幕間 12柱
とある場所。
誰も足を踏み入れたことのない、静寂に包まれた空間。
「……ねぇ。」
一人の少女が、不意に口を開いた。
「今さ。」
「ほんの一瞬だけど。」
「白虎の鍵、反応しなかった?」
向かいに座る青年が首を傾げる。
「ん?」
「いや、気付かなかったけど。」
「気のせいじゃない?」
少女は頬を膨らませる。
「いやいや。」
「絶対反応したって。」
「ほんの一瞬だけだけど。」
青年は腕を組む。
「もし本当なら……。」
「ご主人様に何かあったのか?」
「そういうこと。」
少女はニヤリと笑う。
「でさ。」
「やっぱり白虎、ずるくない?」
「何が?」
「だって、一人だけご主人様の傍にいるんだよ?」
「しかもペット枠。」
「……。」
「反則じゃない?」
青年は苦笑する。
「それは白虎が勝ち取った立場だろ。」
「羨ましいなら、お前もペットになればいい。」
「はぁ?」
少女が眉を吊り上げる。
「誰がペットになるのよ!」
「私はもっと格好良く再会する予定なんだから!」
青年は肩をすくめる。
「でも、ご主人様は動物好きだったぞ。」
「…………。」
少女の動きが止まる。
「……。」
「……猫、ありかな?」
青年は思わず吹き出した。
「お前、さっきまで否定してただろ。」
「うるさい!」
「白虎ばかり甘えてるのはズルいの!」
その言葉に、青年は苦笑する。
すると少女は、何かを思いついたように勢いよく立ち上がった。
「そうだ!」
「ここしばらく暇だし、私ちょっと行ってくるね!」
青年も慌てて立ち上がる。
「おい、それはズルいだろ!」
「白虎だけ先に会って、お前まで抜け駆けする気か!」
少女は悪戯っぽく笑う。
「早い者勝ちだもん。」
「却下だ。」
「却下されても行くもん。」
「待て!」
「一人だけ会いに行くなんて認めない!」
「じゃあ一緒に来る?」
青年は一瞬考え込み、
「……いや。」
「ここの監視がある。」
と答える。
少女はニヤリと笑った。
「ほら、やっぱり真面目。」
「だから私が行ってくる!」
そう言うと少女は勢いよく駆け出した。
「おい! 待て!」
青年も慌てて後を追う。
静寂だった空間は、二人の賑やかな声に包まれていた。




