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「へへっ。」
盗賊の一人が下卑た笑みを浮かべる。
「護衛は二人か。」
「ま、それでも問題ねぇ。」
「お前ら。」
「護衛は殺せ。」
「商人は絶対に殺すな。」
「そいつはアイテムボックス持ちだ。」
「生かして奴隷にする。」
「一生荷物持ちとして働いてもらうからなぁ!」
盗賊たちが下品に笑う。
その言葉にロイドさんの顔が青ざめる。
クロードは静かに大剣を抜いた。
「葵。」
「はい。」
「ロイドさんの護衛をお願いします。」
「分かりました。」
俺はロイドさんの前へ立つ。
はなも俺の隣で静かに周囲を警戒していた。
「行きます。」
クロードが一歩踏み出す。
次の瞬間。
ズバッ!!
一人目の盗賊が吹き飛ぶ。
「なっ!?」
「速ぇ!」
盗賊たちが慌てて距離を取る。
しかし。
ズバッ!
ズバァッ!!
次々と盗賊が斬り伏せられていく。
「つ、強ぇ!」
「なんだこいつ!」
盗賊たちは完全に押されていた。
その時だった。
「うおぉぉぉ!!」
森の中から一人の盗賊が飛び出してきた。
「しまっ!」
俺は反射的にロイドさんの前へ飛び出す。
ガキィン!!
何とか剣で受け止める。
「邪魔だぁ!」
「くっ!」
剣を交える。
(人だ。)
(相手は人間なんだ。)
コボルトやウルフとは違う。
剣を振れば、本当に人を斬ることになる。
どうしても踏み切れない。
(分かってる……。)
(でも……。)
攻め切れない。
守るだけで精一杯だった。
その時。
「おい!」
盗賊の怒鳴り声が響く。
「全員止まれぇぇ!!」
戦っていた盗賊たちが一斉に距離を取る。
クロードも動きを止めた。
盗賊たちの馬車。
そこから、小さな女の子が引きずり出される。
年齢は十歳くらい。
ボロボロの服。
怯えきった表情。
首には黒い首輪が付けられていた。
「あれは……。」
クロードの表情が変わる。
「隷属の首輪。」
少女は盗賊の命令に逆らうこともできず、震える両手を前へ差し出す。
その手には、赤黒く鈍い光を放つ結晶が握られていた。
クロードが目を見開く。
「……爆裂結晶。」
盗賊は口元を歪める。
「おっ、知ってるのか?」
「話が早ぇ。」
男は少女の肩を乱暴に掴む。
「このガキは隷属の首輪付きだ。」
「俺の命令には逆らえねぇ。」
少女は涙を浮かべながら震えている。
それでも首輪の力によって、爆裂結晶を手放すことはできなかった。
「動くな。」
「少しでも妙な真似をしたら、このガキに魔力を流させる。」
「爆裂結晶がどうなるか……分かるよな?」
クロードは大剣を構えたまま動かない。
その額には、一筋の汗が流れていた。
俺も少女を見つめる。
首には隷属の首輪。
涙を流しながら、爆裂結晶を握り締めている。
その瞬間だった。
――なぜ。
頭の中に、誰かの声が響く。
『なぜ……こんなことができる?』
『どの世界でも。』
『どの時代でも。』
『力のない者は踏みにじられ、利用され、奪われ続ける。』
『欲望のために命を弄び。』
『自由を奪い。』
『笑いながら人を傷付ける。』
『……本当に、変わらない。』
俺は思わず目を見開く。
(誰だ……?)
すると、その声は少しだけ優しくなった。
『葵。』
『少しだけ変わるよ?』
『ここは、僕が何とかしよう。』
次の瞬間。
俺の意識が、ゆっくりと沈んでいった。




