裸族は夏のみでお願いします
夏希は一人で街にでかけたことに、ものすごく後悔していた。
犬だと思っていた狼に捕まえられ、今は肩に担がれている。あれからいくら言っても聞かない裸族の男に羞恥心もないのかと罵るも本人は知らぬ顔。そのうえ、裸のまま夏希を肩に抱きかかえた。しなやかな四肢に比例するように夏希を抱えていながらも俊敏に木々をよけながら走っている。振動も少ないが自分の体重の重みで腹に肩が食い込んでかなり痛い。そして目線が否応にも下半身にいってしまうので反らすのに顔を背けるのに苦労している。
「あの~、まだ?」
いったいどこに連れていくつもりなのだろう。街は見えなく辺りは生い茂った木ばかりだ。確実に夏希には城に戻れない。
「ああん?もう少し待ってろよ。もう着く」
言った通りに木々を抜けると辺りが開いた場所につき、洞穴に近づいていく。中の匂いを嗅ぐと喉から声を出した。
「ァオーン」
「ァオーン」
比例するように洞穴から鳴き声が聞こえた。
「よし、行くぞ」
「行きたくないんだけど」
「ああ?」
明らかに厄介なものが待っている声がするのに誰が好んで行ってたまるか、と力いっぱい肩で暴れる。足をじたばたさせ、背中を蹴りあげたり、鍛えられている胸筋を殴るもビクともしない。それどころか野性味溢れる笑みを浮かべる。
「おいおい、お譲ちゃん、そんな子猫が引っ掻いても痛くもかゆくともねえぞ」
「んだとっ!?私は猫ではない、夏希様だ!」
「・・怒るとこはそこか?」
呆れられていると洞穴の中に迷いもせずに入る。中は真っ暗で何一つ見えないというのに男の足取りには迷いが全くない。
夏希が見えもしないのに辺りを見回すと、急に男が立ち止り、夏希を捨てた。
突然のことに受け身も取れなかった夏希は鼻から着地し涙目で周りを見る。しかし暗くて見えずに手探りで、この中がどうなっているのか確認する。
「ここなにぃ?見えないよ」
「くく、人間にゃ、見えないだろうな」
笑みを含んだ声で答えられ、むっとするも男との距離が分からない。感じるのは何か生臭い匂いと動物の荒い息遣いだけ。
突如、夏希は何か柔らかいものをつかんだ。
「ん?何これ?柔らかい」
触れたものを手でたどると明らかに何か四足の動物。
「いやあああああああああああああああああああ!!」
「るせっ!!」
「みやあああああああああああああああああああ!!」
「黙れ!!」
「動物こわいよおおおおおお!!」
えぐえぐ、と鳴きだした夏希に男は舌打ちして近くにいた者に火をつけるように促す。
すぐに火がつき、夏希は目を細めながらも辺りを見回した。
すると、夏希の周りには数十頭もの狼が夏希を囲んで四方からみていた。それを確認すると夏希はまた叫んで、うるさいと怒鳴られていた。




