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050 金色の華

 村に1件しかない宿屋に無事に予約ができた。朝食付きで四分銀4枚、掛け布団有りなら追加で1枚。すべて個室で毛布と枕はあるらしいが、部屋の広さに内装は?朝の献立は?他の客扱いは?料金設定を知りたい。

「村の周囲を一回りしてみようぜ。で、戻ってきて昼飯を食いながら打ち合わせといこうや」

「一件だけで需要を賄えるのだろうか。Bibo…ビーボ、どう言う意味かな。美貌?備忘?うー、検索がしたい」

 太原が頭を抱える。

 他に選択肢はないのだが、村の屋外で煮炊きは禁止とのことなので野宿するならば農地のさらに外ということになるからだ。遠くまで探索するとなれば、野営となるのは予想できていたが、手軽に知れそうなことが分からないのはすっきりとしない。


「危ねえーぞ。余計な事を考えてねーで、集中しろよ」

 既に村の外に出ている。確かに池園の言うとおりだ。

 相棒となった彼は安全管理にうるさい。後は、俺の前に出るなとか、視野を大きくもってけとか。


 アルベリック村の正門は北と南にある。それぞれが魔王領の北の“鬼太郎(オウガ)(ゲート)と南の“一つ目(ルドン)(ゲート)に対応しているのだろう。村の中も正門をつなぐように南北に大通りが貫いている。

 空中写真を見ると、村は南北に細長い立地で、西と東には通用門らしいのが写っている。

 西の通用門から出れば村と同程度の広さを持つ農地で、外周を水の溝に木柵で囲っている。一部は近くの小川から水を引いているために切れている。のどかだ。

 東は自衛隊が設営している。緑地に迷彩柄のテントがいくつか張られていて、周囲に鉄条網を巡らせている。じゃない感がすごい。


 太原たちは北門から出て、近くの小川沿いを左回りに巡って、南門に戻る計画を立てた。

「一番、気をつけなくちゃいけねえのは、遠距離攻撃と死角からの突撃だな」

 一番なのに二つあるんだ?

 歩きながら、乗合車両で魔物情報を読み込んだ池園に説明を受ける。

「要は、不意打ちを受けねえってこった」

 なるほど、一つだね。

 もちろん、後で自分でも読み込んで詳細を補強することは忘れない。

 池園が警戒しているのは、“狗猧(えのこ)”の“(コロ)バシ”。海中に生息しているガンガゼ(ウニの一種)に似た形態で、その黒針を飛ばしてくるという。出現が確認されたのは、岩場や木立などの濃い影の中である。

 池園の前掛け(エプロン)はケガキ針(工具の一つ)を通さないらしい。自分の前に出るなとは、それがあってのことらしい。男前だ、惚れてまうやろw。

 二人とも“盾”を持っていない。と言うか、ここに来るまで他人の手にも盾を見ていない。盾は人との戦闘の際に用いられるという印象が強い。

 装備は有限だ。魔物との戦いでは、それで片手をふさいだり荷物を増やすよりも、身軽にして行動の身軽さや持久性をあげた方が有益だと判断した。ガチガチに防備を固めるよりも、敵わなそうなら走って逃げるのは一つの選択肢として有りだろう。しかしまわりこまれてしまったwよりも、逃げれば追われる可能性を考えれば、大物相手には撒菱(まきびし)を持つのを軽そうだし検討しよう。

 他にも、“狗猧(えのこ)”には黒玉や空中を漂う白玉などがいるらしい。


 それとは別の存在としては、自衛隊が“リビルド(rebuild)”と呼称している生物群がいる。“再構築”の意だろうが、何故に横文字なのか。自衛隊というよりも、政治家や役人が命名した感をありありと感じる。

 例の“スク東の衝撃”と言われる魔王領の開場式典(オープニングセレモニー)でロックバンドの闘里男(トゥーリオ)たちが戦った魔物らしい魔物“ゴブリン”は資料になかったらしい。自衛隊も遭遇していないのか。生息地が限られているのか。それとも生息数が少ないのか。


 左手に農地を見ながら、見晴らしのよい草原を歩く。小川沿いの木立にはすぐに着いた。

 中には踏み込まず、外から観察する。

「居ねえな」

「居ないね」

 魔物の姿はない。と言うよりも、道中も自分たち以外の探索者を見掛けなかった。

 木立は木漏れ日が差して、水音が微かに聞こえ、癒しの(ヒーリング)効果が高そうな場所だ。

 木々が間引かれ、下生えも足首が隠れる程度まで刈られている。つまり、人の手が入っているのだ。それも当然か。すぐ近くに敵対生物がいたら、おちおち農作業もしていられないだろう。

