第115話 お勉強会
大学生の夏休み、それはキラキラエモエモの黄金の日々!パリピしてうぇーい!海行ってうぇーい!山行ってうぇーい!川行ってうぇーい!そんな夢の日々である。だがその黄金の日々を迎える前にはやらなくちゃいけないことが一つあって…。
「お願いです。ボクを助けてください!」
ミランが俺と楪と綾城に向かって深々と頭を下げていた。綾城はミランをしょうがない子を見るような慈愛の目で見ているが、楪と俺はしょうもねぇものを見るような目で見降ろしていた。
「なにか言い訳は?」
俺は一応ミランに尋ねてみた。
「だってだってぇ。ボク文系だよ?大学って遊びに来るところのはずだよね?」
「まずはその認識から間違っていることに気づこう」
「だから理数系の授業もあることをすっかり忘れちゃって…。でもねボクにだって言いたいことはあるよ!!そもそも卒業したって三角関数も微積分も使わないのに!なんでそれを勉強する必要があるの!!おかしいでしょ!そもそも大学側は学生が必要としていないものを押し付けようとしているんだ!これは断固抗議するべきだよ!間違っているのはボクじゃない!大学の方だ!!」
すがすがしいほどに勉強しない理由を他人におしつけてやがる。しょうもないな。
「三角関数と微積分はこの社会を支える技術の根本ですよ?伊角さん…数学は童貞ビッチのあなたの存在よりもこの世界に役に立ってるんですよ。三角関数と微積分にすぐに謝ってください」
楪のディスがすごく痛い。三角関数が出来なくても生きることはできるが、俺たちが生きていく世界は三角関数なしには回らないのである。それを知っておくために大学生は専攻以外の教養として科学を学ぶのだ。
「楪ちゃんはボクより三角関数が大事なの?!」
「うわ!?普段は童貞臭いくせにこんな時だけすごく【女】出してきますよこのビッチ!!めんどくさい!すごくめんどくさいです!!」
仕事と私どっちが大事ってやつ、どっちを選んでも不正解なのマジで理不尽。
「まあとにかく美魁が理数系科目の追試に困っていることはわかったわ。仕方ないわね。助けてあげましょう」
そう、ミランはなんとテストを乗り越えられずに追試になってしまったのだ!…こいつ本当にうちの大学に受かったのかな?じつは皇都大学の学生のフリをしているだけのバカとかの可能性ない?俺は真剣にそれを疑いたい気持ちでいっぱいだ。というわけで夏休みに入る前に、俺たちは童貞のための勉強会を行うことを決めたのであった。
***大学生の追試って…すごく恥ずかしいですよね!!***
でも思えばテストの勉強会って大学生っぽくていいよね。もっともミランを除いてうちのメンバーは勉強できるので、そういう会は必要ない。それはちょっと寂しいかもしれない。次のテストのときはなんか企画を勉強会みたいな企画をやろうと心に誓った。そしてやってきたのは、下北のファミレス。やだすごく大学生の勉強っぽい!なお勉強するのは一人だけであり、残りは全員教師役である。
「はい。ではミランさん!どこがわかんないか教えてください」
俺たちはテキストを広げながら、ミランに質問してみる。ミランはそれにとても綺麗で儚い笑みを浮かべて。
「全部…かな…?」
「もう大人しく留年しろお前は」
もうだめだこいつ。まじで勉強できない子だ!
「だってだってわかんないものはわかんないんだもん!数式なんて見たって理解できないよ!だいたい微分積分ってなんだよ!削って増やして繰り返して何がわかるっていうんだよ!三角関数ってなにさ!なんで三角って言ってるのに、点が円の上をグルグル回ってるの!?意味わかんないんだけど!!」
「むしろそのレベルの理解度でお前がどうやってうちの大学に受かったのかがわかんねぇよ」
やはりこいつはうちの学生ではないのだろうか?
「ミラン、ちょっと学生証みせてくれないか?偽造してないかどうか調べるからさ」
「ボクそこまで疑われてるの?!マジもんのバカ扱い?!ちゃんと本物だからね!!」
ミランは財布から学生証を出して、俺に渡してきた。カードを指で弾いたり撫でたりしてもとくに塗装が剥げたりする様子はない。本物のようだ。
「伊角さん、本当にうちの学生だったんですね。演技だと思ってました」
楪の追撃がなかなか酷い。こいつやはりSの波動に目覚めつつあるのか?
