第141話 スーパーホスト伝説~反社のカナタ~枕させろ編
『小ネタ』
葉桐翔斗論文選集よりインタビュー記事抜粋
Q 葉桐博士は世界を救うフレームワークを発見したと主張なされていますね。
A 私は確かに発見したよ。人類文明を救うフレームワークをね。
Q その理論はあまりにも難解でこの世界に理解できるものは一人もいないとかって話ですが。
A ようは私が主張する理論を君は嘘っぱちだと言いたいのだろう?そう思うならそう思い給え。だが私には揺るぎない覚悟がある。私は世界を救う。
Q そこが一番わからないのです。世界を救うとは一体何なのですか?
A 世界とは世界のことだ。ここにいる我ら一人一人の人生のこと。命のこと。思想のこと。あるいは祷り。
Q 質問を変えます。ではなぜ世界を救いたいと思ったのですか?
A 逆に問いたいのだが、なぜこの世界が救われなければならないと君たちは考えないのかね?
Q 世界なんて大きなものを我々は考える時間はないんですよ。特にこの現代ではなおさら。
A いいや昔の方がもっと過酷だった。それでも人々は世界が救われて欲しいと祈り続けてきた。世界のあちらこちらにはその痕跡が今も残されている。すべては祷りから始まったのだ。文化も文明も社会も国家も。すべては世界を救いたいという祷りから生まれたものだ。
Q はっきりと申し上げておきたいのですが、学環府も含めてあなたの思想は極めてカルトのそれによく似ているように思えるのです。
A なるほど。だが我々はカルトではない。いいや。カルトでも構わない。世界さえ救えればそれでいいのだから。
Q 葉桐先生…。あなたはどうしてしまったのですか?何がきっかけだったのですか?
A きっかけ?世界を救いたいと思った理由かね?沢山ありすぎてそれこそ動機は尽きないよ。例えばそうだね。かつて私は幼いころ、両親につれられて途上国に行ったことがある。そこで見たものは哀れでなによりも悍ましいものだった。
Q 貧困問題か何かですか?
A いいや。私自身の悍ましさに耐えられなかった。飢えた子がレストランでランチを食べる私をじっと見ていた。私はその子から視線を反らして大してうまくもないランチを食べ切った。幼い私には分け与える勇気がなかった。それが悍ましい。
Q それこそそれは普通のことでしょう。あなたが格別悪いとは私には思えませんが。
A いいや。いいや。私は命の螺旋と共に紡がれてきた人類の祷りをその瞬間裏切ったのだ。別にそれだけではない。私には耐えられないことばかりだ。かつて友人に恋人を作ってやろうとしたことがあった。だけど向かないことはある。友人は終ぞ恋人を得ることなく生を終えた。彼の遺伝子の億年の旅はそこで尽きてしまった。私は淘汰に手を貸してしまった。
Q それだって普通のことでしょう。残念ですが。
A 残念などという言葉で片づけられるほど割り切れない。私は普通であることの難しさを知っている。そこに至ることなく飢えて死ぬもの、淘汰されて死ぬもの、殺されて死ぬもの、…自ら命を絶つもの…。どうして彼らに救いはなかった?それとも宗教が唱えるように死後の世界や輪廻からの解脱に期待するのかね?誰もそれを見たことがないのに?それは祷りから零れ落ちた言い訳だ。そう。救いは現世で行われなければならない。かつて神は自らの姿に似せて人を創った。ならば我らが我らに似せて神を作ったならばそれはきっと人によく似ているのだろう。救わねばならない。みんなが待っているのだ。全ての際を超えて、我らは救済に至るのだ。
Q 先生。あなたは…。それは…大人の見る夢ではありませんよ…。
A 私はこの世で悪夢はもう見たくない。だからすべてを救う。ただそれだけだ。
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('Д')<では本編をどうぞ!
