↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/30

第29話 ゲームオーバーと悪魔のコンティニュー

「いたぞ!! ここだ!!」


 強烈なサーチライトの光が、泥だらけの空き地に突き刺さった。


 視界が真っ白に染まり、俺は両手で顔を覆いながら「ヒィッ!」と無様な悲鳴を上げた。


「動くな! 逃げたら容赦しないぞ!」


 怒号と共に、黒服の男たちが一斉にフェンスを乗り越えてくる。


 C子の親父が差し向けた私兵たちだ。


 それに遅れて、パトカーのサイレンがすぐ真横で止まり、制服姿の警察官たちも雪崩れ込んできた。


「谷口幹夫だな! 署まで同行してもらうぞ!」


 屈強な警察官に両腕を乱暴に掴まれ、泥水の中から強引に引きずり起こされる。




 抵抗する気力なんて残っていなかった。


 全身の骨が軋み、裸足の足から血が滴り落ちる。


 手首に冷たく重い金属がガチャリと食い込んだ瞬間、俺の華麗なるエリート人生は完全に終焉を迎えた。


(終わった……何もかも……)


 フラッシュの光が瞬く。


 いつの間にか集まってきた野次馬たちが、泥まみれで手錠をかけられた俺の姿をスマホで撮影していた。


 明日の朝には、全国のニュースとネットに俺の本名とこの惨めな姿が晒されるだろう。もう二度と、這い上がることはできない。




 その時だ。 俺の足元の泥水の中に落ちていたスマホの画面が、不気味に発光した。 バッテリーはとっくに切れていたはずなのに。


 画面には、画面を埋め尽くすほど巨大な『黒い目玉』が、泥だらけの俺を見上げてニチャアッと笑っていた。


【 読者に報告:ターゲットの完全敗北を確認。これにてゲームオーバーです。 】


「……あ、あぁ……」


 俺の口から、掠れた声が漏れる。全ては、このクソアプリのせいだ。こいつさえいなければ。




【 特別アンケート:読者の皆様、ターゲットは『もし最初からやり直せるなら』と後悔しているようです。 】


【 彼に『現在の記憶を引き継いだ状態でのニューゲーム(強くてニューゲーム)』の権利を与えますか? 】


 画面の中央に、YESとNOの投票ゲージが現れた。


 そして、数万人の読者の悪意が結集したかのように、一瞬で『YES』が100%に振り切れた。


【 読者の総意により、コンティニュー権が発行されました。 】


【 ターゲット、泥水に顔を押し付けて『YES』のボタンを押してください。 】




「な……っ!?」


 俺は息を呑んだ。 やり直せる?


 あのタワマンを夢見た日々からではなく、一番最初の『ふりだし』から?


 しかも、この地獄の記憶と、アプリの罠の知識をすべて持ったまま?




(……勝てる!!)


 絶望で真っ暗だった俺の脳内に、狂ったような歓喜の光が差し込んだ。


 そうだ、記憶があるなら、もう絶対にボロは出さない!


 アプリに目をつけられる前にスマホを捨てて、今度こそ完璧に女たちから金を搾り取ってやる!!


「おい、何を暴れている! 大人しく歩け!」


「離せッ! 俺はやり直すんだ!! 俺は天才なんだよォォッ!!」


 警察官に押さえつけられながら、俺は狂ったように身をよじり、地面に落ちたスマホに向かって顔面からダイブした。


 泥水にまみれた鼻先で、画面に表示された血のように赤い『YES』のボタンを、力一杯押し込む。




【 コンティニューを受け付けました。 】


【 それではターゲット、いってらっしゃいませ。 】


 その無慈悲なメッセージを最後に、世界が強烈な白い光に包み込まれた。


 警察の怒号も、手錠の冷たさも、泥の悪臭も、すべてが光の中に溶けて消えていく。


(よっしゃああああっ!! 今度こそ、俺は真のエリート勝ち組になってやる!!)


 俺は白い光の中で、勝利を確信して高笑いした。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。