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第五話 違うモノ
聞き間違いではない。
穴の壁から、音がする。
カリ……。
カリ……。
男は濡れた土壁に耳を押し当てた。
一定の間隔。
まるで、誰かが中から爪で掻いているような音だった。
この穴には、まだ何かいる。
足首の痛みが脈打つ。
冷たい雨が肩を打ち、服の奥まで染み込んでいた。
「寒い……」
吐く息が白い。
体温が奪われていくのが分かった。
あの家のモノは何か?
この穴から出るにはどうすれば良いのか?
「どうして、こうなった……」
その瞬間だった。
カリカリカリカリカリ……!
カリカリカリカリカリカリ……!
カリカリカリカリカリカリカリカリ…!
男は跳ねるように壁から離れた。
音は止まらない。
土の内側を、何かが凄まじい速さで掘り進んでくる。
しかも——
すぐそこまで、近づいていた。




