第7話 出会い(1)
*** サキ 12歳 春 ***
卒業式の夜は、激しい嵐だった。
サキは家を揺らす風と雷のせいで、眠ることができず、ベッドにもぐりこんで震えていた。
布団にくるまりながらも、サファイアのキーホルダーを握りしめ、リンの言葉を思い出していた。
心が温かい気持ちで満たされ、リンとの未来を思い描いて眠りについた……。
昨夜の嵐が嘘だと思えるような、静かでどこまでも青く晴れ渡った朝を迎えた。
そして、サキの世界は音も立てずに色を失ってしまった。
リンと全く連絡が取れなくなってしまった……。
(え?メッセージ……未読のまま?)
(うそ!……電話にも出てくれない!)
お屋敷を訪ねても、インターホンの呼び出し音は空虚に響くだけ。
お屋敷に落雷があったこと。リンが怪我をして意識が戻らないこと。
周りの大人たちは隠していた。
特に、子供の頃から大の仲良しだったサキには絶対の秘密だった。
「急な事情で引っ越したそうよ。」
サキの両親の言葉はあまりに素っ気ない。納得などできるはずもなかった。
(あの日、二人で交わしたあの『証』は何だったの?
リンのいない世界で、私はどうすればいいの?
一人だけで、どう景色を作れっていうの?)
繰り返す、『なぜ?』と『どうして?』という思い。
もう二度と会えないと分かっていたから、あんなに美しい言葉を並べたのだろうか?
(捨てられた……?
リンに無視されるの……もう、耐えられない!)
サキの内にどす黒い感情の渦が胸を焼く。
怒りと悲しみの濁流に飲み込まれそうになりながら、サキは幾度もサファイアのキーホルダーをゴミ箱へ投げ捨てようとした。
けれど、どうしても最後の一歩で手が止まる。
石に込められた記憶だけは、どうしても捨て去ることができなかった。
サキは、一筋の光も見えない青い水の中を漂っているようだった。
* * *
進学先の中学で、新しいクラスメイトに囲まれていても、リンがいなくなった心の隙間を埋めることができなかった。
持ち前の『正義感』を発揮するたび、誰かを救うたびに、同時に誰かを遠ざけてしまう。
『正義感』が、いつの間にか、サキをクラスの中で孤立させてしまった。
突然消えた親友への憤りを抱え、周囲から浮いた存在として過ごす日々。
それでも、ふとした瞬間に掌の中の青い光を見つめれば、リンの声が蘇る。
——『優しくて、冷静で、正義感を持って自分の意見を言える』
そのリンの思いだけは裏切りたくない。
(誰か!教えて!
リン、どうすれば……。
強くなりたい!)




