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壊れながら成長する組織 ― これは普通の会社の話じゃない!  作者: 御堂 仁


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11/28

兆候

黒沢は、朝一番で全店舗の数値を並べていた。


売上

粗利

在庫回転

買取件数

SNS流入

レビュー件数

画面の中で、REVERSE全体が動いている。


更新直後に反応が走る。

ランキングが変わる。

在庫が消える。

数字が連鎖して伸びていく。


速い。

黒沢はその速度を見ていた。

この速度が、REVERSEの強さだった。


現場の判断

SNS更新

買取強化

反応した店舗から数字を取っていく。


熱狂には意味がある。

理屈では出ない速度を生む。

東堂はそれを理解していた。


黒沢も昔は、同じ側にいた。

数字が跳ねる瞬間が好きだった。

組織全体が、一つの生き物みたいに動き始める。

あの感覚だけは、今でも忘れられない。


黒沢は画面をスクロールする。

池袋

新宿

秋葉原

大型店は強い。


問題はそこではなかった。

黒沢の指が止まる。

地方中型店

売上自体は伸びている。

だが。伸び方が鈍い。


黒沢は前月比を並べる。

3.8

3.1

2.4

1.9

成長率が落ちている。

崩れているわけではない。

むしろ普通の会社なら十分に好調だった。

だがREVERSEは違う。

この会社は、速度が落ち始めた瞬間に壊れる。


黒沢はさらにデータを重ねる。

SNS更新数

レビュー返信率

残業申請

店長変更履歴


そして、離職率


そこで初めて、数字が繋がった。

黒沢は目を細める。

——そういうことか。

店長交代直後は伸びる。

競争が生まれる。

熱量も上がる。

だが三ヶ月後。

SNS更新が落ちる。

レビュー返信が減る。

売上の伸び率が鈍化する。

その後に、離職率だけが遅れて上がる。


黒沢は椅子にもたれた。

人が辞めているから売上が落ちるんじゃない。

先に、熱が切れている。

離職は結果だった。


会議室の外から東堂の怒声が響く。

「数字落ちてんの見えてるよな!?」

「更新数だ! 動かせ!」

黒沢は黙って聞いていた。

間違ってはいない。

更新数を増やせば売上は伸びる。

反応速度を上げれば回転率も改善する。

実際に数字は変わる。

だから厄介だった。


熱狂は成果を出してしまう。

黒沢も昔は、それを信じていた。

人は熱で変われると思っていた。

だが違った。

熱は、人を前に進ませる。

ただし、それだけでは維持できない。

支えがないまま走り続けた人間から壊れていく。

それを黒沢は何度も見てきた。


その瞬間、スマホが震えた。

全社宛メール

『町田店 退職のお知らせ』

黒沢は通知を開く。

町田店

三ヶ月前、ランキング上位から異動した店だった。


退職理由

『一身上の都合により』

短い。

だが添付されていた引継ぎメモに、一行だけ残っていた。

『もう数字を見たくないです』


黒沢はその文章を見たまま動かなかった。

数秒後、

無意識に町田店の売上推移を開いていた。


昨日対比

客単価

回転率

まだ伸びている。


黒沢は小さく息を吐いた。

店長が辞めた翌日も、店は回っている。

数字だけなら成功していた。

そして自分も、最初に確認したのは人ではなく数字だった。

会議室の外では、今日も現場が回っている。


通知音

怒声

笑い声

ランキング更新

熱狂は止まらない。


だが黒沢には、その熱の奥で少しずつ空気が冷えていくのが見えていた。

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