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「やっぱり、分かりませんよね。」
青年は苦笑しながらそう言った。
俺は首を傾げる。
「すみません……どちら様ですか?」
青年は軽く頭を下げた。
「黒崎です。」
「……え?」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「黒崎……さん?」
「はい。」
「白い部屋でご一緒しました。」
「…………。」
数秒間、思考が止まる。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
思わず大声を上げてしまった。
「いやいやいやいや!」
「面影がかけらもないじゃないですか!」
目の前にいるのは、爽やかな笑顔のイケメン騎士。
声はどこか聞き覚えがあるが、あの強面のおじさんとは別人にしか見えない。
黒崎は少しだけ苦笑する。
「今、何歳なんですか?」
「十八です。」
「え? じゃあ俺より年下!?」
「今はそうですね。」
相変わらず口数は少ない。
けれど、落ち着いた話し方は白い部屋にいた頃と何も変わっていなかった。
「今は何をしてるんです?」
「冒険者です。」
「二年前から。」
「戦士として活動しています。」
「基本は一人です。」
「ソロなんですね。」
黒崎は静かに頷く。
「一人の方が動きやすいので。」
歩きながら、俺は一番気になっていたことを聞いた。
「でも、何で俺が今日ここに来るって分かったんです?」
黒崎は少しだけ前を向いたまま話し始めた。
「五歳の時です。」
「突然、前世の記憶が戻りました。」
「その直後でした。」
「頭の中に、あの水晶と同じ声が響いたんです。」
黒崎は当時を思い出すように、その内容を口にした。
『記憶継承を確認しました。』
『追加情報があります。』
『対象個体「葵」。』
『転移予定日時、十八年後、本日。』
『転移予定地点、ガルドの町・東門。』
『迎えを推奨します。』
『通知を終了します。』
「……それだけでした。」
「十八年後と分かっていたので、一週間前からガルドの町に滞在していました。」
「それからは毎日、この門で待っていました。」
俺は思わず立ち止まる。
「一週間も……?」
黒崎は静かに頷く。
「来ると言われていましたから。」
その一言に、俺は何も言えなくなった。




