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翌朝。
俺たちはギルドで依頼内容を再確認し、そのまま森へ向かっていた。
目的はベア種の討伐。
リーベル近郊では比較的危険な魔物らしく、最近は冒険者や行商人への被害も出ているらしい。
「ベア種は力も防御力も高い魔物です。」
道中、クロードが説明してくれる。
「正面から力比べをする相手ではありません。」
「なるほど。」
俺は真面目に頷いた。
「ちなみに俺でも勝てます?」
「今は難しいでしょう。」
即答だった。
「ですよね。」
少しだけ期待した俺が悪かった。
「ですので。」
クロードは穏やかに笑う。
「今回は私がベア種を担当します。」
「葵は周囲にいる魔物の討伐をお願いします。」
「了解です。」
しばらく森を進む。
すると、クロードが足を止めた。
「いました。」
その視線の先。
体長三メートル近い巨大なベア種が木陰でこちらを睨んでいる。
「で、でかっ……。」
思わず声が漏れる。
すると、その周囲の茂みが揺れた。
ガサガサッ。
現れたのは三匹のウルフ。
低く唸りながら、こちらを囲み始める。
クロードは静かに大剣を抜いた。
「予定通りです。」
「ベア種は私が引き受けます。」
「ウルフはお願いします。」
「え?」
三匹?
一匹じゃなくて?
「ご主人様。」
横からはなが声を掛ける。
「落ち着いてください。」
「身体強化は維持。」
「囲まれないよう立ち位置を意識してください。」
「わ、分かった!」
ウルフが一斉に飛び掛かってくる。
「うおっ!」
慌てて横へ回避。
「遅いです!」
「もっと早く反応してください!」
「はい!」
一匹目が牙を剥く。
剣で受け流す。
「受けるだけでは押し負けます!」
「足を!」
「足を狙ってください!」
俺は言われるまま足元へ剣を振る。
ウルフが体勢を崩した。
「今です!」
「ファイヤ!」
小さな火球。
直撃はしなかったが、ウルフが一瞬怯む。
「その隙です!」
「はぁぁぁっ!」
渾身の一撃。
剣が首元へ食い込み、一匹目が倒れる。
「やった!」
「喜ぶのはまだ早いです!」
「あと二匹!」
「ですよねぇ!」
再び戦闘。
身体強化。
魔法。
剣。
必死に動き続ける。
「右!」
「左!」
「避けてください!」
「魔力が乱れています!」
「集中です!」
「はいぃ!」
はなに怒られながら戦うこと数分。
ようやく最後の一匹が倒れた。
「はぁ……。」
「はぁ……。」
その場へ座り込み、大きく息を吐く。
「終わった……。」
「お疲れ様です。」
はなが微笑む。
「細かい反省点は山ほどありますが。」
「初めての多数との戦いとしては、十分及第点でしょう。」
「厳しいなぁ……。」
苦笑しながら立ち上がる。
その時だった。
ズバァァンッ!!
森全体へ衝撃音が響く。
思わず振り向く。
そこには。
巨大なベア種を真っ二つにしたクロードが立っていた。
大剣を肩へ担ぎながら、こちらを見る。
「討伐完了しました。」
「……。」
「……。」
俺はベア種を見る。
真っ二つ。
俺はウルフを見る。
三匹相手に必死だった。
「……。」
「クロードさん。」
「はい。」
「強すぎません?」
クロードは首を傾げる。
「そうでしょうか?」
「そうですよ。」
俺は肩を落とした。
「俺、三匹相手に死にそうだったんですよ?」
「クロードさん、一撃じゃないですか。」
「鍛錬の差ですね。」
穏やかに笑うクロード。
俺は空を見上げた。
「……。」
「もしかして。」
「前世がすごかったのって。」
「俺じゃなくて、クロードさんだったんじゃないですか?」
その場に沈黙が流れる。
はなとクロードは顔を見合わせ――
思わず苦笑していた。