 それでも、木立の縁に沿って観察を続けていると、ついには木立の中に入り込む道まであった。道には雑ではあったが板も敷いてある。恐らく、間引いた木を割ったものだろう。毎度、生えてくる草を刈るのが面倒だったと思われる。

「「……」」

 二人は顔を見合わせると、遊歩道に足を踏み入れた。

 この場面(シチュエーション)、高校生の男女ペアなら緊張感も高まるというものだが、男同士となればそれも霧散するばかりである。

 すぐに小川も見えてきた。丸太橋が掛けられていて、対岸には本格的な森が広がっていた。その先には板の道もない。橋には、開いたままだったが枝で組まれた扉が付いていた。

「誘ってるみたいだね」

「午後はこの先に行ってみるか?」

 川を一つ超えれば、遭遇する敵のレベルが上がるのはゲームではありがちな設定ではあるが、それを期待させる雰囲気が充分である。自衛隊が探索している北東の水源を見に行く選択肢もあり悩むところだ。


(あめ)ぇ!」

 唐突にそう発して、池園が鉄筋を振り上げた。片手だが、見事なゴルフスイングだ。空振りだったけど。

「でかっ!3匹以上」

 待ちに待った初遭遇(クロース・エンカウンター)だ。姿は見えなかったけど、水音に紛れて、ヂュ!と言う鳴き声も聞こえていたし、掲示板廻りの先輩たちwからも聞いていたし、居るのは気付いていた。

 “リビルド”の一種である“草ネズミ”だ。頭胴長で30cmほどのを、3匹まで確認した。毛色はオリーブ色、暗い緑みの黄色だ。

 呼び名を逆にしたら“鼠尾草”、つまりはセージのことだ。古くから、貧富も問わず役に立つ薬草(ハーブ)として有名だが、賢者(sage)の名を冠するには頭が悪すぎだろう。あっ、だから逆さま呼びなのかと思うのは無理があるだろうか。

 そんなことを考えるほどには余裕がある。

「逃げずに向かってくるなんて、根性あんぜっ、おらっ!」

 “草ネズミ”は服装を破れるほどの爪も歯もないが、こちらを襲ってくる。それは縄張り意識が高いからか、それとも魔物だからか。

「けど、素早い」

 攻撃が当たらない。当たらなければどうということはないと言うように、ヂュ!とたまに後ろ脚で立ち止まるのがムカつく。

 だが、均衡は崩れる。

 繰り返せば、流石に慣れる。

 池園が振り回す鉄筋が別々の個体に連続で当たる。攻撃力の差は明確だ。“草ネズミ”は一撃で、ふっ飛ばされる。

 太原も中厚鎌を引っ掛けて、一匹の“草ネズミ”を倒す。

 2匹の“草ネズミ”が丸太橋に血を点々と残して、逃走していった。鎌に傷つけられた個体だ。

「ネズミか~。初めて遭遇する(モンスター)としては妥当なのかな」

 思わず口について出た。


 掲示板の前に群れていた人たちもすでに遭遇して狩ったという“げっ歯類”だ。南極以外の全ての地上にいるやつらだ。南極に居ないのは、彼らがエサとするモノがいないかららしい。

 そんな事を考えていたら、倒した“草ネズミ”の身体から金色の粒子が立ち昇り、膝の高さに現れた直径10cmほどの摩法陣に吸い込まれていく。

 金色の華だ。命の花灯(はなび)だ。汚さなど微塵も感じさせず、凛とした美しさを見せてくる。

 それは魔物(それら)が我々とは違う理の存在であることの証左となる現象だ。

 金色の光の残滓が消えた跡に、我に返った彼らが見たのは、“ネズミの尻尾”だった。

 それが駆除証明となる。


「(価値が、現象が、)よー分からん」

 残滓の跡にしゃがんだ池園は他にも何か落ちてないかと探すように土を払ってみた後に、“ネズミの尻尾”を指でつまみ上げて、まじまじと見た後に太原に放ってよこした。

 ネズミの尻尾なんかを投げつけられたら、「汚っ」とか言いつつ飛び退きそうだ。イジメと受け取られてもおかしくない。

「エリクサーの材料とかにならないかな」

 金色の華を見た後ではそのような気はまるで起きない。

 太原は普通に受け取って、感想を述べる。

「(秀才の考えることは)よー分からん」

 立ち上がった池園が、心ともなく丸太橋の扉を閉めつつ、再び首を振った。


筆者注)様子見中です

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