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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4  After 『誰よりも輝ける夏』

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第187話 デートで手作りお弁当とか!マジリア充!

トルコでの仕事は終わった。俺とファルナーズは港で互いに抱擁して、別れを惜しむ。


「今回はありがとうございました!」


「ああ。こちらこそ助かったよ」


 一時とは言え冒険のパートナーだった。それなりに絆は育まれたと思う。


「では私はこのまま船でアメリカの大学に帰ります」


「飛行機じゃなくて?」


「怖いから嫌です!」


 筋金入りだなぁ。まあいいけど。ファルナーズはにっこりと笑って、俺の頬にキスをする。


「カナタせんぱいぃ。楽しかったです!ではまたお会いしましょう!」


 そしてファルナーズはアメリカ行きの船に乗っていった。暫くは会えないかもしれない。だけど再会することは間違いない。今はただ見送ろう。





 ケーカイパイセンはバックパックを背負ってバスターミナルでバスを待っている。


「俺はここから西へ向かう」


「じゃあしばらくお別れですね。今回は本当にありがとうございました」


「まあな。いつでも頼ってくれ!ぎゃはは!」


 俺たちは拳をぶつけて別れを惜しむ。そしてケーカイパイセンはバスに乗って西へと向かって言った。俺はそのまま空港に向かい日本へ帰ったのである。






 日本に帰って一晩立って、朝に五十嵐から電話があった。


『ねぇ常盤くん。絃翔ちゃんいじめたの?』


「いきなりなにそれ?どういうこと?」


 確かに彼女とは死合うことになったけど、虐めてなどいない。


『だって家に来てビービー泣いて私の胸に抱き着いてきたんだよ』


「へ、へぇ」


『なだめるの大変だったよ。なんかもうお嫁にいけないとか常盤くんに責任取らせるとか言ってた!』


「お、おう」


 めんどくさそうな予感がビンビンだった。


『まあそれはともかく』


「さらっとながすね」


『実はパソコン壊れちゃって』


「ん?どんなかんじなの?」


『画面がブルーなの!うんともすんともいわない!』


「ありゃそれはもうだめだわ」


『やっぱりだめかぁ。お父さんのお古のノートパソコンだったんだけど寿命来ちゃったかぁ』


「ふーん。じゃあ新しいの買いに行く?」


『うーん。そうだね!そうしようか!じゃあ今日のお昼ごろで!お父さんからお小遣い貰ってくるね!』


「わかった。場所は秋葉原にしよう。あそこならいいのが買えると思う」


「りょーかーい!じゃあお昼ごろに秋葉原の駅ねぇ」


 そして電話は切れた。五十嵐とお買い物デートとなった。日常に帰ってきた実感がわいてくる。楽しみだ。





 お昼ごろに秋葉原にやってきた。電気街口の方に五十嵐がバックを持って待っていた。時間はまだなのに早く来てくれているのが嬉しい。今日の五十嵐のコーデは上はノースリーブのブラウス。下はひざ下のロングのスカートにサンダル。清楚な感じがいい!


「ちょっと待たせたかな」


「ううん。そうでもないよ」


「新しい服?可愛いね」


「そうなの。スカートの広がり方が好きなんだぁ。ふふふ」


 五十嵐は俺の左手を取って、俺たちは歩き出す。


「パソコン買いに行く前にご飯にしよう。いろいろB級グルメが揃ってるみたいだぞ」


「うん。それもいいけど。実はね。お弁当作ってきましたー!」


 五十嵐はバックからお弁当の袋を取り出す。お弁当?!手作り弁当!?そ、そんな!そんなことがあっていいのか?!


「まじか!じゃあ公園行こうか。ベンチあるからそこで食べよう」


「うん!」


 俺たちは公園に向かった。




 秋葉原の公園は相変わらずオタ芸集団のダンス会場になっていた。


「わーすごいねぇ。でも何のダンス?」


「アイドル応援するときとかやるみたいよ」


「へぇ」


 オタ芸集団への興味はもう失せたらしい。五十嵐と俺は開いているベンチに座ってお弁当箱を広げる。唐揚げや肉じゃがなどの定番のおかずの入った箱と、おにぎりたちがあった。


