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第四話 穴の中

男は庭の盛り上がった土の前で息を切らしていた。

穴は、たしかに内側から押し上げられたように裂けている。

覗き込んでも、底は見えない。

雨と夜が深さを隠していた。

男は震える指でライターを取り出した。



カチャ。



カチャ。


シュボっ。


三度目で火がついた。

掌で雨を避けながら、穴へ差し入れる。

腐った水のような臭いが、熱で浮かび上がった。

底に何かある。

茶色く濡れた財布だった。

見覚えのある、擦り切れた革。

自分の財布だった。

「……盗んでやがったのか」

手を伸ばした瞬間、泥が崩れた。

身体が横滑りし、そのまま穴へ落ちる。

背中を強く打ち、足首に鈍い痛みが走った。


「くっ……!」


叫んでも、雨音が飲み込む。

近所の灯りも遠い。

朝までここにいるしかない。

そう思ったときだった。



カリ……。



すぐ耳元で音がした。



カリ……。



穴の壁。



男の肩のすぐ横の土の中から、何かが爪で掻いていた。

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