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4-8

 それから使者に連れられて馬車で移動すること三日。そこからポータルを使い、更に半日ほど移動してようやくアルテウルの王都である『アル・ノーヴァ』が見えてきた。


「……うわぁ」


 王都から離れたの上、そこから見渡してもまだ全容を見ることはできないほどにそこは広大な街並が広がっている。

 城壁に囲まれた街、中心に伸びる川、そしてその奥に小さく見える王城。

 その全てがルクスにとっては初めて見るもので、感動を与えてくれる。


「ルクス殿は、王都を見るのは初めてですか?」


 使者の人がそう尋ねる。


「はい。凄いなぁ」

「はい。あの場所は大勢の人が暮らしていて、常に騎士団と英雄が守りについている安息の大地なのです」

「じゃあ、ギルドはないんですか?」

「唯一、フェンリスだけが支部を王都に構えています」

「やっぱり凄いんですね、フェンリスは」

「グシオンにもその話はあったようですが、マスター・ウィルフリードが拒否したとか」

「そうなんですね」


 確かに本人と会った感じだと、あまり騎士団や貴族達に対していい感情を持っていなさそうではあった。


「いつか僕も、王都に行ってみたいですね」

「観光にもいい場所ですので、是非に」


 そんな話をしながら、二人は丘を登り終える。


「到着しました。私の案内はここまでです」


 丘の上から伸びるなだらかな草原に、武装した一団が待機していた。彼等の装備はバラバラで統制がなく、ルクスと同じように各ギルドから集められたことが見て取れる。

 その奥にはルクスが乗ってきたものよりも一際豪華な馬車が一台あり、その後ろにも装甲が付いた軍用の荷馬車が並んでいる。


「では、私はこれで。後は現地の指示に従ってください」


 そう言って、使者はそそくさとその場を去ってしまう。


「……えぇ、もう少し説明とかあっても」


 呆れながら一団に近付いていくと、彼等はルクスを一瞥しても、特に声を掛けてくるようなことはなかった。

 むしろ何処か緊張した面持ちで、豪華な馬車を見つめている。

 その馬車の扉の前で待機していた男がルクスを見つけると、後ろの扉を開けて何やら中の人物と会話を交わす。

 僅かなやり取りの後、この中で唯一共通の鎧を着た騎士二人が背筋を正し、鞘から抜いた剣を天に掲げるように敬礼し直立する。


「姿勢を正せ! カーティス・フォン・アルテウル殿下の御成りである!」


 扉を潜るように、一人の少年が現れる。

 白を基調として、所々に金色の意匠が入った美しい鎧を見に纏った、金色の髪をした彼は、年齢はルクスとそう変わらないように見える。

 顔立ちは整っており、何処か気品を感じられるのはやはり王族である所以だろうか。しかし同時に何処か幼く、危うげな印象も受ける。

 騎士達の声に驚くように、集められたギルドの兵達も敬礼する。慌ててルクスもそれに習ったが、何分やり方など知りはしないので、大分無様な姿になってしまった。


「これが僕の護衛をする奴等か?」

「はっ! 大公様達のお声を通じて、各地より選りすぐりの兵を集めたと……」

「ふんっ、どいつもこいつも英雄に比べたら屑みたいな連中じゃないか。こんな奴等を連れて歩かされるなんて、僕の品性が疑われるだろう」

「申し訳ございません……! ですが、今は」

「わかっている。英雄は傷を癒すことと、王都の守りで忙しいんだろ? それで僕に与えられたのは、こんな何にもなれないような連中か。まったく、父上のお願いとはいえやってられないよ」

「で、ですが、昨今の事情を鑑みるとやはり、殿下のご出馬によりこのアルテウルに王家の護りありと知らしめねば」

「ああ、わかってるわかってる。そんなに必死にならなくても、逃げやしないよ」


 面倒そうに、カーティスは手をひらひらと振る。

 あれだけ言いたい放題言われても、周りの者達からは反抗の声もない。予め、文句を言うような荒っぽい者達は呼ばれていないのだろう。ルクス自身、心底ベオがこの場にいなくてよかったと安堵していた。


「さっさと行こう。僕もこんな奴等といつまでも一緒に居たくない」

「畏まりました! ではまず直属の護衛を選抜いたします」

「そんなこともするんだ? でも僕、むさ苦しい連中と一緒の馬車に乗るのは嫌だよ」

「万が一のことを考えて、一人だけですのでどうかご容赦を」

「ったく、本当に使えないなぁ。英雄を連れてこれれば、別に一緒に居なくてもどうとでも守ってもらえるのに」


 最早ルクス達など、彼の視界に入っていないようだ。恐らくあのカーティスという少年にとっては護られることは当然であり、ルクス達は人間とすら見られてもいないのだろう。


「この中で最も実績のある者を直属の護衛として付けさせていただきますので」

「でもそいつも、英雄の半分も強くないんだろう?」

「それはそうですが……その者は彼の英雄アレクシスと協力し魔獣を倒し、更には魔王再誕に際しても活躍した強者です」


 ルクスが何やら聞き覚えのある言葉に反応するよりも早く、騎士の一人が高らかに名を呼んだ。


「ルクス・ソル・レクス! 此度のカーティス様直属の護衛に任命する! 王家の威光に感謝し、ありがたくこの任を受けられたし!」

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