今の今まで接客してきた女たちなんて、目の前のノスフェラトゥに比べたら子猫みたいなもんだ。
「エウはボセに会いに来たデース!!」
「なんすかその絶対に普通の人に伝わらないえせ外国人口調。酔いすぎ。ハメ外しすぎじゃね?」
「イや。むしろハメられたイ。初回枕は当然アるんだろウ?」
「綾城さんみたいなこと言ってるぅ!やだこの人ー!」
とりあえずスオウのお隣に座る。するとすぐにスオウは俺の肩に首を乗せてきてセルフィーとか撮りだした。キャきゃと写真を楽しそうに見ている。
「なんかキャラがマジでいつもと違うなぁ…」
「アア。人生で初めてはッちャけてイる気がする。今までは金を稼げども稼げども右から左だったからな。金ヲ使うのッてこんなに楽しインだな。知らなかッたよ」
ふっと思った。確かにこの子はそういう人生だった。今や片手にドンペリの瓶を持ってそれをダイレクトに飲んでいる有様だ。だけどテーブルの上にあった伝票を開いて中身を確かめる。
「え?請求料金が初回料金の飲み放題コースだけ?!ちょっと待て?!そのドンペリとかテーブルの上のシャンパンとかは何処から手に入れた?!」
スオウは首を傾げていたが、ふっと微笑んで。
「なに簡単な話だ。私とシャンパンの飲み比べで勝ったら払ってやる負けたら自腹で勝負していッた勝ち続けた結果だ。そろそろシャンパンの味にも飽きてきたな。ふッ」
「ここそういうお店じゃないぃ!ツーかこの周りで死んだバカどもはあれか!スオウに負けたのか!なんか憐れでたけど欲の皮突っ張ってるバカどもかよ!心配して損したわ!」
ケーカイパイセンもツカサもスオウから毟ろうとして負けていったのだろう。だめだよ。戦う相手はちゃんと選ばなきゃ。
「カナタ。私ぃ酔ッちャッたァ」
「お、おう」
スオウは品をつくって俺の首に絡みつく。ちなみに振りほどこうとしたけど、ちっともスオウの腕をちっとも動かせない。
「アフターはブラジルか枕がイイなァ」
「何その二択ぅ?!」
「ブラジルで枕でもイインだぞ」
「合体した?!ブラジルで枕?欲張りセット過ぎ!」
今の俺はホストだけど、枕はしないって決めてんだ。俺は客に媚びない。プライドがあるんだ。
「私とベットの上でサンバしながらハットトリックしよ?」
「落ち着け落ち着け。綾城みたいになってるぞ。ていうかスオウ俺を指名しても何のドリンクも入れてないじゃん。そう言う相手に枕はちょっとねぇ」
「む。なるほど。確かに私は何も入れてないな。……!!」
あ。やば。なんか絶対にロクでもないこと思いついた顔してる。
「すみませン!」
スオウは近くいたボーイさんを呼び出す。
「どのような御用でしょうか?」
「今日カナタの次に売れているホストは誰だ?」
「それなら寿限無さんですね。復帰で集まってきたファンの方々がガンガン貢いでますよ。皇さんとは売り上げは50万円差ですね」
「じゃあそいつにこの100万円のシャンパンのフルセットを入れてやれ。差し入れだ」
「え?!ちょ!?なに?!なんで俺以外のホストに入れてんの?!」
そして店内に激しいBGMが鳴り響く。
『なんと本日のナンバーワンがここに来て逆転しました!では王子よりお言葉を3・2・1!』
『売上なんかどうでもいいからこの人の卓から逃がしてくれぇ!!』
「あらあらまだ調教が足りないのかしら?さあ私をトラウマにしなさい!」
『ぎゃーーーーーーーー!!』
ホストの壁の向こうで寿限無ことホヅミが相も変わらずムーちゃんに虐待されているようだ。そしてマイクは俺の隣のスオウに渡ってくる。
『指名ホストを無視して別のホストに差し入れした姫様よりお言葉をいただきまーす!3・2・1』
『ブラジルには『推しの敵にシャンパンを送る』という言葉がある。推しを覚醒させるには推しに危機感を持たせよという大事な格言だ。ちゃんと覚えて帰る様に』
「「「「おおおお!」」」」
なんかお客の姫様たちがその格言をメモっている。でも絶対にそんな諺ないよね。
「そんな格言あってたまるか!え?なに?俺への嫌がらせ?!今俺お前に本気でDV営業したくなったんだけど?!」
「構わなイぞ。ブラジルオごじョは情け深いのだ。オ前がいくら私にDVしても、私はオ前を愛し続けるからな」
「逆にDVしづらいパターンだ!バブみを感じる!オギャァ!」
だがヤバい。せっかくラスソン確定してたのに、ホヅミに奪われた!スオウめ!身内だと思ってたのに!
