第114話 常盤組フロント企業爆誕!
最近授業が終わると大抵の場合、スオウが正門の前で俺を待つようになった。借金は消え去ったが、その恩は消えていないと本人は主張しており、何かと俺にして欲しいことはないかと聞いてくるのだ。ついこの間までは俺がガバガバとスオウに貢いでいたのに、今やすっかり逆転状態である。とりあえず最近はスオウにはメイド服を着てもらってお部屋のお片付けをしてもらったり、お洗濯してもらったり、耳かきしてもらったり、ご飯を作ってもらったりしている。とは言えどもそんなことをずっと続けてさせるつもりはない。
「オ疲れさまです。ご主人様」
正門前にてメイド服を着たスオウが俺のことを出迎えてくれた。周りからひそひそ声が聞こえるけど、ぶっちゃけすごく気分いいです。あんなにも貢いだ高値の花が今や俺のメイドさん状態である。なんか男ごろに滾るものを感じる。
「うむ。ご苦労ぅ!」
「では今日もご奉仕させてイただきます!」
「あ、それなんだけどね。今日はスオウを連れていきたい所があるんだ」
「連れてイきたイところ?ご主人様がそうおっしゃるなら」
俺はスオウを連れて電車に乗って渋谷までやってきた。そして歩くこと数分で、俺の秘密基地ビルに辿り着いた。
「ここ俺の秘密基地」
「秘密基地ですか…?!ワタシ、武器ならなンでも使エます!ヘリヲ堕としたこともアります!戦争ならまかせてくださイ!」
「そうイウ意味の基地じャなイからね!!」
ヘリを堕としたとか何気に怖いこと言ってるんだけど、ブラジルってそんなに修羅の国なの?俺はスオウを連れて二階の空きテナントに入る。
「これは?ポルノの撮影スタジオ?アの、さすがにそウイウ仕事はできません!でも夜のご奉仕なら喜んで…でも撮るのはダメですけど…」
「お前は俺をなんだと思ってるのさ?!」
「日本のミリシャ」
「ヤクザよりヤバそうな称号もらちゃったよ!!」
俺たちの目の前にはごく一般的なオフィス風景が広がっている。デスクとパソコンと、パーティションで分けられた区画と会議室などなどオフィスに必要なものは全部用意しておいた。パソコンだってちゃんとツインモニターで16GBのメモリがある。俺はスオウの手を引っ張って奥の方に連れていく。そして一番大きな机の椅子を引いてそこにスオウを座らせた。
「どう?ここから見える風景は?あ、もう敬語はやめてね。いつも通りで」
「どウッて?ただのオフィスにしか見エなインだが?まア、ホワイトカラーの仕事には縁がなイから新鮮だが」
どことなくだが、スオウは仕事の風景を想像して楽しんでいるように見えた。これなら安心だ。
「スオウにはこれからITで起業してもらうことにしたから」
「はァ?!なに?エ?!」
スオウは俺の発言にひどく驚いていた。
「前言ってたじゃんゲームとか好きだって。それにブラジルでは廃品回収と修理とかの商売を自分で経営してたんでしょ?」
「確かにそウイウのはやッていたが」
「なら大丈夫でしょ。これからの時代はスマホのソシャゲー、ガチャゲーが大きなマーケットになる。スオウにはそこでビジネスをやるんだ」
スオウは目を丸くしている。
「本気か?ワタシのような犯罪者にビジネスを本気で任せる気か?」
「ああ。前に本郷キャンパスで夢の話をしてくれただろう。俺は君の語った夢に投資するよ。君は会社を創るんだ。そして社会に参画しろ。裏じゃなくて表の世界で堂々と生きるんだ!」
「だがワタシは」
「自分を蔑む言葉は聞かないよ。それにまだ罪と罰が残っているというならば、ここで戦うことが君に科せられた罪滅ぼしだと、俺が決めたんだ 」
スオウはまだ本当の罪のことを隠している。それが心に残ったままだから、彼女はまっとうに生きることを諦めている。
俺は座るスオウの後ろから彼女に抱き着いて、頭を優しく撫でる。
「アッ…カナタ…」
「俺は君の願いを叶えてあげたい。時には我儘を言われて振り回されてみたい。そんな普通の生活を共に送りたいよ。いいじゃないか。社会はとてつもなくデカいんだ。俺たちみたいな脛に傷のあるやつにだって居場所はあるよ。一緒に作ろう居場所をさ」
「カナタァ…ワタシはァ…!ウウゥアッ…」
スオウは俺の腕の中で泣き出す。ぎゅっと俺の手を握っていた。俺は泣き止むまで彼女の頭を撫で続けた。
泣き止んだスオウはきりっとした顔で言った。
「ワタシはカナタの提案ヲ受ける。会社ヲ設立して自分の夢ヲ叶えて表の世界ヲ立派に生きる!」
それは力強く決意に満ちた言葉だった。スオウはこれから社長として起業をする。
「よし!じゃあオフィスはここを使ってほしい」
「わかった。しかし渋谷にオフィスとはスタートアップにしては贅沢だな。ふふふ」
「さらに贅沢な話だ。俺がスオウに出資する金は10億くらいを予定している」
「大金だな。気前がイイ。ドンペリタワーが月まで届きそうだな」
「だけど相応の儲けも期待するからそのつもりでいてくれ」
「ふッ!まア任せろ!ファベーラでこれでも100人くらいを雇ってビジネスしていたんだ。大船に乗ッたつもりでイろ」
「そんなにデカい会社を創れるのに、借金返せなかったっていうのが逆に怖いな。何があったの?」
「…ミリシャの連中がな…儲けを税金のように掠めていくんだ…ハハハ…儲けの9割とかを持っていくんだ…子供たちの給料だけで精一杯だったよ…逆らえばワタシはともかく子供たちの身が危ないし商売に妨害を食らう…ミリシャはがめついんだ…」
遠い目をしているスオウに哀愁を感じずにはいられなかった。
「日本の警察は儲けを奪っていかないんだろう?いい国だな日本は…」
「比較対象がおかしすぎるぅ!大丈夫だから!日本ではそういうことは起きないから安心して商売して!」
外国の腐敗ってマジでやばいんだな。安全な世界で生きられるのは本当に幸福なことなんだと思った。
「とりあえず最初はガチャゲーで当ててよ」
「そうだな。ワタシは据え置き機のRPGが好きだが、まずはそこから開拓していこう。いずれは自社ブランドのバイクを…ククク…」
なんか途方もない夢を抱えているようだ。だけどスオウの笑顔はキラキラと輝いている。だからこの選択肢はきっと正解なんだ。俺たちはこの世界を生きていく。
混ざらない思いを個々人が抱えていても、共に生きる世界の上でならそれも交わるはずだから。
シーズン4・メインシナリオ完
シーズン4・「誰よりも輝ける夏」編に続く!
予告!
私の世界はここで閉じていた。
罪を犯した者は永遠に神に睨まれる。
悔い改めることはできない。
そうすれば罪を犯したことを後悔しなければいけないから。
それこそがもっとも許されぬ罪だと私は知っていたから。
神の街に王来りて裁きの時は訪れん。
王よ、進歩と秩序を我らに与えよ。
人民は人民を人民によって統べることが出来ぬが故に。
偶像の女神を娶る偽りの王よ。
汝はあの憐れなる女を救うに能うのか?
ああ、見せてくれ。
君の王道を!
シーズン4.X
Cidade do REY
乞うご期待!




