表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/3

黒雷

朝。

カーテンの隙間から差し込む日差しが部屋を照らしていた。

黒纏はソファで目を覚ます。

胸の上には、いつものようにロクが丸くなって眠っていた。

(……重い。)

そう言いながらも、黒纏は優しくロクの頭を撫でる。

ロクは気持ちよさそうに喉を鳴らした。

(ニャ…。)

(起きろ。朝だ。)

ロクは欠伸をすると、黒纏の胸から飛び降り、餌皿の前へ歩いていく。

(腹減ったのか。)

黒纏は苦笑しながら餌を用意する。

ロクは夢中になって食べ始めた。

その姿を眺めながら、黒纏は冷蔵庫から牛乳を取り出し、一口飲む。

静かな朝だった。

戦いとは無縁の、穏やかな時間。

黒纏はこの時間が嫌いではなかった。

突然、玄関のインターホンが鳴る。

(ピンポーン。)

(……誰だよ。)

面倒そうに立ち上がり、ドアを開ける。

そこには、一人の青年が立っていた。

赤いメッシュが入った黒髪。

鋭い赤い瞳。

肩には黒いロングコートを羽織っている。

(おはよう、寝坊助。)

(朝からうるさい。)

(昼だぞ。)

(俺にとっては朝だ。)

青年は笑いながら部屋へ入ってくる。

(ロク!)

ロクは青年を見るなり耳を伏せた。

(シャーッ!)

(またかよ!)

青年が抱き上げようとした瞬間、ロクの猫パンチが飛ぶ。

(痛っ!)

(嫌われてるな。)

黒纏は笑いを堪えながら言う。

(毎回なんで俺だけなんだよ…。)

(顔じゃないか。)

(絶対違うだろ!)

部屋に久しぶりの笑い声が響く。

青年の名は夜叉丸。

黒纏と長い付き合いの相棒だった。

二人は同じ組織に所属し、人知れず虚獣を討伐している。

夜叉丸は冷蔵庫を勝手に開ける。

(腹減った。)

(人ん家だぞ。)

(だから?)

(開き直るな。)

夜叉丸はコンビニ弁当を取り出す。

(これ食っていい?)

(俺の昼飯。)

(じゃあ半分。)

(全部食う気だっただろ。)

(バレた?)

黒纏は呆れたようにため息をつく。

ロクはその様子を見ながら、静かに黒纏の膝へ飛び乗った。

(結局、お前だけだな。)

黒纏がそう呟くと、夜叉丸は少し真面目な表情になる。

(昨日の仕事、聞いたぞ。)

(ああ。)

(相変わらず一撃だったらしいな。)

(弱かった。)

(その一言で終わらせるなよ。)

夜叉丸は笑いながら缶コーヒーを黒纏へ投げる。

黒纏は片手で受け取った。

(ありがと。)

(珍しく礼を言ったな。)

(気分。)

その時だった。

夜叉丸の通信機が震える。

表情が変わる。

(……黒纏。)

(ん?)

(少し面倒な話だ。)

(帰る。)

(待て。)

黒纏は玄関へ向かう。

夜叉丸はため息をついた。

(お前さ…。)

(今日は休み。)

(休ませてもらえない相手が出てきた。)

黒纏が振り返る。

夜叉丸は静かに言った。

(白界機関が動くらしい。)

部屋の空気が変わる。

黒纏は無表情のまま壁にもたれかかる。

(白界機関…。)

(ああ。)

(その中でも一人、かなり厄介なのがいる。)

夜叉丸は窓の外を見ながら続けた。

(光を操る能力者。)

(どんな幻も見破るらしい。)

黒纏は少しだけ口元を上げる。

(へぇ…。)

(名前は?)

夜叉丸はゆっくり答えた。

(白燼。)

その名前だけが、静かな部屋に響いた。

黒纏は窓の外へ目を向ける。

どこか楽しそうな表情だった。

(……面白い奴だといいな。)

窓の外では、一羽の黒いカラスが大空へ飛び立っていく。

その頃。

白界機関本部。

真っ白な廊下を、一人の青年が静かに歩いていた。

白いコート。

白銀の髪。

透き通るような瞳。

青年は一枚の資料を受け取る。

そこには一人の男の写真が貼られていた。

黒い服。

黒い髪。

そして、その下には名前が書かれている。

――黒纏。

青年は資料を閉じ、小さく呟いた。

(ようやく会えるな。)

こうして、運命だった二人は、まだ互いの顔も知らないまま、同じ未来へ歩き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