表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリエイター部!   作者: 紫電のチュウニー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/36

部活発表会、作品【黄昏の雫】

 ザワザワとした声が体育館内に響く。

 今日は部活成果の発表会。

 全校生徒が体育館に集められ、それぞれの部活に関する発表が行われている。

 特に野球部は力を注いでいた影響もあり、地区大会決勝まで進んだらしい。

 そして次が、いよいよ俺たちの番だ。


「次は新しく出来た部活の報告と、成果の発表です。クリエイター部代表の佐々木さんお願いします」

「その前に少しだけ」

「はい? 教頭先生、どうぞ」

「時間が押しているので、発表は学校のチャイムが鳴るまででお願いします。時間厳守で」

「教頭先生。そうすると発表が途中までになりますが……」

「学生は時間厳守ですから」

「……分かりました。それでは佐々木さん、お願いします」


 まじかよ。冗談じゃないぞ。急いで挨拶だけ……いや、挨拶してる間に機材の運び込みが入るんだ。

 どうあがいても間に合わないじゃないか、くそ、くそ! 落ち着け。

 冷静に報告するんだ。途中まででも、やらないより何百倍もマシだ……固くこぶしを握り締めて、怒りを殺すのに必死だ。

 あんな言い方、しなくたっていいだろ! 

 朝霧先生はこんなハラスメントに耐えてるっていうのかよ。


「……今年四月から、新しい部活としてクリエイター部を発足しました。本日までに、一つの制作物を作りました。たった一つの作品ですが、教養推進同好会、並びに協力して頂いた方々のお陰で、完成させることができました。どうぞご覧下さい」

【題目、黄昏の雫。上映致します】


 全ての電気が消され、巨大なスクリーンに作品が投影される。

 プロローグから始まるが、最初は文字が映し出されるだけだ。

 そのナレーション部分は一ノ瀬が担当している。

 聴き取り易いお嬢様の声だ。

 この声は直ぐ、同学年に伝わるだろう。


「あれ、一ノ瀬さんの声よね」という小声が聞こえてきた。

 

「黄昏の夕暮れ。思い人である朝霧紫苑(あさぎりしおん)に振られてしまった彩月雫。その言葉はあまりにも残酷なものだった。彼は、雫の双子の妹である彩月未雷(みらい)が好きだという。今まで苦楽を共に武道を習い過ごしてきた雫にとって、未雷は最も親しい友でもあった。深く落ち込んだ姉を見兼ねて、未雷は姉に茶会を開くことにした」


