇ブローカー。』
「……。」
『殺人、人身売買、違法取引など、多数の犯罪行為を確認。』
『自己利益を最優先とし、利益のためであれば手段を選ばない。』
『部下及び仲間との関係は金銭による利害のみ。』
『死亡原因。』
『部下の裏切りにより敵対組織へ情報が流出。』
『取引現場において襲撃を受け死亡。』
部屋が静まり返る。
さっきまで優しそうに笑っていた田中さんは、ゆっくりと目を閉じた。
そして――
「……全部、本当ですよ。」
誰も言葉を返せなかった。