「わーん!ボクまじでバカだと思われたんだ!くそう!天才ぶれる理系が憎いぃ!キー!!」
「でも困ったわねぇ。追試ってもう日数がないのよ。あたしこんなおバカさんに数学と科学をちゃんと教えられる気がしないわ。ねぇ美魁?あなた、どうやって理数系の受験勉強したの?うちの大学は文系でも数学が課されてるのよ。どうやって解いたの?」
これはさすが綾城というべきいい質問が出たと思う。うちの大学は文系でも一次試験で理科が必須であり、二次の本試でも数学が出るのだ。こいつは一応正真正銘うちの学生なのだ。入試を突破しているということは数学の素養がないわけではないんだと思う。だがそれに対して驚くべき回答が返ってきたのである。
「何って、教科書と参考書と予備校の授業と過去問を全部暗記して、本試の数学では覚えてた内容と同じ問題だけ選んで回答したよ」
「はぁ?!なに?何言ってるの?!あなた何言ってるの?!ええ?!!」
綾城が酷く驚いている。俺も楪も呆れを覚えながらも驚嘆せざるを得なかった。こいつ受験の数学を暗記だけで乗り切りやがったのだ!たしかに理論的には不可能じゃない。数学の問題は受験の範囲内であれば問題のパターンにはテンプレートな解放の型があるものだ。でもそれができる人間が果たしてどれほどいるのであろうか?ある意味ミランの頭の出来はいいのだろう。まあ使い方はおかしい気がするけど、役者なら台本を暗記するだろうし、間違いじゃないのかな?
「…でもなんかわかってきたわ。でもこれ勉強じゃないわよね…でも仕方ないわね」
綾城がため息をつきながら独り言ちている。でもなにかこの状況を打開するアイディアを思いついてくれたらしい。
「そこのおバカさんに勉強を仕込むのは無駄だと思うの。だからこうしましょう。出題範囲と講師の思考パターンから追試の内容を逆算しましょう!!そしてそれを暗記させるのよ!」
「「「?!?!?」」」
なんか綾城さんがとんでもないこと言いだしてるぞぉ。
「あのぉ。その問題の作成って伊角さんがやるわけじゃなくて、わたしたちがやるってことですよね?」
「Yes.あたしと常盤と楪の三人でやるわ」
「おかしいですよ!伊角さんの勉強会のはずなのに!なんなんですかぁ!この話の流れは!?キエエエエエ!!」
楪は頭を掻きむしっている。教えるだけのはずだったのに、まさかの超級の頭脳労働の発生である。おかしいなぁ普通の大学生はこんなことしないよね?きゃっきゃうふふと教え合うものじゃないのかなぁ?あはは。いまさらだな。
「みんな。話は聞かせてもらったよ。ありがとう、ボクなんかのためにみんながこんなに頑張ってくれるなんて!ありがとう!ほんとうにありがぉどうぅうううううう!」
ミランは顔をぐしゃぐしゃにして泣き出す。実に友情に感動して泣いちゃった女の子って感じだ。さすがプロの役者。断りずらい空気作ってきやがる。
「このビッチぃ!わたしたちが断れない流れをつくりやがってますよ!伊角さん!覚えておいてくださいよ!この貸しは高いですからね!!キェエエ!チェストぉおお!」
かくして追試問題の作成を行うことになったのである。勉強会はどこへ行ったんだろう?そして追試問題の作成のためにPCが必要ということになり、四人で俺の部屋に向かうことになったのである。
ワンルームマンションに女子が三人もいるとなかなかに狭く感じる。なんかこう直で各人の体の熱を感じるのだ。ちゃぶ台にテキストとテスト問題用紙などを広げて、ミランを除く俺たち三人は話し合っていた。
「講師の性格から考えると…」「出題範囲と過去問のからの統計的推測は…」「追試者たちの間違えた場所からの再出題という前提が…」
「ねぇねぇみんな!ボクは何すればいい?」
「「「好きにしてて」」」
「ガン無視されてる?!お茶でも入れるね…」
ミランはちょっと寂しそうに台所の方に向かった。まあすまないがやることがマジでないのは可愛そうだなって思った。ミランはお茶を入れたり、夜食を作ってくれたりしたけど、やっぱり退屈そうだった。なので一度休憩を入れた。
「ふぅ。なんか久しぶりに肩が凝ったよ」
俺はわざとらしく肩を回してアピールする。するとミランは笑顔を浮かべて。
