28
森から戻った俺とはなは、そのままギルドへ向かった。
さすがに今日は疲れた。
魔法の練習に、身体強化。
それに……最後のあれ。
はなの規格外すぎる魔法を思い出し、少し遠い目になる。
でも。
「お金、稼がないとな。」
異世界に来たからといって、生活費が必要なのは変わらない。
宿代。
食費。
これから必要になる物。
何をするにもお金は必要だ。
「ご主人様は真面目です。」
「いや、普通だろ。」
そんな会話をしながら、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
そこで簡単な依頼を探す。
「薬草採取……。」
今の俺でもできそうな依頼。
「これにするか。」
受付へ向かう。
「こちらの依頼ですね。」
受付のお姉さんが説明してくれる。
「森の浅い場所に生えている薬草を、指定数集めてください。」
「分かりました。」
すると、受付のお姉さんが見本の薬草を取り出してくれた。
「こちらが対象の薬草です。」
「似た植物も多いので、注意してくださいね。」
「ありがとうございます。」
俺は薬草をじっと見る。
そして、こっそりスマホで撮影する。
「……。」
スマホを見つめる。
まさか異世界に来て、役立つとは思わなかった。
「持ってきてよかった……。」
◇ ◇ ◇
森へ入り、薬草を探す。
最初はなかなか見つからなかったが――。
「あった。」
幸先よく発見。
はなが確認してくれる。
「間違いありません。」
その後も順調に採取は進んだ。
「思ったより簡単かもな。」
そう思った瞬間だった。
ガサッ。
茂みが揺れる。
俺とはなの視線が向く。
姿を現したのは――。
二足歩行の魔物。
コボルトだった。
はなが静かに呟く。
「敵ですね。」
その言葉を聞いて、俺は首を傾げる。
「……あれ?」
「はな。」
「もしかして……仲間じゃないの?」
数秒の沈黙。
はなの表情が固まる。
「……ご主人様。」
「はい。」
「今の発言は……。」
少し低い声。
「怒りますよ?」
俺は思わず心の中でツッコむ。
(いや……。)
(もう怒ってるじゃん。)
「いや、犬っぽかったから……。」
「見た目だけで判断してはいけません。」
「……すみません。」
コボルトが唸り声を上げる。
俺は剣を抜く。
「今回は、ご主人様一人で戦ってみてください。」
はなが一歩下がる。
「危険になれば、私が必ず助けます。」
その言葉に頷く。
俺は剣を構えた。
コボルトが走り出す。
「っ!」
剣で受け止める。
重い。
だが、前とは違う。
身体強化のおかげで動きについていける。
攻撃。
防御。
回避。
一進一退。
「……戦えてる。」
少しずつ自信が戻ってくる。
ゴブリンに何もできなかった俺とは違う。
「俺でも……やれる。」
距離を取り、右手へ魔力を集める。
「ファイヤ。」
小さな炎が飛ぶ。
コボルトは横へ避ける。
だが、その瞬間。
「そこ!」
避けた先へ踏み込む。
剣を振り抜く。
コボルトが倒れる。
「……。」
静寂。
「勝った……。」
「はい。」
はなが頷く。
「ご主人様自身の力で勝利しました。」
その言葉を聞いた瞬間。
「……やった。」
自然と笑みがこぼれる。
◇ ◇ ◇
だが、少し時間が経つと。
倒れたコボルトを見る。
「……。」
「うっ。」
さっきまで夢中だった。
でも今は違う。
これはゲームじゃない。
本当に命を奪ったんだ。
俺は少し離れた場所へ座る。
ポケットからタバコを取り出し、火をつける。
煙を吐きながら、ゆっくり考える。
「……。」
勝った。
本当に俺が勝ったんだ。
まだ怖い。
まだ慣れない。
それでも。
少しだけ、この世界で生きていける気がした。