「ささっと作ったからちょっと味には自信ないけど、召し上がれ!」


 五十嵐は笑顔で俺にお弁当を進めてきた。未来の世界では彼女の造る料理は皆美味かった。でもそれはもしかしたら元カレたちの影響なんじゃないかと思う自分もいたりしたわけで。俺は楽しみな反面、もしかしたらあんまりおいしくないかもしれないという不安もあった。


「じゃあ唐揚げから」


 俺はお箸で唐揚げを摘まんで口に放り込む。……じゅわっと油が広がって旨みのある香りが口に広がる。


「美味しい。うん。美味しいよこれ」


「よかった。余ってたお肉だからちょっと不安だったけど、お口にあってよかったよ」


 五十嵐も唐揚げを食べる。


「料理は誰かから習ったの?」


「お母さんに料理教室通わされたんだ。将来のためだって」


「それは……。何だろう意外な答えだな」


 お母さんから習ったのではなくて、料理教室に通わされたっていうのがなんか毒親感あってすごい。


「お姉ちゃんも妹も行ってないのに、私だけ行かされたんだよ。なんかひどいよねぇ」


 五十嵐家の事情が、というか闇が垣間見える。五十嵐を葉桐の嫁にしたくて仕方がないんだろうなって感じ。


「でも常盤くんが喜んでくれたなら、行った甲斐があったね。よかったよ」


 五十嵐は微笑む。この笑みこそ最高の隠し味だと思った。俺たちは二人でお弁当を仲良く食べた。時折雑談を挟みながらこの時間を愛おしく過ごした。





 お弁当を食べ終わって、暫く二人でぼーっとしていた。


「そろそろパソコン買いに行かなきゃ」


「そうだな。行くか」


 俺たちは街の方へと歩く。電気街だけあって色々な店が並んでいる。五十嵐は店先に並んでいるパーツを見て首を傾げている。


「これを買って組み立てるの?」


「それは上級者向けだからかやめといたほうがいいよ。普通に既製品買えばいいって」


「そっかー。なるほどなー」


 五十嵐的にはこの街の風景が物珍しいようで、キョロキョロとして楽しんでいるように見えた。


「ねぇこのお店ってなに?カップル歓迎って書いてあるけど」


 俺はそのお店を見る。それは大人の玩具屋さんだった。


「い、いつかいっしょにこよう。今はまだ早い」


「んん?そうなの?何が売ってるの?」


「すごくなかのよいカップル用のアイテムだよ。だから俺たちには早いの」


「んー。まあいいか」


 五十嵐がすぐに興味を移す奴で良かった。ここに入ろうとか言われたら心臓が止まっちまうところだった!そしてまたぶらぶらと街を歩く。本屋の前を通りかかった。


「そういえば算数ちゃんが小説書いてたっけ。ラノベってやつだっけ?」


 店先に並ぶ商品を手に取って興味深げに見ていた。手に取っているのはムーちゃんの『親友のカノジョが俺にだけエロい』だった。


「タイトル長いね。私は小説ちょっと苦手なんだよね。共通テストの現代文の小説もなんか点数ちょっと良くなかったんだ」


「へぇ。そうなんだ。あれ変な文ばかり出てくるよな。試験中笑いそうになった」


「わかるー。意味不明だよね!なんで皆変なことしてるのかほんと謎だったよ。作者の気持ちがほんとわかんなかった!あはは!」


 ラノベコーナーを二人でうろうろする。


「タイトルが長いのばっかり。異世界ばっかりだね。異世界行ったらお友達とか会えなくなっちゃうよ。寂しくないのかな」


「世の中には異世界に行きたくて寂しい奴もたくさんいるんだよ」


「そっかー。うん。これはどんな話なんだろう?」


 五十嵐が手に取ったのは「ビッチギャルが純愛に目覚めて迫ってくるけど、彼女で童貞だけ捨てて理解ある彼くんをやめようと思います」と書かれていた。


「ビッチはよくないよ。うん。ビッチだった人が純愛とか言っても説得力ないよね」


 五十嵐は本を本棚に戻した。なんかブーメランしてる気がするけど、タイムリープしてるからセーフです。俺たちは本屋を出てゲームセンターの横を通った。


「人形とかいる?」


「え、いらない」


「あ、はい」


 ゲーセンで人形を取って好感度アップ作戦が水の泡になった。でも俺自身はゲーセンにちょっとだけやりたいことがある。