 ここで景色が一変する。

 この部分まで、ナレーターはただ映し出される背景の文字を読んでいただけだ。

 その文字部分はあえて明るくし、見辛くしてある。

 これは、一ノ瀬の声に皆が意識を向けるようにわざと見辛くしている。

 後々データを調整して見やすく映るようにも出来るし、配布したパンフレットにも、文字は記載してある。


 ――そして本編はここからだ。舞台は夕暮れ。和装の下半分だけ見えて歩くシーンから始まる。

 歩く音や、周囲の草などに風吹く演出、カサカサと風に揺れる細かい草の音も入っている。

 モーションを作り込んだのは夏の合宿中。

 何度も成香さんと流駆に移動シーンを作るため、歩いてもらったりもした。

 和装での歩く仕草を作り込むのも、大変だったな……。


 カメラワークが少し遠のき、ゆっくりと二人の顔が映し出される。

 そして、茶道で使う赤い結界へと草履を脱ぎ、結界内へ足を踏み入れた。

 こんな動き一つとってみても、作るのはとても大変だ。

 ここで茶の湯を点てる未雷の仕草が少しだけ映るが、メインは姉の雫の方だ。

 空を眺めているような仕草……だが、実はこれが雨を降らす魔法の準備段階。

 そして、それを察したかのような未雷の目つきが鋭くなる動きも入る。


「……お姉様、どうぞ」

「有難う未雷。頂くわ」


 この時点で体育館内に大きなざわめきが聴こえた。

 声優担当は琴宮奈々という名称じゃない。

 パンフレットの声優担当名は【彩月雫】そして【彩月未雷】としてある。

 もしかしたらAIボイスかと思った奴もいるだろう。

 だが、紛れもなくどちらも琴宮の声を上手くキャラ用に自分で作り上げたものなのだ。

 二人分の違う声。そこにどれほどの努力があったのか。

 俺たち全員、それを間近で見ていた。

 このざわめきは、琴宮が評価された証拠だ。

 それがとても嬉しかった。


「どうか元気を出して下さい。わたくしは紫苑様の告白をうけるつもりはありません。お姉様のそばにいます」


 ここで、雫が飲もうとした茶を一端引いて手元に戻す。

 雫の心情が悲しみから徐々に怒りへと変わっていく表情の変化が見て取れる。

 これには……阿川の怒りの感情が、雫の表情へと全面的に描かれた一枚だった。

 それを見て……苦しくなった琴宮の表情が、妹へ反映されている。

 合宿での、辛く悲しい一枚の描写。

 それも作品へ反映されてるんだ……。

 

「何故かしら。紫苑様の寵愛(ちょうあい)を拒む理由が分からない。あの方は優しくて素敵で、欠けるところが何もない、まるで満月のような、そんなお人よ」

「わたくしにとってはお姉様の方が大切です。このままではお姉様が!」

「あなたに何が分かるっていうの!」


 そして……雨粒がぽたりと落ちるシーンが入る。

 このタイミングで音楽がゆっくり奏でられ始める。

 機材を持ち寄り……呼吸を合わせて。

 一ノ瀬たちの演奏が開始された。

 画面片隅に曲名が表示される。序盤は伴奏部分だ。

【Until you turn around】

「お姉様! その雨粒が入ったお茶を、お姉様の口には入れさせません!」

「いいわ。私の想いを、私から奪い取って見なさい。紫苑様のように! 私から!」


 片手に美しい小さな茶器を持つ雫と未雷の肉迫した距離での演武が始まる。

 雨は徐々に激しさを増していく。

 この曲は序盤が激しい。そういう風に作ってくれた。

 舞台はこのタイミングで、雫の放った蹴りを未雷が受け止め、そのまま蹴りを押し込み距離を引き離したところへと移る。遠距離戦の舞台が整ったタイミングで一ノ瀬と……阿川の声が合わさる歌が流れ始めた? 

 おかしい、確か一ノ瀬が歌うはずだったのに。何で阿川の声まで入ってるんだ!? 


【雫から始めよう。全ての思いを。断ち切れぬほど、強い力で。縛るあなたの目に映るのは、かけがえのない人への想いだから……。Until you turn around(あなたが振り向くまで)、Until you turn around、何度唱えても消せない魔法。Until you turn around、Until you turn around、その言葉を止めないと、早く。お願い、その雫を飲まないで!】


 遠距離での激戦となる。雫が振りかざす雨粒が、激しく未雷へと降り注ぐ。

 未雷は姉の持つ茶器だけに的を絞り、雷を撃ち続ける。

 そして――雫の茶器を打ち砕いた未雷は、姉に駆け寄り……【あなたの心が止まらなくなるから。私にその雫はいらない。あなたにもその雫はいらない。私にいて欲しいのは……あなただけなのー!】 


「お姉様だけいればいいの。わたくしは、お姉様とずっと一緒だから。お願い、何処にも行かないで。お姉様」

「うっ、うああ……紫苑様……」


 徐々に二人が遠ざかり、雨は止み、再び夕暮れへと戻る。

 繰り返される【Until you turn around】の伴奏と共に。

 そのまま伴奏がんがれ続けエンドロールへ。

 これで一通り発表が完了した。

 ……そして、体育館の明かりが付いたと同時に……盛大な拍手が沸き起こった。

 

「感動した……涙が止まらないよ」

「魔法、魔法やべえ! まじでこれ作ったの?」

「短かったけど、良いストーリーだった。音楽やばくない?」

「あれって声優誰なの? 雇ったの? って書いてあんのか。いや、分からねー。まじで誰だよ」

「お静かに! お静かにー!」

「続き見たいんだけど! 物語担当……こっちも誰? ペンネーム? えっと、米国人って書いてある……嘘でしょ?」

「思い人の朝霧って、あれ朝霧先生のことだったらうけるよね」

「お静かにーー! 静かにしろーーーーーい!」


 体育館は大パニックになり、収拾がつかなくなった。

 それにしても、おかしい……時間オーバーしてるけど、チャイム鳴ってないぞ!? と思い、放送室を見ると……安藤先輩がこっちにサムズアップして笑っていた。

 あんたって人は。最高かよ。 

 まじ有難うだけど、後で絶対怒られるぞ! 


