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クリエイター部!   作者: 紫電のチュウニー


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最終調整、放送部へ提出

 入院中もずっと勉強していたお陰で、テストに困ることもなく三学期の中間テストが終了。

 学校と違って病院での勉強は余計な音が聞こえやすい。

 集中して勉強出来る場所って大事だな。

 勉強が遅れずに済んだのは全部あいつらのお陰だ。

 

「さて。最終調整するか」


 この十か月。多くの出来事があった。

 そして、多くの人の協力を得て、一つの作品が完成を迎えようとしていた。

 今、視聴覚室に、俺を含むクリエイター部が集まっている。


「うん。まずは題目からだね。ソフィアさんが日本語で送って来た題名」

「黄昏の雨。黄昏とは夕暮れの薄暗さを表す言葉でもある。風景は夕暮れだ」

「いいわね。そして姉の能力は……」

「雨を降らすことが出来る魔法能力だろ。俺もちゃんと勉強してきたぜ。ファンタジー小説、面白いもんだな。

すっかりはまっちまったよ」

「妹の能力が雷魔法だったよね。私もそんな強い能力、欲しかったな」

「氏名も決まったの?」

「ああ。彩月雫(あやつきしずく)と彩月未雷(みらい)。どっちが姉かも分かりやすい」

「そうね。能力で直ぐ分かるわ。それに二人の和装に雫の絵と未雷の絵を入れてあるもの」

「|未雷に和っぽさを出すの、大変だったけどね……」

「全部大変だっただろ。デバッグ作業思い出すだけで吐き気が……うっ」

「あはは……本当にあれは大変だった」

「どんな作品でもデバッグで手抜いたら手抜き作になって匙を投げられるからな。地味な作業程大事だし、誰もやりたがらない。コストもけちるもんさ」

「なぁなぁ、動かしてみよーぜ」

「ダメだって。一ノ瀬たちが来た後」

「当日は音源、オフにするんだよね?」

「ああ。琴宮の音源は入れるけどな。これ以上負荷かけらんねー」

「ご免ね? 私……全校生徒の前はまだ無理だと思うの」

「ほら奈々。ご免じゃなくて有難うでしょ?」

「うん。そうだった。有難う奈緒ちゃん」

「辛いときは無理せず言えよ。佐々木程はしっかり見てねーと思うけど、俺や長谷川だって見てるんだぜ」

「そうだね。僕たちで気付いてあげれるようにならないと」

「二人とも……有難う。嬉しい」


 琴宮の調子は随分良くなってると思う。

 それでもやっぱり知らない人が多いと、辛くなるようだ。

 だが、制作協力者にはかなり慣れたようだ。

 後から知った話だが、琴宮は体育祭などのイベントごとで、定期的に保健室へ向かっていたらしい。

 朝霧先生はとうの昔に知っていたが、本人のプライベートに関わることなので、伝えてはいなかった。

 ……それくらい教えてくれよとは思うんだけど、現代の闇だよなぁ。

 人を選べば伝えられることでも、伏せなきゃいけないってのは不便を感じるし危険だと思う。

 それも信頼関係次第ってことなんだろうけど。

 と、考えていたら、ガラガラと視聴覚室の扉が開き、誰かが駆け出してくる。


「ひな、参……」

「出来たってー! 見に来たよー!」

「楽しみでっす!」

「こんにちは。お邪魔しますね」


 いつも通り派手に登場しようと思ったひな先生が、一ノ瀬たちに押しのけられる。

 日に日に扱いが雑になっていると言わざるを得ない。

 

