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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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36

翌朝。


朝食を済ませた俺たちは、馬車へ荷物を積み込み出発の準備を進めていた。


「出発できます。」


クロードが荷物を確認しながら静かに告げる。


俺も軽く身体をほぐし、馬車へ乗り込もうとしたその時だった。


「ご主人様。」


はなが小さな声で話しかけてきた。


「今日は昨日以上に警戒してください。」


「え?」


俺が聞き返すと、クロードも真剣な表情で頷いた。


「実は昨日の夜。」


「野営地を遠くから監視している者たちがいました。」


「……え?」


思わず固まる。


「気付かなかった……。」


「気付かなくて当然です。」


クロードは静かに答える。


「かなり距離を取っていましたので。」


はなも続ける。


「今もこちらを追っています。」


「恐らく盗賊でしょう。」


「えぇ……。」


俺は思わず苦笑いを浮かべた。


(盗賊か……。)


異世界あるあるではある。


でも実際に遭遇するとなると話は別だ。


クロードはロイドさんへ歩み寄った。


「ロイドさん。」


「盗賊と思われる者たちがこちらを監視しております。」


ロイドさんの表情が一瞬だけ曇る。


「やはりですか……。」


「この辺りは時々出没すると聞いていました。」


「申し訳ありません。」


「いえ。」


「護衛が仕事です。」


クロードは落ち着いた口調で答えた。


「このまま警戒しながら進みましょう。」


ロイドさんも覚悟を決めたように頷く。


「お願いします。」


◇ ◇ ◇


馬車は街道を進み続ける。


いつもより会話は少ない。


俺も自然と周囲へ意識を向けていた。


(どこから来る……。)


森。


茂み。


木の上。


何となく視線を感じる気もする。


すると。


クロードが静かに口を開いた。


「止まってください。」


ロイドさんが馬を止める。


その先。


街道の真ん中に、一台の壊れた馬車が横倒しになっていた。


完全に道を塞いでいる。


そして、その周囲には十人ほどの男たち。


剣。


斧。


槍。


思い思いの武器を持ち、こちらを見ながら笑っている。


「……来ましたね。」


クロードが静かに大剣へ手を添えた。


俺の喉がゴクリと鳴る。


(盗賊……。)


異世界ではよくある話。


ゲームや小説なら何度も見てきた。


でも。


目の前にいるのは魔物じゃない。


人間だ。


(下手したら……。)


(人との殺し合いになるのか……。)


背中を冷たい汗が流れていく。


自然と剣を握る手にも力が入っていた。

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