「カナタァ。枕しよ?枕かブラジルしてくれたら、逆転させてア・げ・る」
「なんで俺が逆に追い込まれてるんだ?!これが百戦錬磨の元キャバ嬢の手練手管?!」
ところでブラジルするってどういう意味?なんかすごく怖いんですけど。俺の中でもはやブラジルは修羅の国である。しかしどうすれば枕せずに逆転できるんだ?俺は思考を高速で回す。
「カナタァ。枕ァ。ブラジルゥ」
「スオウ。お前もう俺に勝った気でいる?あめぇよ」
「何?私の何処が甘い?」
「おまえはまだホストクラブをちっとも楽しんでない!ミラン!召喚!!」
俺がそう言うとミランがどこからともなく現れた。
「なに?!私に気配を感じさせなかッた?!」
「そりゃボククラスの役者になれば演技の力で気配くらいいくらでも操れるさ!そんなことより!ボーイさん!この30万のオリジナルシャンパンください!」
ミランはボトルを入れてくれた。そう。別にスオウから入れてもらうことにこだわる必要はない。
『当店のオリジナルボトルありがとうございまーす!では姫様より一言賜ります!3・2・1!』
『ねぇねぇ!駆け引きツンデレで他所の男にボトル入れて、他の女にボトル貢がれちゃったねぇ!どんな気持ちですかー!ボクたちのホストはお前以外にも財布女がいっぱいいるんだぞー!僕にはパンツ一丁になるまで貢ぐ覚悟があるぞぉ!ふぉおおおおお!!男に貢げない女は帰れや!帰って一人で枕抱いてオナってろバーカ!バーカ!』
ミランさんがめちゃくちゃオラついてる!すげぇ気持ちいい。それを聞いたスオウさん顔を真っ赤にしてプルプル震えている。
「私!日本語!滅茶苦茶わかるぞ!オラァ!!この童貞女がァ!!私のガチャパワーを舐めるなァ!!」
スオウはすぐにミランからマイクを奪って、ボーイさんに10万のシャンパンを注文した。
『対抗ボトル入りました!みにくーい!女の争いみにくーい!もっとやれ!もっとやれ!お言葉3・2・1!』
『お前は露出狂のドMのくせにまだまだ恥じらいが残ッてるところが童貞くさインだよゥ!オ前が本当にやりたいアピール!私が代わりにやッてやるよ!』
そう言ってスオウはシャツのボタンを一つ外して胸の谷間を晒して、その谷間をスマホでパシャリと撮った。そして何か操作をすると、すぐに俺のスマホのメッセージアプリに今撮ったと思われるセクシーセルフィーの画像が届いた。…エロ!顔は鼻までしか映っていない素人感がすごくそそる。胸の谷間とちらりと覗く黒いブラがいい感じに白い肌に映えている。これは100点のエロ自撮りである。というか女の子からエロ自撮りが送られてくるってすごくいい!やばい!なにこれ!興奮が止まらん!
「そ、そんな?!それは!それはなしでしょ!ボクがいつかエロセルフィー送り付けるはずだったのに!」
なにそれ?新手のBSS?
『悔しがれよ!推しのエロセルフィー童貞!私が奪ッてやッた!』
「ぎゃあああああああああああああああ!!」
ミランはその場で崩れ落ちる。ぺたんと女の子座りになってしくしくと泣いている。そして逆にスオウはガッツポーズを取っている。何この勝負。すげぇ見苦しい。だけどまだ足りない。ナンバーワンに返り咲くにはスオウから貢がせねばならない。本当の闘いはこれからだ!!
次回。ホスト編最終話
~隣でめちゃくちゃブラジル・ポルトガル語でオラついてるエディーニャさん。彼女は俺がブラジル・ポルトガル語ができることをもちろん知っている~




