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蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【駆け出し編】少年は冒険者になった。
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ソージ・オキ




 村の狩りでは壁役をしていたイッサさんが、今は囮役になっています。魔物は人族のクズどもよりも冷静に戦力を見る。


 普通に俺とイッサさんが歩けば、決して近寄ってこない。森とは違い、見晴らしのいい荒野では俺達を見れば、逃げ出します。


 だからイッサさんが囮をする。《威圧》を使わず《虚弱化》し、身体を弱く小さいものにしてまで。


 不合理です。全く道理に適っちゃいません。


 いざとなれば大きくなれるから、俺は傷ついても窮地に陥ってもいいのだ、とか。


 ……ンなアホな。


 今までは圧のあるイッサさんの壁。俺の機動力、前のヒジカさんの攻撃力と、全員の利点を活かした狩りでした。


 産まれ持った強大さで圧していた人が、わざわざ小さくなってまで弱さを前面に押し出して戦っている。 


 それは『弱い者が強い者へ立ち向かう姿』への憧れですか?


 それともクズとは違うと自分に言い聞かせているのか、自虐的になっているのか。


「バウ!」


 おっと、戦っている最中だった。牙を避けて、短剣で狼の身体を小さく裂く。


「……慣れないことしてるって点に関しちゃ、俺も同じですがね」


 今までは横からの不意打ちや、追いすがっての背中からの攻撃が俺の役目でした。正面に相手を置いて、向かい合っての戦いなんてしたことがありません。 


 だからでしょう。やってみなきゃ気付かないこともある。真正面から戦うことが、こんなにも楽だとは思いませんでした。


「バゥン!」


 狼が飛び掛かってくる。右の爪を突き立て、牙で俺の肉を噛み千切るために。


 ということは、相手の左に回れば攻撃がしにくいな。そう思ってステップで躱し短剣を左手から右手に持ち替えて、左手で首を触って骨の継ぎ目を確認して斬りやすそうなところに振るう。


 ボトン、という音が重なって、宙にあった狼の頭と体が別々に落ちる。きれいに殺せたでしょう。あのヒナという銀髪眼鏡おっぱい受付嬢も、きれいな遺体の方が買取額は高いと言っていました。


「おいおい、何だ今の?」


 すでに終わらせていたイッサさんが、声をかけてくる。


「出来そうな気がしたんで」


「さすが《天才》だな」


 そう言って苦笑いされるが、照れるというより戸惑う。


「《天才(武)》ねぇ……? 自分じゃわかんねぇですけど」





  《ソージ・オキ  亜人族(金狐) ♂》

   【ステータス】

    LV 13

     HP  411/411

     MP   53/98

     POW  116

     DEF   82

     SPD  221

     MAG  112

     INT  121

     LUC   92




   【職業】

    勇者の護り手



   【状態】

    情緒不安定


   【スキル】

   《獣度調整》

   《瞬発LV4》

   《突進LV1》

   《蹴るLV4》

   《引っ掻くLV3》

   《噛みつくLV4》

   《刺すLV3》

   《隠密LV5》

   《思考加速LV2》

   《疾駆LV4》

   《並列意思LV1》



    【パッシブSKILL】

     《集中LV4》

     《命中LV4》

    《回避LV5》

     《恐怖耐性LV1》

     《南の森の知恵LV1》

     《守護者》



    【成長スキル】

     《見取稽古LV1》

     《天才(武)》



   【称号】

   《旅の道連れ人》

   《復讐者》




   【美徳】

    《義》





 十五歳の成人を迎えていない俺は、神官の《鑑定》を受けたことがなかったので、今のヒジカに見てもらったのが初めてです。


 あの恐ろしい魔族のヒジカに観てもらった結果だが、信用はしています。なんせ両親の、姉の、ヒジカさんの、友達の、村の弟妹のような子どもたちの仇を、討たせてくれた奴です。


 ……記憶はないですが。


 俺はしょせん子どもです。二人ほど挑発を聞き流せません。両親や姉を思い出して、一人で泣く夜もある。二人は黙ってますが、さっきもきっと《並列意思LV1》が出てしまったのでしょう。


 ヒジカさんに惹かれていた姉が、ヒジカさんと結婚して俺がそれを祝福するような、どうしようもない夢だって見てしまう。もう二人とも死んでいるのに。


 そんな夢を見た後は、復讐の火がまた燃える。許すなんてありえない。許す俺なんて俺が許しません。


 そのためにもあのヒュドラみたいな魔物を、利用しているともいえます。ヒジカがその気になれば、王都を壊滅させることさえできそうです。


「さ、次行くぞ!」


 大きなイッサさんが、僕の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。金の細い髪が目にかかります。


「……はいはい。わかってますよ」


 荒野をまた歩き、狼の姿を探す。ヒジカは冗談のように言っていたが、多く狩ってこいというのは本気だろう。あの強い男を、失望させるような結果にはしたくありません。


 明るく振る舞っているが、ヒジカの腹の底に黒いモノがゴトリと重くあるのは見えます。多分、俺以上のものが。


 俺はヒジカさんやイッサさんほど、お人好しじゃない。村の教えどおり、あの人たち以上にしっかりと人は見るつもりです。


 それでも、過ごした時間の短さは関係ないのです。


 ヒジカさんの家で、夕食を食べて泣きわめいているヒジカを見た。記憶喪失が嘘だったとしても、あの姿とヒジカさんへの感謝は本物だった。夜に俺が流す涙と、支えてくれるイッサさんとヒジカへの感謝のように。


 俺より年下のガキが、自分の名前を捨ててまでヒジカさんの願いを叶えようとしています。


「……かわいそうだから、俺が手伝ってやるんだともいえます」


「ん? どうした?」


 イッサさんが振り向く。


「いえ。十一時の方向に、狼が三匹います」


「うっし! もういっちょやるか」


 イッサさんはきっと、そういう思いなんでしょう。ヒジカを支えられるような自分になろうとしている。


 正直に言えば、俺もそうなんです。




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