表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
193/204

地下遺跡にて

 ルクス、ベオ、アディ、ミラの四人はポータルを使い最寄りの街に移動してから、急いでニコラス達がいる遺跡へと向かっていった。

 そこはかつては王国の調査団によって調べられていた場所だが、魔王戦役からの戦力不足により魔物や野盗の住処になってしまい、今はもう誰も立ち入らない場所となっている。

 縦に開かれた、恐らくは本来の出入り口とは違うであろう狭い洞窟の中を進んでいると、急に開けた場所に出る。

 不思議とそこには僅かな光量があり、薄暗い中にも広大な空間が広がっているのがわかる。

 ベオが手に炎を灯し、辺りを照らすと、今はもう朽ち果てた石と土で作られたであろう建物が幾つも立ち並んでいるのが見えた。


「……凄い……」


 その光景を見て、ルクスは思わずそう零した。


「で、でもなんでこの街は……こんな地下にあるんでしょう?」


 アディが疑問を唱える。

 その場の誰もがすぐにそれに答えることはなく、歩き出そうとしたところでベオが口を開いた。


「……追いやられたからだ」


「追いやられた?」

「空から降りてきた連中にな。住む場所を奪われ、光を奪われた。そいつらは地下に籠り、復讐の時を待った。……そういう場所が幾つもある」


 かつてベオが、エルフの老人と会った場所もその一つだった。散り散りになったそれらの一部は地下に潜り、恨みと怒りを募らせた。自らが暮らしていた土地を、奪い合っていた大地を横から攫って行った天から降りてきた者達に。


「……ベオ」

「ま、もっとも私のぽんこつな記憶では、それ以上のことは思い出せんがな。……ただ、僅かに頭の隅に残っている。こんな場所に、辛気臭い顔をした連中が何人もいた。私は、私はそんな連中をどうしてやったんだろうな」


 と、自嘲するように笑ってから、火の灯った手を、前に差し出す。


「今はそんな話をしている場合ではあるまい。鎧女、お前の友人を助けねばな。こんな地下で朽ちて死んでは、死に切れんだろう」


 鎧姿のミラが、ベオの言葉に強く頷く。

 四人は警戒しながらも、少しずつ朽ちた街を進んでいく。幸いにもニコラス達が歩いた足跡が点々と残されており、追跡自体はそれほど難しくはなかった。

 そうやって歩いていると、物音がして四人は立ち止まる。

 ベオが耳をぴくりと動かしてから、警戒するように逆立てて叫んだ。


「何かくるぞ!」


 その声から少し遅れて、建物の陰から次々と人影が飛び出してくる。


「な、なななななにあれ!? あ、アディに負けず劣らず不気味!」


 アディが悲鳴のような声を上げる。

 そこに現れたのは、ルクス達は知らないことだが、屋敷でエリアス達が戦ったのと同じ石の兵隊だった。


「三匹、四匹、五匹……まだ増えるぞ!」

「僕とミラが前に! ベオとアディは援護を!」


 指示を出しながら、ルクスが前に出る。

 石の兵隊は地を蹴り、一瞬にしてルクスに躍りかかる。

 伸ばされた爪の一撃を、黎明の剣で受け止める。鈍い嫌な音が、空洞に大きく反響した。


「こいつ……!」

「強い……!」


 ルクスの横では、ミラが槍を振り回しながら悲鳴のような声を上げた。

 動きが早く、捉えても硬く一撃では致命傷に至らない。


「こ、これなんだとおも、思います? アディは、お化けとかだと予想するんですが!」

「お化けなんかいるものか!」


 アディがウーズを召喚して、触腕でまとめて数体を吹き飛ばす。

 倒れたところにベオが炎の爪を入念に叩き込むことで、ようやく敵の動きを止めることに成功していた。


「ゴーストはいると思うが? わたしも見たことがあるぞ」


 ミラがくぐもった声で、そう答える。


「いないったらいないんだ!」


 叫びながらベオが炎を放射して、まとめて三体の石の兵隊を焦がしていく。


「ちっ、見た目通り利きが悪い!」


 石の兵隊は、ベオの炎をものともせずに彼女へと向かっていく。

 そこにミラが割って入り、自らを盾にしてベオを庇った。


「くっ……!」


 ミラの駆動鎧を、翼の一撃が揺り動かす。流石に鎧に守られているだけあって致命傷ではないが、それでも無視できないほどの衝撃が彼女を襲っていた。


「よくやったぞ、鎧女! 将来的には私の盾として使ってやる!」

「シェーラを助けたら、それも飲もう!」


 槍で押し返したところを、ベオが直接炎を叩き込んで無力化する。砕けて中身が露出した場所に炎を打ち込まれれば、流石にもう動けないようだった。

 ルクスもアディと連携し、何とか一対一の形を取り続けることで一匹ずつ動きを止めることに成功していた。


「キリがない……! そしてこいつらは何者なんだ!」

「わ、わからないけど。なんかこいつらと戦ってると、ちょっとチリチリする」


 アディから次々と、クラゲのような物体とウーズが生み出されている。青白く透き通っているそれは、何故か以前のような黒ずんだ色へと変貌し始めていた。


「た、多分、これはアディにとっての敵なのかも。現に」


 石の兵隊はアディを包囲するように陣形を敷いている。ルクス達にも攻撃をするが、それはあくまでも障害を排除するのが目的のようだった。


「だ、だからここは、アディに任せて。ルクス君達は、先に! ……うへへっ、アディの言ってみたい台詞ランキング六位、言っちゃった……ちなみに五位からは……きゅっ!」


 四方から襲い掛かってきた石の兵隊を、ベオの炎が返り討ちにする。


「貴様のようなぼんくらを一人で置いておけるか! ルクス、ここは私達が食い止める」

「……ベオ」

「目的をはき違えるなよ。私達がやるべきことは、そのなんとか博士を止めて、あのぽんこつ娘を助けて、こいつらと下僕にすることなんだからな!」

「……うん。それはどうかと思うけど、わかった!」


 ルクスは、一瞬とは言え心配した自分を恥じる。

 ベオもアディも、ルクスに心配されるほど弱くはない。


「ミラ、行こう!」

「あ、ああ!」


 この場は二人に任せて、ルクスとミラは正面の敵だけを蹴散らして、一気にその場から駆け出した。

 戦いの音が遠ざかってきたころ、一人の男がルクス達の前に立ちふさがる。

 ルクスはその男のことを知らないが、横にいるミラは違ったようだ。


「ディン」


 ミラがその名を呼ぶ。

 ルクスよりも少し年上、恐らくはエリアスと同じぐらいの年齢の青年だろう。目つきは鋭く、鍛えられた身体が彼が荒事を得意としていることが見て取れる。

 腰に下げていた剣を抜いて、男は構える。


「人造兵、俺と勝負しろ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