第三百三話 世界調理開始/愛の砲撃②(その3の67~68の途中まで)
そこで、改めて標的を見つめ直す。
その闇雲な突撃姿を確認して、また自然とつぶやきが出た。
「お前もやっぱり、アタイとおんなじってことなのかもな…」
ぼやきはするが、身体の動きまでは止めはしない。
着々と、最終手順を整えていく。
目に浮かぶ十字枠の中央に目標を捉え直し、予測される進行方向と角度、振る舞いの予想を微調整。
操縦桿でもある長銃を構える。
そこで、更にぼやく。
「それにしても、アタイたちの機能がここまで上回られるとはな…そりゃあよく考えりゃ、アンタはアタイたちの婆ちゃんでありこの【食卓界】全ての“元ネタ”なんだから、当然っちゃあ当然なのかもしれねえけどな。でも、アンタの機能がまさかこれほどまでアタイたちの“完全上位互換”だったとは、さすがの馬鹿親父も全く想像してなかったことだろうぜ。まあ、そもそも『世界調理』計画自体、本来は食材である対象の同意と協力を前提にしてたもんだしな。ここまで抵抗されること自体、予想外だったんだろう」
とはいえ、
「だからといって、アタイらも無策ってワケじゃない。ダテに何十何百とこの『大地』の上で生き延びて来たワケじゃあないんだ。戦争、革命、権力争いに土地争い。ニンゲンはバカなことばっかしてきたけど…だからこそ蓄えてきたものもだってあるし、異世界から『姉妹』たちが持ち帰ってきてくれた“お土産”もある!アンタには使えないもの、切り捨てた不要物だって、使いようによっちゃそれなりには効果はあるんだぜ!」
そしてアタイは、その正体を告げた。
岩だらけの山獣頭が、それでもその身体から排除していった数少ない成分、その一つを。
それはつまり――
「――“核燃料”ってヤツさ!」
要するに原子力だ。
もちろん、『世界調理』に放射能なんて出禁ってのは、アタイたち『調理団』にとっても同じではある。
だが、なんでも抜け道はあるものさ。
放射線なら、分厚い鉄板と鉛で覆いさえすれば、かなりその漏出を軽減出来る。
そして、そういった物資は元々アタイがこっそり用意していたぶんもあるが、今回はそれだけで終わらない。
なんせ、『世界調理団』つまり『姉妹』全員とほぼ世界中のニンゲンの協力を得られたからな。
どういった繋がりなのか、総料理長の縁で、この世界の腎臓的な役割をする女神とそれを模倣にした『姉妹』ディスペータといった連中の力まで借りられたし、核反応を起こせそうな物質は鉛や鉄と合わせて文字通り“山ほど”用意してある。
これなら、たとえ目標に直撃はさせられなくても、そしてこちらの設備が最低限であっても、“発射薬”として弾頭を加速させるには十分過ぎるだろう。
とはいえ“着火”の際に、この『大砲』は今度こそ修復不能なまでに壊れちまうだろうし、撃鉄担当の妹まで犠牲になっちまうのは避けられない仕様ではあるが…それでもこれなら、核反応のエネルギーを使えさえすれば、あの山獣頭がどれだけ硬かろうが、どんな能力を使って来ようが、確実にブチ殺してやれる!
「それに、これなら模倣出来るはずもない!なんせ、不要として捨て去られた老廃物に異世界の知識まで使った“本来存在しないもの"の集合体だ!まあ多少は放射能は残っちまうが、末端神経中枢を撃ち抜くだけなら除染もそう難しくない!問題は無いってワケさ!」
それでも残る、ただ一つの問題は…
「やっぱり、ここまで弾頭を改造すると一発しか撃てねえし、誰かかその弾道を間近で制御しなきゃいけないってコトだけどな!っていうワケだ。
だからごめんな、カスメル。
せっかく指輪まで贈ってもらったけど、やっぱりアタイは帰れそうにないんだ。
まあ、そこまでやるんだ。
あの仇敵は、しっかりとアタイが地獄まで心中してやるさ。
それだけは約束してやるよ!
だから…
「カスメル、どうかアンタだけはいつまでも元気で、これからも長生きして楽しく暮らしてくれ。アタイたちのぶんま…なんだありゃ!?」
そうしてガラにも無く餞別の言葉を贈ったアタイだったが、またも驚かされることになる。
なぜなら、
「ウソだろ!?ありゃあ、アタイと同じじゃねえか!」
そう、こっちへ猛スピードで向かってきていた山獣頭の野郎、またやらかしやがったんだ!
アイツ、なんと自分を大地から切り離して、襲ってきていやがる!




