20 守護獣
「……助ける。」
気付けば口にしていた。
目の前では老人が苦しそうにもがいている。
見捨てるなんて選択肢はなかった。
「うおぉぉぉっ!」
葵は剣を握り締め、スライムへ斬りかかる。
狙ったのは老人を包み込んでいる端の部分。
ザシュッ!
確かな手応え。
だが――
「え……?」
切れたはずの体は、ゼリーのようにすぐ元へ戻る。
状況は何一つ変わらない。
「くそっ!」
葵は抱えていた荷物を見る。
『汚泥除去用クリーナー』
「これなら!」
蓋を開け、そのままスライムへ浴びせる。
ジュワァァッ!
薬剤がかかった瞬間、スライムが大きく身をよじった。
「効いてる!」
苦しむように体を震わせるスライム。
しかし――
老人を拘束している体は離れない。
「離せっ!」
さらにクリーナーをかける。
スライムは激しく嫌がるものの、それでも老人を包み込んだまま離そうとしない。
まるで獲物を絶対に逃がさないという執念でもあるかのようだった。
「くそっ……!」
その間にも、スライムは老人の口元まで覆い始める。
「まずい!」
完全に飲み込まれる。
焦る葵。
どうすれば助けられる。
考えろ。
考えろ。
その一瞬だった。
背後から何かが飛びついてきた。
「っ!?」
別のスライムだ。
油断していた。
気付いた時には腕へまとわりつき、そのまま全身へ広がっていく。
「うわぁっ!」
ジュゥゥッ……
服が溶け始める。
肌に焼けるような痛みが走った。
「熱っ!」
必死に振り払う。
だが離れない。
目の前では老人が苦しそうにもがいている。
助けたい。
でも助けられない。
自分も動けない。
「くそっ……!」
「動けよ……!」
「なんでなんだよ!」
何もできない。
目の前で人が苦しんでいるのに。
助けたい。
その想いだけが膨れ上がっていく。
――その時だった。
『……主の生命危機を確認。』
頭の中へ直接響く声。
幼い少女のような声だった。
『申し訳ありません。』
『現在の状況を緊急事態と判断。』
『第一封印の限定解除を実行します。』
葵の意識が揺らぐ。
『白虎が授かりし神威。』
『契約者保護権限を執行。』
『霊核封印・第一階層、限定解放。』
『魂路接続開始。』
『霊力循環率を安全領域まで上昇。』
『封印解除率、一・〇〇%。』
『――解放。』
ドクン。
心臓が大きく脈打つ。
全身の奥底から、凄まじい力が湧き上がる。
「な……んだ……これ……。」
体中が熱い。
苦しいはずなのに、不思議と痛みは消えていく。
白銀の光が葵の体から溢れ出した。
「ギィィィッ!!」
体にまとわりついていたスライムが悲鳴を上げ、一斉に吹き飛ぶ。
老人を拘束していたスライムも弾かれるように後退し、そのまま逃げ出した。
本能で理解したのだ。
目の前の存在に近付いてはいけないと。
拘束から解放された老人は、その場へ崩れ落ちる。
「た……助かった……。」
老人の声が聞こえる。
しかし葵の意識は急速に遠のいていく。
「……あれ。」
全身から力が抜ける。
視界が揺れる。
「眠……。」
そのまま前のめりに倒れ込み、意識は深い闇へと沈んでいった。
話しの進みが遅くて申し訳ないです(-。-;
その分話数上げていけるよう頑張ります(-。-;




