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世界を救った英雄は平穏を望んだ。だけど転生した俺は強くなりたい  作者: sai


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「……で。」


葵は、はなを見つめる。


「白虎って何?」


はなは首をかしげた。


「私の真名ですね。」


「本当の名前、と言った方が分かりやすいでしょうか?」


「もちろん、はなでもあります。」


「いやいや。」


「白虎って、あの白虎?」


「物語とか伝説によく出てくる、四神の白虎?」


はなは少し考えた後、にこっと笑う。


「まぁ、多分そうですねー。」


「……へー。」


数秒の沈黙。


「……何それ。」


「うちのペット、ヤバくない?」


じわりと変な汗が流れる。


柴犬だと思っていた愛犬が、まさか神話級の存在だったとは。


「いやいや……。」


「情報量が多すぎるだろ。」


頭を抱える葵。


すると、ふと思い出す。


「そうだ。」


「前の俺との約束って何なんだ?」


その瞬間。


はなの笑顔が少しだけ曇った。


「……申し訳ありません。」


「まだ、お伝えできません。」


耳を伏せ、小さく頭を下げる。


「ごめんなさい。」


その様子を見て、葵もそれ以上は聞けなかった。


「そっか。」


「言えないなら仕方ないか。」


はなは申し訳なさそうなしょんぼりした表情のまま、小さく頷く。


しかし、すぐに何かを思いついたように顔を上げた。


「そういえば、ご主人様。」


「はい?」


「今なら魔力が感じられるのではありませんか?」


「……え?」


葵は意識を体の内側へ向ける。


すると。


「……あ。」


前までは何も感じなかった。


だが今は違う。


体の奥に、ほんのわずかだが温かい流れのようなものを感じる。


「これ……。」


「魔力?」


「はい。」


「まだごく僅かですが、間違いありません。」


「おぉぉぉ!」


葵は目を輝かせる。


「感じる!」


「感じるぞ!」


「やっと異世界っぽくなってきた!」


ベッドの上で大はしゃぎする葵。


はなはすかさず言葉を続けた。


「感じられるだけでは意味がありません。」


「まずは、その流れを見失わないようにしてください。」


「慌てず、ゆっくり。」


「はい先生!」


葵はすぐにベッドの上であぐらをかき、目を閉じる。


再び体の内側へ意識を向け始めた。


「そこです。」


「焦らず。」


「そのままです。」


集中し始めた葵を見て、はなは小さく胸を撫で下ろす。


(……よかった。)


(話を逸らせました。)


前世の約束については、まだ話せない。


危ないところだった。


ふと視線を上げる。


部屋の隅で静かに立っていたクロードと目が合った。


「……。」


クロードは無言のまま、はなを見つめている。


その表情は困惑していた。


初めて会ったはずなのに。


どこか懐かしい。


そんな不思議な感覚だけが胸に残っていた。


はなは何も言わない。


ただ、魔力へ集中する葵と、困惑するクロードを優しく見つめながら、静かに微笑んでいた。

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