↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/30

第17話 公園の水飲み場と悪魔の画像認証

「おえええええッ!! ゲホッ、ゴホッ……!!」


 夜の公園。


 俺は水飲み場の蛇口に直接口をこすりつけ、胃液ごと全てを吐き出していた。


 口の中には、まだあのリサイクル皮ぐつのカビと汗の味がこびりついている。思い出すだけで吐き気がする。


 居酒屋の個室でC子が悲鳴を上げて逃げ出した後、俺は店員が駆けつけてくる前に、全力で逃亡した。


 無銭飲食だ。


 靴にビールを注いだ上に食い逃げ。完全に犯罪だが、捕まらなければどうということはない。




「ハァ、ハァ……クソッ。なんだってんだよ。あの女、俺のワイルドな魅力が理解できねえのか? つまんねえ事務員だぜ」


 ベンチにどっかと座り込み、濡れた皮ぐつを隣に放り投げる。


 俺は一ミリも反省していなかった。悪いのは、俺の『気合い』を引いてしまったあの女の度胸のなさだ。


「まあいい。あんなババア、こっちから願い下げだ。もっと若い、頭のゆるそうな女を狙うとするか」


 俺は懲りずにスマホを取り出し、今度は『パパ活』系のマッチングアプリをダウンロードした。


 俺のパイロットの制服写真を使えば、金持ちのじじぃを探しているバカな女がいくらでも釣れるはずだ。


 新規登録画面を開き、プロフィールを入力していく。


 そして最後の『登録完了』ボタンを押そうとした、その時だった。


 画面が切り替わり、スマホの登録やログインでおなじみの『画像認証(CAPTCHA)』の画面が現れた。


【 セキュリティシステム:あなたがロボットではないことを証明してください 】


「あ? めんどくせえな。信号機か横断歩道の画像でも選べばいいんだろ?」


 俺は鼻ホジリながら画面を見た。


 だが、そこに表示されていた9枚の分割パネルは、信号機なんかじゃなかった。




「……は?」


 パネルに並んでいたのは。


『女のパンツを手縫いしている俺の顔』


『ファミレスの床を平泳ぎしている俺』


『カビ臭い皮ぐつからビールを飲んでいる俺』


 さっきまでの俺の地獄の姿が、高画質で並べられていたのだ。


 そして、上部にある指示文の文字が、赤くグニャリと歪んだ。




【 指示:以下の画像の中から『人間のクズ』をすべて選択してください 】


「ふ、ふざけんな!! なんだこのアプリ!!」


 俺は激怒し、スマホを地面に叩きつけようとした。だが、その瞬間。


『ブルルルルッ!!』


 スマホが警告音のように激しく震え、画面に黒いポップアップが強制表示された。


【 警告:認証をスキップしようとしました。 】


【 ペナルティとして、あなたのスマホの連絡先『全員(実家の母親含む)』に、先ほどの『皮ぐつ一気飲み動画』を一斉送信します。 】


【 カウントダウン:10、9…… 】


「やめろ!! まて、待ってくれ!! 押す! 押すから!!」


 実家のオカンや親戚に、あの変態動画が送られる!?


 それだけは絶対にマズい!! 俺は慌てて画面をタップした。


『パンツを手縫いする俺』『床を泳ぐ俺』……すべての『クズ』の画像を震える指で選択し、右下の『確認』ボタンをターンッと叩いた。


「ハァ、ハァ……どうだ! これで文句ねえだろ!!」


 だが、画面には残酷な文字が浮かび上がった。


【 認証失敗。あなたはロボットではありませんが、『人間のクズ』であることが証明されました。 】


【 クズは当アプリを利用できません。 】


【 追伸:読者の皆様が「反省の色がない」と怒っているので、ペナルティの送信は『実行』されます。 】


「……あ?」


『ピュイッ♪』という、軽快な送信完了音が夜の公園に響いた。


「あ、あああ……」 俺のスマホのLINEから、元カノ、地元のツレ、そして実家の母親に向かって、俺が自ら皮ぐつにビールを注ぎ込んでウマそうに飲んでいる動画が、ご丁寧に送信されてしまった。


【 読者は、あなたの社会的なトドメが刺された瞬間を、ポップコーンを食べながら見物しています。 】


 俺はビールまみれの皮ぐつを抱きしめたまま、白目を剥いて公園のベンチから転げ落ちた。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。