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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4  After 『誰よりも輝ける夏』

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第144話 次のニュースです!反社がブームになりかけております!現場からは以上です!

セミナーの会場へと俺たちはやってきた。そこはテレビ番組の収録などで使うスタジオであり、俺たち学生のためのパイプ椅子が並べられていた。


「ねぇねぇ常盤くんあれ見てよ!ニュース番組のテーブルだよ!」


 五十嵐がちょっと興奮しながらはしゃいでいる。セミナー会場は報道番組のセットの近くだった。なんとも学生の度肝を抜いてくるような演出だと思う。実際セミナー参加者の学生たちはスタジオのセットに圧倒されて委縮しているように見えた。だけど五十嵐さんはそんなの気にしないガールです。空気なにそれ?美味しいの?って具合に番組セットに堂々と侵入していった。


「あれぇ?見られてるって言ったんだけどなぁ…」


 そうぼやきつつ俺もまた報道番組セットの中に侵入する。他の学生にすごく白い目で見られてるけど、俺もまた気にしない。五十嵐が堂々とセットのアナウンサー席に座ったので、俺もまた隣の席に座る。


「突然ですがニュースです」


 五十嵐は実に楽し気にキリリとした顔になって。


「今日の数学の講義は休講になりました!」


「それただのお前の願望じゃねぇかよ」


「えー常盤くんぅ!ノリ悪い!なんか専門家っぽくコメントしてよ!」


「しゃーないなぁ。おほん。今回の事件の核心は講義をお休みした教授ではなく、むしろ休講を歓ぶ学生に責任があると思います。最近の若い者は大学を遊び場だと思っていて大変嘆かわしいですね。ぷんぷん」


「常盤先生ありがとうございました。でも私は講義がなくなって嬉しいと思います。では次は特集です。若者たちの間で反社がブームになっているそうです。番組は総力を挙げて取材を行いました…!」


 なお今のやり取りは全部マイクに拾われててスタジオ中に響いていた。学生たちからドン引きの目で見られてるけど、局側の大人たちはクスクスと好意的に笑っているのが見えた。


「いやぁやっぱりいいねぇ!さすがは五十嵐さんだ。すごく映えてるよ!」


 ぱちぱちと拍手しながら一人の男が近づいてきた。顔は良くスタイルもいいお育ちも良さそうな感じ。実家が太そうな匂いがプンプンする。


「あれ?もしかして志熊君?ひさしぶりだね!」


 五十嵐はその男の顔を見て嬉しそうに笑う。この男のことは俺も知っている。前の世界の五十嵐の元カレーズの一人。よく覚えてる。付き合いたての頃、まだ童貞だった時に妨害食らったもんでかなり苦戦したからな。まあ最後は海外で行方不明になってしまったけどね(棒)。可哀そう(棒)。


楓真(ふうま)って気軽に読んでくれてもいいのに。アメリカじゃそれくらい普通だよ。普通」

 

 その男は番組セットに堂々と侵入してきて、五十嵐の前に立った。


「うーん。私あんまり男の子は名前呼びしたくないんだ。そういうの苦手で」


「そうか。相変わらず奥ゆかしいんだね」


「でもどうしてここにいるの。アメリカの大学に留学中でしょ?」


 志熊楓真。五十嵐と同じ高校の出身であり、クラスもおなじだったそうだ。今の時代はアメリカの名門であるハルバルド大学に籍を置いている。


「単位は十分取ったからね。しばらく日本で過ごすことにしたんだ。テレビ局へはちょっと用事があって、たまたまスタジオの前通りかかったら五十嵐さんの声が聞こえてきたから、寄ってみたら本当にいて驚いたよ」


「へぇ!すごい偶然だね!」


「偶然かな…いや、むしろ。やっぱり運命なのかもしれないよね…」


 気障い台詞も顔がよければよく似合う。


「噂で聞いたけど。葉桐とはまだ(・・)幼馴染のままなんだって?」


 こいつ。今の質問だけで嫌なやつだって再確認した。葉桐が今日本にいないことを知っていて帰ってきたな。五十嵐は質問の意図を察したのか、微妙そうな顔をしている。


「じゃあ俺にもチャンスはあるのかな?どうかな?セミナー終わったら食事にでも」


「あいにくだけど、その予定はもう入ってんのよ。五十嵐は俺と焼肉に行く」


 俺は志熊と五十嵐の会話に割って入ることにした。


「へぇ?そう?それは本当かい?」


 志熊は五十嵐にそう尋ねる。五十嵐は俺をぽけーっとした顔で見ていたけど、嬉しそうにこくりと頷いた。


「…そう。まあ。急な再会だったから仕方ないね。また今度改めて誘うよ。じゃあまたね五十嵐さん」


 そう言って志熊はにこりと笑って踵を返してスタジオから去っていった。


「常盤くん」


「なに?」


「今日は飲み放題のところがいいな」


「わかった」


 五十嵐は微笑みながらそう言った。その笑みはとても美しくて、手に入れたい(・・・・・・)と思わせるような魔性が宿っていた。

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