21
「……ん。」
ゆっくりと意識が浮かび上がる。
重かった瞼を開けると、見慣れない木目の天井が目に入った。
「ここは……。」
少しずつ記憶が戻る。
下水道。
老人。
スライム。
そして、体の奥から溢れ出した白い光。
「そうだ……。」
起き上がろうとすると、
「無理はしないでください。」
聞き慣れた落ち着いた声がした。
横を見ると、椅子に座っていたクロードが立ち上がる。
その表情には珍しく安堵の色が浮かんでいる。
「目が覚めましたか。」
「……クロードさん。」
「心配しました。」
「丸一日眠ったままでしたから。」
「一日!?」
思わず起き上がろうとするが、クロードに制される。
「落ち着いてください。」
「ギルドの治療師にも診てもらいました。」
「外傷もなく、魔力にも異常は見当たりません。」
「原因は分かりませんが、身体に異常はないそうです。」
「そう……なんですね。」
自分の腕を見る。
服は新しいものに替えられている。
溶けたはずの肌にも傷一つ残っていない。
夢でも見ていたかのようだった。
「老人は?」
「無事です。」
「命に別状はありません。」
その一言で胸をなで下ろす。
「よかった……。」
その時だった。
部屋の隅から、小さな気配を感じる。
「……?」
ゆっくりと視線を向ける。
そこには、小さな白い柴犬がちょこんと座っていた。
つぶらな瞳。
ふわふわの毛並み。
見覚えのある姿。
「……。」
「まさか。」
葵は思わず目を見開く。
「はな……?」
その瞬間、小さな柴犬が嬉しそうに立ち上がった。
「ご主人ーー!!」
元気いっぱいの少女のような声が部屋に響く。
次の瞬間、はなは勢いよくベッドへ飛び乗り、そのまま葵の胸へ飛び込んできた。
「うわっ!」
思わず受け止める。
柔らかな毛並み。
甘えるように顔を擦り寄せる仕草。
間違いない。
家族みんなに愛され、自分が一番可愛がっていた愛犬――はなだ。
「なんで……。」
「なんで、お前がここにいるんだ……。」
嬉しさで胸がいっぱいになる。
だが、その直後。
「……って。」
「今、喋ったぁぁぁぁぁっ!?」
部屋中に葵の驚愕の叫び声が響き渡った。