「ちょっとゲームしようぜ」


「いいけど。私苦手だよ」


「いいからいいから」


 俺は五十嵐の手を引いて店の奥へ向かう。そこには卵型の筐体が十台くらい並んでいた。皆がワイワイと交代で楽しんでいた。


「なにこれ?」


「最近はやっている『宇宙争乱 リベラ・ミーレス』ってゲームだよ!ロボットに乗って戦うんだ!」


 俺はこの筐体を直でメーカーから買って秘密基地ビルに置いている。ツカサやホヅミ、ケーカイパイセンと一緒にワイワイ楽しんでいる。俺は財布からカードを取り出して、筐体の中に入る。五十嵐も中に連れ込む。


「ロボットのコクピットみたいだろ?」


「……たしかに似てる……」


 うん?似てる?五十嵐はどことなく放心したような顔で操縦桿やペダルを見ていた。俺はカードを正面のコンソールに差し込んで自分のキャラデータを呼び出す。愛用の機体であるディンギル・アンがロードされた。


「これ手に入れるのにけっこう頑張ったんだぁ」


「……その機体は……レイの……あれ?」


 五十嵐が左手を頭に添えている。目を瞑り何かを思い出そうとしているように見えた。


「もしかして具合悪い?」


「んん。そんなことない。ないよ。続けて」


 俺はゲームをスタートさせる。今回は破壊されたコロニー跡でのバトルロワイヤルだ。レーダーは効かないステージである。敵が視界に入るまで何処にいるのかわからない。俺はコロニーの壁に沿って機体を飛ばす。すると目の前の壁に銃弾が当たった火花が散った。俺は素具に振り向いてビームソードを抜いて、振り向きざまに相手の機体を切り裂く。


「ふん!どんなもんよ!」


 俺は横にいる五十嵐にドヤァって顔をする。だけど五十嵐はまるで能面のような顔で画面を見ていた。


「常盤くん。次は上から来るよ」


「はい?そんな」


 次の瞬間警報音が鳴った。俺はすぐに機体を動かして迫ってきたビームを避ける。マジで上から来た!敵が槍を構えて突撃してくる。俺はそれを不安定な姿勢ながらライフルで狙い、撃って仕留めた。もし五十嵐の警告がなければ今の奇襲で大ダメージを喰らっていただろう。その後は慎重に索敵しながら一体ずつ敵を潰していった。そして最終的には俺が勝った。


「ふうぅ。結構ヤバかったなぁ」


 俺はため息を吐いて額の汗を拭う。


「常盤くん」


「なに?……え?」


 五十嵐はまだ能面のような顔をしていた。俺の背筋が凍りそうになる。


「下手」


「あ、はい」


 ド直球にディスられた。でも俺勝ったよね?これでもこのゲームの高位ランクプレイヤーの一人なのだが。


「代わって」


「う、うん」


 五十嵐が今度はコクピットに座る。


「他の機体にしたいんだけど」


「えーっとそれならこれだな」


 コンソールを機体選択モードに切り替える。五十嵐は矢印ボタンを押して機体を選んでいく。そしてとある機体で選択送りが止まった。


イェーシェン(葉限)?それ見た目は女の子っぽくて可愛いけどすごくピーキーだよ」


「これじゃなきゃダメ」


 五十嵐は俺の忠告を無視してイェーシェンを選択した。見た目は細いし丸みを帯びたボディは女性のように見える。そして特徴は腰の周りにあるビット兵器だろう。まるでスカートのように広がっている。そして背中に蝶のような二対のリアウィングがついている。移動時にはそこから光が出る仕様になっている。


「いつでもいけるよ」


 五十嵐は能面のままそう吐き捨てた。俺は決定ボタンを押してゲームをスタートさせる。殺気と同じバトルロワイヤルモードだ。通信で各地の猛者と戦える。俺のカードなのでマッチ相手はみんな高ランクのプレイヤーばかりだろう。ボコボコにされる未来しか見えない。そしてゲームはスタートする。


「五十嵐理織世。イェーシェン。出します」


 そして五十嵐の機体はカタパルトからステージに向かって射出された。






----作者のひとり言----


葉限は中国版のシンデレラですね。理織世にぴったりの機体名だと思います。



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