「えー、放送部よりお知らせします。少々チャイムが壊れているようで、お時間を過ぎているようですが、消防団の方から電報を頂戴しているようです。教頭先生、割愛しても良いのでしょうか!?」

「……もう遅れてしまっているので読み上げて下さい」

「はい分かりましたー! 拝啓、クリエイター部、並びに教養推進同好会の皆さん。作品をリアルタイムで拝見させて頂きました。音楽もさることながら、一つ一つの動作の作り込み、素晴らしいと思います。水を取り扱うのも良かったのですが、出来れば次回作は火を扱うようなものも見てみたいですね。我々一同、楽しみにしています。敬具。続きまして、株式会社和道一文字様からこちらも電報を頂いておりますが教頭!」

「……読んでくれて構わない」

「では。佐々木君、そしてクリエイター部、教養推進同好会の皆さま。この度の作品、我々も協力を惜しまず、本当に良かったと思います。余計なことを言うと紫水に叱られるため、手短にすませるとします。本作品は、和を意識しつつも、海外にまで視野に入れた素晴らしい作品です。君たちの成果は、将来必ず自分たちの糧となるでしょう。引き続きの活躍を我々一同願っています。後日改めてお伺いすると約束しましょう。株式会社和道一文字、代表取締役……社長? 早瀬道隆より……」


 早瀬さん、有難う御座います。あなたの協力が無ければ完成出来なかったと思ってます。

 それと、社長なんて聞いてませんでした。

 今更緊張してしまいました。


「続々と……アップしたサイトにコメントが。凄くねーかこれ」

「コラァ安藤!」

「やっべ、先生。機材トラブル、機材トラブルですから!」


 こうして俺たちの発表は無事に終わった。

 いや、最後まで協力してくれた人のお陰で無事に終えることができた。


 ――そして後日のこと。

 現在、俺は校長室に呼ばれている。

 校長と一対一なんて生まれて初めてのことだ。


「失礼します」

「佐々木君、良く来たね」

「校長先生。ご用件は何でしょうか?」

「株式会社和道一文字様から寄付金を頂戴してね。君に意見をもらえたらと思って。何せこのお金は、君たちが用意したものだから」

「ええっと……幾ら位でしょうか?」

「金額にして五十万円だよ。今回の君たちの行動で、来年度は多くの生徒が部活に入るだろう。新しいパソコンを

用意するつもりだが、そちらで使用するかね?」

「……可能かどうかは分かりません。ですが、一つ提案というか、お願いがあるんです」

「ほう。何かね。ぜひ聞いてみたい」

「それでは……」

endロールを後書きに回します! 

制作グループ クリエイター部、教養推進同好会

制作監督、朝霧紫水

制作監督補佐 櫛切ひな

三Dモデルメイク、ディレクター、他 佐々木凛

三Dモデルメイク、背景担当 伊吹嵐

三Dモデルメイク、モーション担当 長谷川流駆

声優担当 彩月雫、彩月未雷(声優担当特別非公開)

イラストレーター担当、 阿川奈緒

ナレーター担当 一ノ瀬帆乃実


音楽

【Until you turn around】

作詞 櫛切ひな

作曲 櫛切ひな

編曲 一ノ瀬帆乃実、櫛切ひな


シナリオ

【黄昏の雫】

ライター

S・黄昏。(米国出身のみ記載)


スペシャルサンクス

演武担当、成香

朝霧農園の方々、株式会社和道一文字関係者様


 & YOU! 



というエンドロールを想定して作りました。

小説という作品にアニメというビジョンを設けるという試みを、自分ながら楽しんで書きました。

かなり変わった作品ですし、読み手も決して多くなく、埋もれた作品となることは理解しております。

それでもやっぱり、紫電は個性的な作品も書き続けたい。

そう感じてやみません。

残り話数も少ないですが、最後までお読み頂ければ嬉しく思います。

ちなみにまともに作ったプロットはありません。

作詞や物語も湯船に浸かって考えたものです。

他作品を毎日考えてるので時間が無い……紫電さんらしく自分をとことん追い詰めている感じです。 


残りのお話は、可能であれば本日中にアップすると思います。

それでは引き続きよろしくお願いいたします! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