「はい、パンフレットと資料」

「わぁー! 可愛い絵! これ、阿川さんが?」

「ああ。中も見てくれ。これまで描いてた絵、沢山入れてあるんだ」

「これだけでも売れるでっす! 和装の美女が二人……可愛い! これが真田紐でっすか。うんうん、本当にもらっていいんですか? いえ、もう返さないでっすけど!」

「おいおい。まだくれてやるなんて一言も言ってないぞ……」

「いいわよ。複数印刷しておいたから」

「やったー! 宝物にするでっす! うふふー、今晩この子を命一杯愛でて……楽しみでっす!」

「心海ちゃん落ち着いて。性格変わってるよー」

「ちょっと恥ずかしくなってきたけど……」

「阿川、ここで恥ずかしいなら全生徒に配ったらどうなんだよ」

「や、やっぱり返して……」

「もう返さないでっす! 私の宝物にするでっす!」

「心海ちゃん、余程漫画絵とか好きなんだね……」


 返却したところで発表のときに全生徒へ配布する。

 今更逃げ道などないのだよ阿川君。

 ――パンフレットの内容も一通り確認して、手分けして誤字などが無いか調べた。

 そして、試しに一度上映してみる……エンドロールで自分たちの名前を見た瞬間、女子陣は泣き出してしまった。


「上手く出来てる」

「うん。とっても……」

「ここまで苦労したもんな」

「うっ……ううっ。なんであんたたちそんな冷静なのよ……」

「そりゃあな」

「デバッグのせいだね……何回も同じところ見ちゃったから」

「ああ。間違いねえ。作品を見る視点がバグ直しでしかねえ」

「冷徹ー、鬼ー、悪魔ー! 筋肉―! 天使ー! 神様ー!」

「何で徐々に良くなっていってるんだ?」

「でも、もし反応が悪かったらどうしよう……」

「私の絵、理解してもらえるかな……」

「私の声も……」

「ひなだって作曲したのひさぶりちゃんだから、心配……」

「おーい。暗いぞ。真っ暗だぞー。これがすげーってならずに何がすげーんだよ」

「そうだぞ。俺らの手でアニメ作ったんだぞ?」

「うん。しかもシナリオを考え、音楽を作って、声まで入ってるんだよ? 全部手作りだし」

「そ、そーだよね。阿川さんの絵も琴宮さんの声も素敵だし!」

「そうね。奈々、凄く良い声してるもん。一ノ瀬さんの音楽もいいし」

「うん。奈緒ちゃんの絵、好きだから頑張れるんだと思う」


 俺たちが少し励ますと、女子陣一同の闇が晴れていく。

 結局闇も光も女子連動しているのか!? 


「こういうとき、女子の同調性ってすげーな」

「男にはない良さってやつか。うんうん、いいぞー」

「長谷川、あんたは黙ってなさいよね」

「お前、俺には厳しいよなぁ……」


 と、全員で話ていたところで、ようやく朝霧先生が教室へ入って来る。


「すまない。遅くなった」


 遅すぎだよ先生。もう見終わったところですよ! 


「先生、遅いでっす!」

「本当よ。もう見終わっちゃった後だもん、ね?」

「先生。当日までのお楽しみだね!」

「確認させてもらえないか!?」

『ダメでーす!』

「うっ……そうか。分かった、それならば当日、楽しみにしていよう」

「……先生」

「どうした一ノ瀬? 顔怖いぞ」

「顔怖いって失礼でしょ佐々木君!」

「悪い悪い。んじゃ俺、放送部にデータ届けて来る」


 全員にこやかに最後の確認を終える中、一ノ瀬だけが少し暗い表情をしてた。

 残りは本番を待つだけ。

 二月の末日に、全校集会がある。

 そこで部活動報告があるのだが、俺たちはそこで発表することになっている。


「失礼しまーす。例のもの出来ました……っと安藤先輩?」

「ああ。今すぐ確認……したくねー!」

「あはは。楽しみにしてくれてるだけで嬉しいです」

「話聞いてから、学校生活で一番楽しみにしてたんだよ。おお、この中にひな先生の愛の結晶が、おお!」


 この人は放送部三年の安藤先輩。今年で卒業だ。

 そして櫛切ひな先生の大ファン。

 作品の作曲が先生というのを知り、ずっと見たがっていた。


「題目は黄昏の雫ね。曲名は?」

「その辺は全部こっちのパンフに」

「まじかよ。これ売り物じゃねーの?」

「はい。全部俺らの手で作りました」

「すっげー楽しみにしてる。当日まで絶対聞かないぞ、俺」

「あはは……なるべく早い時間で確認はして下さいね。それじゃ先輩、お願いしまーす」


 サムズアップして恰好良く答える先輩。

 この作品を全校生徒に。そしてWEB上でも配信することを、消防の人たちと和の制作会社の早瀬さんにも伝えてもらってある。

 電報も受け取ることになっており、そちらも伝えられそうならリアルタイムでお伝えするとのことだった。

 そのときの情景を考えると、不安と期待で胸がドキドキした。

 いよいよ……本番だ。

本日は本番前まで公開いたします。

作品に触れる部分がこの場所です。

明日、本番部分を公開いたします。

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