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嫁に浮気されたら、大学時代に戻ってきました!  作者: 万和彁了
シーズン・4 混ざる世界と交わらないキミたち

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第113話 先を越されてハートフルボッコ

 そもそも葉桐がやりたいことを考えることそのものが不愉快だ。だけどそれへの理解を深めないとこの先に何かよくないことが起きるような気がしてならない。


「ワタシからすると葉桐はイカれてイるように見えた。なにせあイつはサイギとやらヲ人類文明救済のフレームワークなどと言ッてイたンだからな」


 スオウはため息をつきながらそう言った。確かにばかげた話だ。


「人類文明の救済?あたしも家柄の都合でいろんな社会的地位のある人間の綺麗ごとを聞いてきたわ。地球環境だの、社会問題だの、色々とね。だけど人類文明の救済?そこまでスケールのデカい綺麗ごとを宣う人は見たことないわ。はは…冗談よね?」


 綾城は小ばかにするように笑いながらも、俺の方にどこか不安げな視線を向けている。綾城も俺も葉桐という人間のことはけっこう知っている方だ。あいつは行動力の怪物でありプライドの化物だ。綺麗ごとはいつも宣っているが、それをきっと信じちゃいない。そういうのは自分の行動を綺麗に見せるための方便だと割り切っているはずなのだ。女も悪事も財産もすべては自分を飾るためのアクセサリーとみなすようなスケールのおかしな小物なのだ。そういう人間が人類文明を救済するということを本気で目指している。それはすなわち。


「なあ。もしかして葉桐にはマジで世界を救済する手段の用意があるってことなんじゃないか?あいつの性格を考えれば考えるほど、俺にはその線が捨てきれない。あいつは実現できないことにチャレンジするほどの気高さは絶対にないんだから…」

 

 俺の言葉にみんなが不安げな様子を見せている。各々が心当たりのある出来事を思い出しているのだろう。沈黙が場を支配する。俺は真柴と釣りをした日のことを思い出した。真柴は俺たちにヒントを伝えている。彼女は言った。女神と結婚することで王権を得ると。女神こそが王権にふさわしい主を選定するのだと。それはあくまでも神話だけど。なのに彼女は五十嵐のことを女神(・・・・・・・・・)と呼んだのだ。きゅっと心臓が縮まるような感じがした。俺は前の世界で五十嵐の夫になった。真柴が言うことが事実ならば、前の世界で王権を得ていたのは俺だった。浮気がバレたとき、葉桐は自分こそが五十嵐の夫であると強く主張していた。まさかすべてがつながるのか?


「いやいや。そんなわけない…」


 俺は前の世界での浮気のことを、よくある昔の恋を思い出した何かだと思っていた。ちがうのか?五十嵐と結婚することが目的ではなく、それそのものが手段だというのか?それに五十嵐の元カレたちだっておかしい。なぜあんなにも五十嵐に執着していた?みんな愛情に狂っていたのは間違いない。だけど俺は五十嵐としか付き合ったことがないから、元カレとは今カレをよく襲撃するものだと思っていたけど、そうではないのか?元カレたちはその筋では皆が皆ヒーローと言えるような優れた男たちばかりだった。なんだろう。この違和感は。もしかして俺は前の世界でさえも知らぬ間に世界の存亡をかけて戦っていたのか?ばかばかしい。だけどそれを切って捨てるにはあまりにも恐ろしい可能性の一つだった。


「現状を整理しよう。あいつは世界を救う儀式をやろうとしているとする。そのためにはミランの協力が絶対的に必要であり、同時に楪にも研究を協力してもらいたい。つまり俺たちは現状ある意味ではアドバンテージを取っているともいえる。本来ならば俺抜きでミランと楪を手に入れるはずだったのに、俺がおまけでついてきてしまった。あいつは俺のことを死ぬほど警戒している。だけどミランと楪との契約によって俺のことを殺せなくなった上に、ミランと楪のお守を名目に俺はあいつの計画に介入ができるんだ。人生万事塞翁が馬とはこのことだな」


 俺はミランと楪を単独で協力させるつもりはない。二人が葉桐と接触するときは必ずついていくつもりだ。あいつと顔を合わせる回数が今後増えていくのが腹立たしいが、それは飲み込んでやる。


「虎穴に入らずんば虎子を得ずという。いっそ飛び込んでみようじゃないか。あいつが世界を救うかっこわらいをしようっていうなら、俺はそれをぶっ潰してやるよ。あいつに救われる世界なんていらねー。このまま世界は俺たちの手で面白おかしく回してやるんだ。ではここにいるみんなに命じよう。葉桐の計画を潰す。やつが裸の王様であることを俺が証明する。お前たちはそのために俺についてこい」


