5‐18
アレクシスの手から力が抜けて、床に落ちた。
立ち上がって辺りを見渡してみれば、静かで荘厳な空間が広がっている。
「英雄アレクシス」
既に亡骸となった英雄を見下ろす。
誰よりも強く、誰よりも敵を殺した。
そして誰よりも人の命を救った英雄の最期は、決して華々しいものではなかった。
こんなところで、外敵ですらない内乱に巻き込まれて、たった一人の人造兵に見送られてこの世を去っていく。
だが、その表情は想像よりもずっと穏やかで、彼自身がここで倒れることに一切の後悔をしていないことを感じさせてくれた。
「ありがとう、僕の英雄」
彼が命を救ってくれた。
炎の中でルクスを見下ろしていた彼に、どんな想いがあったのかなど最早誰にもわからない。
それでも命を救われた。
その雄姿は、ルクスの心臓に宿る『誰か』達が憧れ目指した英雄そのものだった。
「貴方に生きる希望を貰いました。だから、これからは僕が誰かの希望に……僕の求める英雄になります」
黎明の剣を手に取る。
ずっしりと重く、そこに込めれた強い力を感じる。
鞘ごと背中に背負い、ルクスの視線は一点に向けられた。
部屋の最奥、更なる地下に続く階段。
「ベオ、そこにいるんだね」
彼女はその先にいる。
そして、この戦いを仕組んだ許せない敵も。
最後にアレクシスを一度だけ見てから、ルクスは振り返らずに駆けだした。




