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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4  After 『誰よりも輝ける夏』

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第133話 悪徳商人参上!

 高笑いするムーちゃんと膝をついて慟哭する楪。お互いの立場は鮮明に示されていた。


「長かった。長い長い屈辱だった!私はあなたよりも前に小説書きを始めた!乳袋チェスト!あなたは知らないでしょうけどねぇ!」


「な、なんのことですか?」


 なんか悪役が不幸な過去を語りだすような感じで回想をはじめるムーちゃん。


「六年。そう六年かかかった。いつもランキングの上位に君臨するあなたを超えるのに私は六年もの年月をかけた!!来る日も来る日もテンプレを研究し!どんな文章がウケるかを解析し!ワードや設定を繊細に作りこんでは世に作品を出し続けた!センターも入試の日もSNSで必ず宣伝した!だけど私に勝利の女神は微笑まなかった!だけどわたしはあきらめなかった!だけど来る日も来る日も研究に研究を重ねてやっと私はテンプレの究極策であるカノエロに辿り着いたのよ!!爽快だったわ!!あなたを抜き去って書籍化をキメて!コミカライズし!アニメ化までいった!あなたが才能に溺れている間に私は論理を磨き上げた!その結果はこれよ!くくく、あーはははっはははあは!」


 まるで魔王みたいだけどムーちゃんはムーちゃんで苦労してやっと手に入れた成功なんだ。それは敬意を払うべきものだろう。


「だからこれからは私が楪さんにアドバイスしてあげるね。公正世界信念と生存バイアスにまみれた創作論であなたを私色に染めてあげる」


「それ一番いやなSNSインフルエンサーの振る舞いじゃないですか!成功してない人が悪いみたいな言い分を道徳的に語る一番ズルい奴ですよね!いやぁ!そんなのきかされるのいやぁ!」


「でもあなたは成功してない。私は成功した。それがすべて」


「これからなんですよ!わたしはこれから這い上がるんですよ!仲間たちと共に這い上がってみせるって!この同人誌に誓ったのです!!」


 なんだこの勇者と魔王の会話は?まあクリエイターはこういうものかもしれない。まあ今日のところはこれでお開きということで…。


「話は聞かせてもらッたぞ!その勝負ワタシに預けてもらオウか!」


 その時だった。余計な口を挟む奴が出てきた。よく知ってる声だったけど一応振り向く。そこには白のシャツに黒のタイトスカートのエチチOLスタイルのスオウがいた。そしてその後ろには沢山のレイヤーさんが並んでいた。


「スオウ。何でここにいるの?」


 なんでこうバカがここに集まってくるんだろう?べつに何かを仕込んだつもりは全くないのだが。


「仕事でここにきた。我がオブリガーダ社が今月リリースするソシャゲー『プリンス・ネモレンシス』の販促にきたンだ!現在企業ブースに展示中だぞ!是非見て行ッててくれ!」


 そういえば仕事で来る人もいるのか。でそれはいいとして。


「勝負をあずかるってどういうこと?もう決着はついてると思うんだけど」


「イやそれは違う。そもそも小説の面白さなど、読者の主観でしかなイ。多数決でふわッと支持されてイるよりも、少数派が狂気的に支持する作品の方が売り上げヲ出すことは多々アることだ」


「たしかにそう言われればそうだな」


「だから別のことで二人には勝負してもらッて。適当にこの葛藤をごまかしてしまエばイインじゃなイかな?」


 最後の方は小声だけど、まさに俺が求めていることであった。


「はい!スオウさん採用!じゃあ仕切りは任せた!」


「任された!」


 そしてスオウはいがみ合う楪とムーちゃんの間に割って入った。


「二人ともオ互イにわだかまりがアるのだろウ。なら勝負で決めようじゃなイか」


 楪たちは首を傾げているがスオウに耳を貸している。


「ここに2着のコスプレスーツがアる。わが社が今度出すゲームのキャラクター、アーキバスとアマラウ。そのコスプレだ。二人にはこれに着替エて貰ってコスプレブースに行ッてもらイ、カメラ小僧どもの前でエロ…失礼。魅惑的なポーズを取ってもらってゲームの宣伝をして欲しい」


 あれ?なんか一瞬本音らしきものが漏れかかった?スオウ?この勝負本当に二人のためなのか?