 みんなから返事はなかった。だけど力強い瞳で頷いてくれたのだった。







作者より:学府のことを今後は学環府と称することにしますね。そっちの方がなんかかっこいいので。









 あの屈辱の握手の後、僕は友恵をさんざん抱いて責めた。彼女の上げる声は嬌声ではなく悲鳴に近った。いつもみたく瞳を濡らすのではなく、ボロボロと涙をこぼしていた。ことが終わったとき、いつもならじゃれてくるはずの友恵は僕に背を向けてシーツを被っていた。スンスンと鼻を鳴らすような音が聞こえたが、僕はそれを無視した。


「ひろ。出雲での実験はやめた方がいいと思うの」


 友恵はこちらに顔を向けずに見ずにそう言った。


「こっちに顔を向けて言え」


「伊角さんは学環府の作った出雲阿国のクローンだから、葉桐家の財産だって意識はわかるよ。だから歯向かわれたのに悔しいのはわかるの。だけどね」


「目を見て言えよ!!」


 僕は声を荒げる。友恵はブルっと体を震わせた。そしてますます縮こまってしまう。なのに彼女の言葉は止まらない。その上こちらにもまだ顔を向けない。


「伊角さんが天岩戸を開いて、際の彼岸への道を開いても、今のひろじゃそこをきっと通れないよ」


「いいや通れる」


「ひろぉ…無理だよ…もうやめようよ。地上に財産をいっぱい積み上げたよ。自分で手に入れた権力だって溢れるほどある。なのにまだ女神の王権を目指すの?考え直してよ。きっと今まで手に入れたものと釣り合いなんて取れないよぅ」


「今までのすべてを捧げてもそこへ行くってもう決めたんだ!僕はそのために!そのために!そのためだけに!今を過ごしているんだから!!」


『ああもうだめだ。女神はお前の本性を見抜いている。女神の夫たる素質はない。卑しいお前はせいぜい気を見て女神の寝所に忍び込むくらいがお似合いだ。せいぜい寝取ってみればいい。それで王国が崩壊してすべては水の泡。救済は1000年先に持ち越しだろう』


 おじいさまは勝手に僕に期待して僕に失望した。何もまだなにもしていなかったのに。僕は王様だ。王様になるし、すでに王様になっている。あれ?僕はいつから王様で?いつになったら王様なんだ?混乱する思考の中で、僕のスマホが突然なりだした。今どき珍しい非通知。僕は電話を取った。


『よう。ひさしぶりだな』


 甘くてなのに冷たく響く男の声だった。久しぶりに聞いた知り合いの声。学環府の関係者であり、現在はブラジルのミリシャの王を称する男。


「ブラジルからわざわざ何の用かな?」


『わかっていることをわざわざ聞かなくてもいいだろう?お前、エディレウザを手放しただろう?』


 監視されていたようだ。それはまだいいとして、話の話題がレイチさんであることにイラっとする。


「そうだよ。彼女はもう僕の勢力下にはない。完全に自由の身だよ」


『自由ね。あの娘がそのようなものに馴染めるとは思えないがな。まあいい。それよりもだ。お前はいま追い込まれているんだろう?祭犠を行うことが危ぶまれるレベルでな』


 僕はそれに返事をしなかった。図星をつかれるのは、ここまで痛いのか。


『俺は一応葉桐家を尊重していた。学環府の成果は葉桐の物だと今でも思っている。お前が祭犠を遂行するならそこに文句は言わないつもりだった。だが葉桐教授の予測通り、お前ではやっぱりだめらしい。だから代わりに俺が実行してやろうと思うんだ。このブラジルの地でね』


「はは!何を言うかと思えば。祭犠の実行にはいろいろなファクターが必要だ。それを用意するのはいくらミリシャの王でも無理だよ。バカなことはやめた方がいい」


『果たしてそうかな?葉桐教授はお前にはもっとも確実性の高いアプローチを遺した。だけど俺たち弟子たちにも様々な方法論の祭犠のフレームワークを遺していないとは思わなかったのかな?』


 それを聞いてはっとなった。学環府の解散でいくつかの研究資料が散逸したことは確認している。そこにはまさか祭犠の別アプローチが遺されていたっていうのか?おじいさまはそこまで僕を舐めていたのか!!


『サンバだよ。楽しい楽しいサンバだよ。人民は踊り狂う。そして祈り奉る。王の選定の日来りて、人民の人民による人民のための王を我ら戴かん!!王は人民に授ける!進歩と秩序を!!』


「他のアプローチがあるとして、どうやろうっていうんだ?」


『エディレウザ。彼女をお前の傍に置いたのはこのためだ。女神の傍にいたのであれば、その才を人は覚醒させる。際の彼岸への道案内はエディレウザにやらせるさ』


 そして電話はそこで切れた。常盤奏久のせいで、僕の計画は遅れただけではなく、別の誰かに先を越されることになってしまった。僕は顔を押さえて呻く以外のことが出来なかった。




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