表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/69

37

「へへっ。」


盗賊の一人が下卑た笑みを浮かべる。


「護衛は二人か。」


「ま、それでも問題ねぇ。」


「お前ら。」


「護衛は殺せ。」


「商人は絶対に殺すな。」


「そいつはアイテムボックス持ちだ。」


「生かして奴隷にする。」


「一生荷物持ちとして働いてもらうからなぁ!」


盗賊たちが下品に笑う。


その言葉にロイドさんの顔が青ざめる。


クロードは静かに大剣を抜いた。


「葵。」


「はい。」


「ロイドさんの護衛をお願いします。」


「分かりました。」


俺はロイドさんの前へ立つ。


はなも俺の隣で静かに周囲を警戒していた。


「行きます。」


クロードが一歩踏み出す。


次の瞬間。


ズバッ!!


一人目の盗賊が吹き飛ぶ。


「なっ!?」


「速ぇ!」


盗賊たちが慌てて距離を取る。


しかし。


ズバッ!


ズバァッ!!


次々と盗賊が斬り伏せられていく。


「つ、強ぇ!」


「なんだこいつ!」


盗賊たちは完全に押されていた。


その時だった。


「うおぉぉぉ!!」


森の中から一人の盗賊が飛び出してきた。


「しまっ!」


俺は反射的にロイドさんの前へ飛び出す。


ガキィン!!


何とか剣で受け止める。


「邪魔だぁ!」


「くっ!」


剣を交える。


(人だ。)


(相手は人間なんだ。)


コボルトやウルフとは違う。


剣を振れば、本当に人を斬ることになる。


どうしても踏み切れない。


(分かってる……。)


(でも……。)


攻め切れない。


守るだけで精一杯だった。


その時。


「おい!」


盗賊の怒鳴り声が響く。


「全員止まれぇぇ!!」


戦っていた盗賊たちが一斉に距離を取る。


クロードも動きを止めた。


盗賊たちの馬車。


そこから、小さな女の子が引きずり出される。


年齢は十歳くらい。


ボロボロの服。


怯えきった表情。


首には黒い首輪が付けられていた。


「あれは……。」


クロードの表情が変わる。


「隷属の首輪。」


少女は盗賊の命令に逆らうこともできず、震える両手を前へ差し出す。


その手には、赤黒く鈍い光を放つ結晶が握られていた。


クロードが目を見開く。


「……爆裂結晶。」


盗賊は口元を歪める。


「おっ、知ってるのか?」


「話が早ぇ。」


男は少女の肩を乱暴に掴む。


「このガキは隷属の首輪付きだ。」


「俺の命令には逆らえねぇ。」


少女は涙を浮かべながら震えている。


それでも首輪の力によって、爆裂結晶を手放すことはできなかった。


「動くな。」


「少しでも妙な真似をしたら、このガキに魔力を流させる。」


「爆裂結晶がどうなるか……分かるよな?」


クロードは大剣を構えたまま動かない。


その額には、一筋の汗が流れていた。


俺も少女を見つめる。


首には隷属の首輪。


涙を流しながら、爆裂結晶を握り締めている。


その瞬間だった。


――なぜ。


頭の中に、誰かの声が響く。


『なぜ……こんなことができる?』


『どの世界でも。』


『どの時代でも。』


『力のない者は踏みにじられ、利用され、奪われ続ける。』


『欲望のために命を弄び。』


『自由を奪い。』


『笑いながら人を傷付ける。』


『……本当に、変わらない。』


俺は思わず目を見開く。


(誰だ……?)


すると、その声は少しだけ優しくなった。


『葵。』


『少しだけ変わるよ?』


『ここは、僕が何とかしよう。』


次の瞬間。


俺の意識が、ゆっくりと沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