「まかせてよ!ボクは体を使うのが仕事だからね!ケアするのも得意だよ!!」
ミランは俺の背中の後ろに座って俺の肩を揉み始める。
「あぁ。すごいぃキクぅう」
ミランのマッサージは何気に上手かった。金取れるレベルな気がする。施術が終わると俺の肩残りはすっかり取れていた。
「おおマジで調子いいわ。サンキューミラン」
「えへへ。役に立てて良かったよ」
俺のマッサージを見ていた楪が手をあげる。
「はい!わたしも肩こりました!」
手をあげたときにブルンと大きなおっぱいが揺れた。πのπ乗の揺れが本当にエモい。
「まあ楪の場合、メロン二つもぶら下げてるものね。コリは人一倍どころか二倍三倍よね」
「何気に下ネタ久しぶりに聞けた気がするよ」
「突っ込むならし」
「突っ込まないからな」
「ゴムがないから?紳士なのね」
「下ネタで返された?!ま、負けたぁ」
ミランは楪の後ろに座ってその肩を揉み始めた。すると。
「あ”あ”いいですねぇ。こう温泉に浸かっているような気持ちになってきました」
なんか気持ちよさそうな顔を楪は浮かべていた。
「でももっと強くてもいいですよ。薩摩おごじょなんでもっと激しいのがいいです」
「え?そう?じゃあちょっと強くするね!」
ミランはニコニコ笑いながら揉み方を少し強くした。すると。
「きゃぁん!あっだめぇ!うぅん!ううああん♡」
「あ、ここすごく硬くなってるね。もっと揉んじゃうね」
「らめぇ!えふぅ!ぃあぅ!んっ!ああっ!」
楪の目じりが柔らかくトロンと墜ちているように見えた。息を荒く吐きながら、よだれを口の端からすこし垂らしている。上気した赤い肌がどこか扇情的に見える。端的に言ってなんかエロい顔だ。
「はぁはぁはぁ」
「はい。これでほぐれたよ」
「す、すごく気持ちよかったです。お姉さま」
「「お姉さま?!」」
俺と綾城は楪の変化に戸惑っている。どこかメスのような顔で楪はミランに体を擦り付けているように見えた。
「ごくっ。そんなに気持ちいいのかしら…?」
「やめろ綾城!!あれ絶対にヤバい!あれ絶対ヤバいって!」
「でもあたし…すごく凝ってて硬くなってるから…!」
そう言って綾城は俺のベットの上にうつ伏せで寝ころんだ。
「美魁…あたしもぉ。あたしにもしてぇ!」
「ん?いいよ!まかせてよ!あはは」
ミランは爽やかな笑みを浮かべているけど、俺にはなにかこれから恐ろしいことが起きるんじゃないかと気が気でなかった。ミランは綾城の背中の上に指を這わせて、それを押し込んだ。
「あっ…。嘘…入ってるの…」
「うん。入れちゃったよツボに」
「あ、だめぇ!そんなぁ!だめぇ!そんなに上下しちゃダメぇ!」
「でも綾城さんのここどんどん柔らかくなっていってるよ」
俺は思わず唾を飲み込んでしまった。なんだろう。マッサージしてるだけなのにいけないことをしているのを見ているみたいな気持ちは。ミランのマッサージをする腕の動きはどこか艶めかしく、綾城の上げる嬌声は艶めいていた。そして施術が終わると、綾城はとろんとした目つきではぁはぁと息を荒げていた。ついでに俺の枕によだれを垂らしている。そしてそのまま気持ちよさそうな顔で眠りについてしまった。
「ふう。イイ感じに疲れた!ふぁああボク眠くなっちゃった。おやすみなさい」
ミランは綾城の隣に寝転がる。そしてそのまますぐに寝息を立て始めた。
「お姉さまぁ!わたしも夢の世界に連れてって!!」
楪もベットに潜り込み、ミランの背中におっぱいを押し付けるように横になった。そしてそのまま幸せそうな表情で眠ってしまった。
「…え?ええ?どういうこと?え?ええ?!」
そして俺だけが取り残されてしまった。ちゃぶ台の上には作りかけの問題が遺されたままである。
「ふぅう。やれやれだぜ。まったく。くくく」
俺はそのまま一人で問題作成を続ける。大学生にありがちだけど、男女で勉強すると、男子張り切って女子の分までレポートとか書いちゃうよね。そんなあるあるを経験している俺の生活はきっととても充実しているんだなって思った。
だからこれからはじまる夏休みもきっとキラキラと誰よりも輝けるものになる。俺はそう確信したんだ。
シーズン4・アフター
『誰よりも輝ける夏』
エピソード・スタート!!




