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第三百話 世界調理開始/愛の演説③(その3の65~66の途中まで)

「なんていうか、女性同士の摩擦まさつすごかったんだよ。嫌がらせ、裏切りに冤罪えんざい集団攻撃に情報戦。戦場の方がよっぽど平和だった…真正面からあれこれされたり聞こえよがしに陰口かげぐちたたかれるのは、まだえられたさ。けど、楽しくおしゃべりしている全員に無視されてその場に居ないように振る舞われたり、優しくしてくれていたはずの相手が実はいじめの中心で、厳しくて敵だと思ってたヤツにそれを教えられたのはこたえたなぁ…。まあ、アタイもそんなに性格良い方じゃないからムカつくことも多いだろうし、れた男をめぐって競争相手になりそうなヤツが出てくれば、余裕とか無くなってイラついちまうもんなのかもしれねえけどな。…そのあたりの心境は、今のアタイなら少しは分かる気がする。いやまあ、別に自意識過剰なつもりはねえよ、このアタイも、顔だけはメクセトの親父のおかげでととのって生まれてきてたからな。完ペキに形を設計出来る…まあ言わば人形の顔に普通に生まれてきた生き物はそうそう勝てねえだろう。おっと、また話が変な方向に行っちまったな。失敗失敗」


話の方向性を変えないと。


「んで、何が話したかったかっていうと、ここからだ。ある時気づいたんだよ。そうか、こいつらはホトトギスなんだってな。何を言っているか分からねえとは思うが、もう少しだけ聞いてくれ。まあ要するに、アタイみたいな作り物とは違って、“本物の女”は大変だって話でね。生理あるし、妊娠出産育児でほぼ男と張り合えない。爪や牙みたいな武装だって生まれつき持ってないヤツがほとんどだ。だが、それでも彼女たちは、生きて自分たちの子どもを産んで育てて子孫残す。いや、残すように“設計”されてるんだ。それも、この大地の生き物をつくった『大地獣パンゲオン』にだけじゃない。きっと、その見本モデルになった生き物の時点ですでにそうだったんだ。だって、自分が賛美たべられることばかり考えてるヤツが、他の生き物にいちいち気を配ってたりするワケがないだろ。なんせアイツは、美食うまいもの調理つくる手が足りないからって、あせってあらゆる動物を手当たり次第しだいにヒトガタに進化させたくらいだぜ。無機知性体いわのひとたちなんか、アイツに一番身体が近くて古なじみの子供だってのに、あの前回の『災厄かんしゃく』のせいで大幅に数が減っても見向きもしねえ。お手製の道具かみさまが壊れても、知らん顔だ。だからまあ、とにかくみんながんばって生きてるってコトだよ」



次々と明かされる、【食卓界】住人の大半にとって初耳の情報。

そして、反応に困る愚痴グチの話題。

世界中に困惑が広がる。

しかし、そんなことに構わずフィルティエルトはしゃべり続けた。

あたかも、それこそが自分の砲撃しごとに不可欠だ、とでも思っているかのようであった。

話はまだ続くようだ。



「それでまた気づいたんだよ、アタイも他の女性も、いや生きてるヤツみんな、“ホトトギス”なんじゃないかってね。まあ、アタイはメクセトの親父がなんとなく女型に作っただけで中身はほとんど男と変わらないのかもしれねえが。けど、それでもだ。アタイは誰かをいじめたり追い出そうとはしたことなかったし、むしろそういうことしている女達ヤツら軽蔑けいべつしてきた。けど…逆にニンゲンの輪の、“巣”の中に入り込もうとはずっとしてきたんだ。そう、まるでホトトギスやカッコウみてえにな。なんのことはねえ、アタイもそういった…自分の生きる場所を手に入れて守ろうとする、“生き物たち”と全く同じだったんだよ…」


そこでまた一旦言葉を切り、またすぐに再開する。

思ったよりみんな健闘してくれているが、それでももうあまり時間が無い。

馬鹿頭パンゲオン・ヘッドがこっちに激突する前には、話を終えなきゃな。


この大地、今みんながなんとかその暴走を食い止めようとしている大地獣パンゲオンだってそうだ。手段こそ、自分を美味おいしく料理させようっつー不気味あたまおかしいもんだが、それでも結局は誰かに愛されよう、自分が価値あるものだと認められ、“居場所を手に入れる”ことが目的だ。まあ、そんなことのために、自分の身体を改造したり生き物をつくったり進化させちまうのは、やっぱり狂気バグかもしれねー。けどさ、殺し合いだってみんなやってるだろ?最近はわりと平和だったけど、国境や領土の境じゃあ紛争ドンパチは良くあることでしかない。まあ、アタイもなんだかんだでそういうのに参加して、銃を手に取ってばかりだったけどさ。ええと、何が言いたかったんだっけ?」


今、下の方から、大砲の周囲の軍勢から文句ツッコミが上がった気がする。

でも、それはそれだけ話に引き込まれてきたってことの証拠でもあるだろう。

まあそれは単に、目の前の災厄から少しでも気をそらして気分を転換したかっただけなのかもしれない。

あるいは、勢いと感情に任せて、日頃の不満をアタイへの悪口の形でたまたまぶちまけた、それだけの話かもしれねえ。

けれど、それだってアタイの声が、話が届いていることには変わりない。



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