第186話 これはおねしょた!
刀を構える姉桐相手にどう攻めるか?少なくともこっちは数で優っている。ファルナーズは両手にナイフを逆手でもっていつでも踏み込める準備をしている。
「レディファーストで私が突っ込みます?」
「こういう時は男からだよ。黙って後ろついてきな」
「りょ!」
俺とファルナーズは姉桐に向かって駆ける。姉桐は太刀を水平に構えて俺が近づいてくると思い切り振りぬいてきた。俺はそれを跳ねて太刀の上を通って避ける。相手の胴が空いた。そこへケリを放つ。
「残念。手は二本あるのよ」
姉桐は俺の蹴りを刀で払った。この女、二刀流を完全に使いこなしている。
「残念!こっちは二人ですよ!玉とったらぁ!」
ファルナーズは姉桐の正面に飛び込みナイフを突き立てる。だが。姉桐はそれを上体を地面ぎりぎりまで反らしてから、ファルナーズの腹をおもいきり蹴り飛ばした。ファルナーズの身体が宙に浮かぶ。ファルナーズはうめき声をあげながらも空中で後方に一回転してから着地する。
「どんな筋力してんすかこのばばぁ!」
バイクを吹っ飛ばされても生き延びたお前が言うか?なんていう無粋なツッコミが頭に浮かぶが、ファルナーズの言う通りだ。姉桐はふわっと何事もなく上体を起こしてきて不敵に笑う。
「護衛の連中を下げておいてよかったわ。あなたたち相手だと無用な犠牲が出かねないもの。でも。私には敵わない」
姉桐は俺の方へと瞬時に移動してくる。打ち刀の袈裟切りを放ってくる。それを俺は躱すが、躱した先に太刀の突きが鋭く迫ってくる。
「くそ!」
俺は背中から十手を抜いて太刀を払う。だけど態勢を崩された。そこを姉桐は見逃さない。俺の足首を思い切り蹴り飛ばし、俺はその場にこけた。そして刀を逆手に持って首筋に向かって振り下ろしてくる。
「せんぱいあぶない!」
その刀に向かってファルナーズが飛び蹴りをした。刀はそれて俺の首を切り裂くことはなかった。
「あら。元気ね。これならどう?」
姉桐は俺を踏んずけながら、ファルナーズに向かって両手の刀でまるで鋏のように切り裂こうとする。
「誰が逃げるもんですかぁ!」
ファルナーズは両手のナイフで刀を受け止めて、耐えている。
「じゃあ力比べと行きましょうか?」
じりじりと刀はファルナーズへと迫っていく。このままだと真っ二つだ。俺は持っていた十手を姉桐の顔に向かって投げる。
「きゃ!」
姉桐は十手を避けるために後方に跳んだ。
「チャンス!おりゃぁ!!」
ファルナーズは背中の方に右手を伸ばした。そして思い切り手を振る。ファルナーズから何かがしなるように姉桐に迫る。
「なに?!くっ!」
姉桐はそれを太刀で払う。だけどそれは太刀にグルグルと巻き付いていった。
「鞭?!」
「そうですよぉひゃぁ!」
ファルナーズは鞭を思い切り振る。すると太刀は姉桐の手からすっぽ抜ける。そして俺の傍に太刀は落ちてきた。俺はそれを拾って立ち上がり、姉桐に斬りかかる。
「ちっ!トリッキーね!」
俺の斬撃は小太刀に払われる。だけどファルナーズによる鞭の攻撃はまだ止まらない。
「しゃぁあああああらぁあああ!!」
鞭の先は地面を跳ねた後、姉桐に向かって飛んでいく。それを上体だけ反らして姉桐は避けた。
「この程度の手品は!!」
「もういっぽんありますぅ!」
ファルナーズの左手にいつの間にか鞭が握られていた。それが今度は姉桐が持っていた二本の刀をグルグルに拘束する。
「いまですせんぱい!」
「うっしゃぁ!」
俺は姉桐にタックルをかます。姉桐は地面に倒れた。その拍子に両手の刀を落としてしまう。
「く!でもまだ!」
姉桐は腰からナイフを抜いて俺に抵抗しようとする。だけど俺は姉桐の上で横に一回転しながら靴でナイフを蹴り飛ばす。
「ブラジリアン柔術!スオウ流!ノーギ!渋谷ハート!」