「それはいいけどどうやって私たちの優劣を決めるの?」


「そうですよ!コスプレ勝負なんて定量的に決定できるんですか!?」


「SNSで二人のコスプレのウちどちらが話題となッたかヲ測定する。今の時代はネットマーケティングでそれくらイイくらでもできる」


 スオウは自信満々にそう言った。それで楪たちは考え込み始める。まだ勝負するにはお互いに一手足りない感じだ。


「なオ。勝ッた方にわが社からシナリオライティングの仕事を正式に依頼する。コスプレ+シナリオ執筆とイウ話題性。小説家にとッては喉から手が出るほど欲しイものではなイかな?」


「やります!!」「やるわ!!」


 二人の小説家は勝負を了承した。その時、一瞬だったけど俺は気がついた。スオウがどちゃくそに邪悪な笑みを浮かべていたことを。


「スオウさんスオウさん」


「なんだカナタ」


「この勝負でお前には何か利点があるのか?」


 スオウはニヤリと笑って言った。


「見た目だけはS級の二人がキャラのコスプレヲして、コスプレブースで暴れてくれれば、それだけでわが社のコンテンツのコマーシャルになるだろウ?しかも無料(ただ)でだ。誰も損をしなイ素晴らしいwin-winだろう?」


「こわ。起業家の策略こわ」


 底知れない商売への執着。スオウの新たな一面に俺は動揺を隠せなかった。


「さらにはコスプレ美少女の書イたシナリオの配信。ガチャが景気良く回ること間違イなしだよ。くくく、ははははは!」


 やだぁこの人悪徳商売してるぅ。俺はとんでもない女に投資をしてしまったのかも知れない。この勝負、スオウがすでに勝ち確定で残りの二人はピエロである。いと憐れ。
















 キャラクターの設定から考えて、アーキバスを楪、アマラウをムーちゃんが担当することになった。


「カナタさんどうですか?似合いますか」


 ピンクの髪に紫色の瞳。そして黒の大礼服風スカートスーツのコスチューム。なんか意外と似合っていた。


「なんか似合ってるね。大礼服におごじょっぽさ感じるよ」


「そうですか。それならよかったです。でもやっぱりちょっと恥ずかしいですね…」


「まあでも楽しんできなよ。勝てば大きなチャンスが得られる。負けても損はない」


「はい!わたし!頑張ります!!」


 そして楪は堂々とコスプレブースに…出るわけがなかった。建物の内側からこっそりとコスプレブースを覗き込んでいる。でるのにビビってるな間違いなく。


「けっきょくいつもの楪だった!?」


「か、カナタさん!なんですかあのカメラ小僧の量は?!おかしいですよ!あんなにカメラあったら魂が吸いつくされかねません!」


「いつの時代の迷信だよ」


 対してムーちゃんはすでにコスプレブースでアマラウというキャラクターのコスプレをしてカメラ小僧相手にコスプレしてる。そして道行く人たちに「プリンス・ネモレンシス」のチラシを配って宣伝にも貢献していた。


「楪!聞いてくれ!」


 俺は楪の肩に両手を置く。


「ひゃ、ひゃい!」


「お前が勝ったら、俺にできることは何でもしちゃる!だから頑張れ!頑張るんだ!!」


「…え?なんでも?」


「え、エッチな奴以外なら…」


 楪はしばらく目を細めて考えていた。そして。


「わたし、行きます。激しく散るところ見ててください…」


「散る?ま、まあ頑張れ!」


 そして楪はコスプレブースへと堂々と入っていた。これから本当の勝負が始まる!



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