第173話 9x19mm
波打ち際を歩いているとしゃがんで何かをやっている五十嵐の背中が見えた。艶やかな肌とキュッとしたくびれとお尻の丸みにちょっと興奮してしまう。俺は背中越しに声をかけた。
「なにやってるの?」
「え?きゃ?!常盤くん?!」
五十嵐は驚いて俺の方へと振り向く。慌てた様子が珍しくて可愛らしい。
「貝殻でも探してる?」
「い、いや!そうじゃないよ!……あはは」
五十嵐はなぜか俺に背中を向けたまま何かを隠そうとするかのように体を地面の方へ体を傾けた。俺は首を傾げる。珍しい反応だ。隠し事なんて基本しない女なのだ。葉桐絡みでもなさそうなのに。
「お城でも作ってる?」
「え?いや。そうじゃないんだけど……」
目をきょろきょろと泳がせる。戸惑っているみたいだ。だけど気になる。何をしているのかが。俺は回り込んでそれを確認しようとした。だけどすぐに波がやってきて五十嵐の隠していたところを攫って行く。
「あ……」
五十嵐はどことなく悲しそうな顔で波を見ていた。だけどすぐに立ち上がって穏やかに笑みを浮かべる。
「まあ仕方ないかな」
「なにがさ?」
「私には向いてなかったってこと」
はてなが頭の中でいっぱいになる。五十嵐はそのままBBQ会場の方へと歩いていってしまった。なんだったんだろう?俺は砂浜を見詰める。だけど彼女がやろうとしていたことの痕跡は何も残されていなかった。
俺もBBQ会場に向かおうと歩いている時だ。日根野谷と東海林の横を通って足を止めた。
「なんだなんだ。おもしろそうなことやってんな」
「肯定。美の大成」
日根野谷は東海林の身体を砂を被せていた。砂風呂ごっこ。陰キャな俺にはラブコメ漫画の世界みたいでエモい。
「おっぱいはもっと盛ってもいいんじゃね?」
「成程。増量」
「ちょ!そんな奴の言うこと聞くなし!」
日根野谷は東海林の胸元の砂のおっぱいをもっと大きくした。じつにナイスバディである。
「でっか!揉んでもいい?」
「だめに決まってんでしょ!あんたはあーしたちの敵!」
東海林はガルガルと俺に威嚇してくる。でもさ、べつにこういう場までいがみ合う必要ないよね。葉桐だっていないわけだし。俺は日根野谷の隣に置いてあったバケツから海水を少し貰って砂に混ぜて泥をつくり、東海林の腕を作った。モナリザ風のギャルピースの彫刻ができた。我ながらいい出来である。
「美術。得意?」
「ああ。美大には落ちたが俺はアーティストだ」
美大に落ちたことは今でも悔しいが、俺自身は自分でもセンスがある方だと信じている。創作活動はずっと続けているのだ。
「逆接。当方。優秀」
日根野谷は東海林の股間を挿す。そこにはちょこんと塔が立っていた。
「なにその控えめな塔?」
「否定!偉大!長大!強大!」
「てかその位置って……」
日根野谷がどやぁって顔をする。そして東海林もニヤニヤと笑う。
「どう?あーしたちのヒロトのマグナムは!すごいっしょ!あ!ごめーん!自信なくした?さーせんwwww」
なんか煽ってくる。なるほどあの塔は葉桐のアレのリアルサイズらしい。だけどそれを見ても俺は一切動揺しなかった。俺は冷静に水着のゴムひもをひっぱって自分のあれを見る。そして嗤った。
「はっ!」
「「!!??」」
二人は俺の不敵な態度に動揺を隠せないようだ。
「え……あんたのってヒロトのよりも……」
「ふっ」
俺はただ嗤う。それだけで二人は絶望的な顔になる。
「あーそっかぁ!かー!葉桐のってそんな感じなんだぁ!葉桐くぅんって9x19mmパラベラムなんだぁ!くくく、アーハハハハハ!」
俺は嗤い続ける。あんなに偉そうなのに葉桐くぅんのムスコは9x19mmパラベラム弾!もうなにも怖くない!俺は立ち上がり。
「ハットトリック!」
そう叫びながら葉桐くぅんの塔の根元を思い切り蹴った。
「「?!!??!ヒロトぉおお!!(ひろひろぉ!!)」」
葉桐くぅんの9x19mmパラベラム弾はヒューンと飛んでいく。そして櫛に刺さったお肉を食べていた五十嵐の足元に落ちる。
「ん?なにこれ?いぬのうんち?」
五十嵐は嫌そうに顔を歪める。俺は五十嵐に手を振った。
「五十嵐ぃ。それは泥団子だ!こうしてこう!」
俺はその場で足を踏み鳴らす。すると五十嵐は首を傾げながらも俺の真似をして、葉桐くぅんの9x19mmパラベラム弾を踏みつぶした。
「「ヒロトぉおおおおお!(ひろひろぉおおおおお!)」」
そして葉桐くぅんの9x19mmはぺちゃんこに潰れて跡形もなく消え去った。俺はガッツポーズして叫ぶ。
「ごおぉおおおおおおおおおおおおおーーーーる!!ほぉおおおおおおお!」
こうしてこの世から悪は駆逐されたのであった。
---作者のひとり言---
ヨッメーにいぬのうんちとか言われてんの草