俺は姉桐の股に俺の太ももをさしこんで絡めさらに両手でがっちりと腕と首を拘束する。
「ちょ!まって!いや!あっ!こんなの!だめぇ!」
姉桐はじたばたするがブラジリアン柔術の前で抵抗は無駄だ。なお姉桐のデカいおっぱいの柔らかさにちょっと興奮しちゃう自分がいるのが悔しい。
「ナイスっすかなたせんぱいぃ♡おらぁ!3.1415Pじゃい!」
ファルナーズも俺たちに向かって覆いかぶさってくる。ファルナーズは姉桐の持っている武器を次々剝ぎ取っていく。そして。
「せんぱい!尻を突き出させてください!」
「うん?こうか?」
俺は姉桐を持ち上げて尻をファルナーズに突き出させるような格好にさせる。
「いやぁああ!なにこの辱め!」
「いいしりしてんじゃねぇかよ!ひゃっはー!おら!泣け鳴け!」
ファルナーズは姉桐のお尻をぺちぺちたたき出した。
「きゃ!いやぁ!あん!ひぃ!!」
「いい音するぜぇ。尻の奥の膜が響いてますねぇ。ビブラート聴いてるぅ」
そしてひたすら尻を叩き続ける。
「うう!うぇ!ぴぇ!びええええええええええええんん!」
余りにも責められたせいか姉桐がボロボロ泣き始める。身体から力が抜けるのが感じられた。俺は姉桐の拘束を解く。だが暴れる様子はなかった。姉桐はぺたんと女の子座りでひくひくと泣き始める。
「胸、男の人にさわられたことなかったのにぃ。抱き着かれたのもはじめてなのにぃ、お尻叩かれた!親にもされたことないのにぃ!うぇええええええええええん!!」
ぼろなきである。ファルナーズはニチャニチャと姉桐を見下ろしている。俺はどこかいたたまれない気持ちでいっぱいだった。その時、パソコンの方からピコンピコンとアラームが鳴った。
「データのロード終わったみたいっすね!」
ファルナーズはルンルン気分でHDDをパソコンから抜いてリュックに仕舞う。
「せんぱーい。かえって打ち上げしましょー!」
「う、うん。わかった」
男としてはぴえんぴえんしている姉桐に後ろ髪を引かれる。
「そのー。今回の件は誰にも言いませんので……」
俺はそれだけ言ってファルナーズと共に遺跡を後にした。後ろからは姉桐の泣き声がスンスン響いてきて、勝負には勝ったが、何かに負けたような気がしたのだった。
予告
シーズン -1
天彁吟詠歌 ディンギル・リル
国連軍月面方面軍ヘルツシェプルングクレーター師団第442小隊戦闘団 通称葉桐隊
「人は何処から来て、何処へ行くのか。それが知りたいだけだったのに、どうして私は戦ってるんでしょうね?」
「生きたイからだろウ?」
「こんな夢も見られない世界で?」
反安保理組織 レコンキスタドール
「世界はどうしようもなく間違っていて、でもその世界も間違えたくて間違っているわけじゃなくて、でもその中であたしたちはひき潰されていく」
「わたしたちはただただ生きたかった。愛する人と共に、夢を抱きながら」
「「だから私たちは間違え続ける。それでも生きていたいから」」
国際連合安全保障理事会軍事参謀委員会付属宇宙軍事科学研究所万有総攬理論研究室
「すべては生きたいがための闘争でしかないのだよ。そこに貴賤も善悪もない。生きることそのものへの意思だけがある。それ故に人は幸福になれない。この宇宙がそれを許容しない。それが絶対のルールなのだよ。我が娘」
ヒトに墜ちた女神
「今この瞬間だって楽しいのに、どうして未来のために争うの?そんなの無駄じゃない」
世界を救う勇者たる王子
「ファカット・スワァティー・レイ。仰々しい言葉を並べ立てれば王に成れると驕る不届き者め。僕こそが世界を救うんだ」
ファカット・スワァティー・レイ
「理織世。君はまだ幸せを知らないんだ。だから選んで欲しい。自分のための未来を。俺がその道を切り開くから」
----作者のひとり言----
姉桐さん(´・ω・`)




