17
翌日。
町の外、森の近く。
クロードから剣の扱いを教わる。
初めて握る剣。
最初はぎこちない。
しかし、葵には長年続けてきたバスケットで培った身体能力があった。
反射神経。
瞬発力。
身体操作。
素人としては悪くない動きを見せる。
「思ったより形になりますね。」
クロードが少しだけ感心する。
少し嬉しくなる葵。
その時だった。
森の中から気配がする。
現れたのは――
ゴブリン。
葵の表情が固まる。
「あ……。」
見覚えがある。
額の傷。
間違いない。
以前、石を投げて怒らせたゴブリンだった。
ゴブリンも葵に気付く。
一瞬、動きが止まる。
そして――
口元を歪める。
まるで、
「やっと見つけた。」
そう言っているようだった。
「クロードさん……。」
「大丈夫です。」
「何があっても助けに入ります。」
その言葉で少し安心する葵。
しかし、ゴブリンは待ってくれない。
棍棒を振り上げ、襲いかかる。
「うわっ!」
反射的に剣で受け止める。
ガンッ!!
衝撃が腕を伝わる。
「重っ……!」
そして近距離で確認する。
ゴブリンの額。
そこには自分がつけた傷が残っていた。
「やっぱり……。」
「俺が石投げたやつだ……。」
次の瞬間。
ゴブリンの目が変わる。
怒り。
執念。
狂気。
「ギィィィィ!!」
さらに力を込めてくる。
恐怖で体が固まる葵。
後退した瞬間――
足を滑らせる。
「しまっ……!」
ドンッ!!
棍棒が脇腹に直撃する。
「ぐっ……!」
息が詰まり、その場に倒れる。
ゴブリンは追撃のため近づく。
その瞬間。
空気が変わった。
クロードから放たれる殺気。
ゴブリンの動きが止まる。
本能が理解する。
目の前の存在には勝てない。
ゴブリンはそのまま森の奥へ逃げていった。
⸻
倒れたまま空を見上げる葵。
「……また負けた。」
何もできなかった。
守られただけだった。
悔しさが残る。
そんな葵を、クロードは静かに見つめていた。
その目には心配と、わずかな期待が宿っていた。




