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蛇に転生しました。勇者か魔王になろうと思います。  作者: 松明ノ音
【駆け出し編】少年は冒険者になった。
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イッサ・コドム




「さ! 夕方までにたらふく狩ってくるんだよ、アンタ達!」


 仁王立ちになって声高に叫ぶヒジカに、イッサは背を向ける。


「たまに付いていけねぇんだよなー」


とイッサがこぼすと、同感ですと言いながらソージが付いてくる。


 後ろを振り向くとあいつ――ヒジカは、もうすでにいなかった。おそらく、ちょっと恥ずかしがっているだろう。


 同郷の幼馴染ヒジカ・トージスは死んだ。それは、覆しようもない事実だ。死んだ者は生き返らない。当たり前だ。


 回復魔法とやらもあるらしいが、蘇生なんてものは出来ない。腕や脚を失くした程度でも、できることには出来るがその費用は莫大なものになる。しかし死んだ者は、どれだけの財宝を積もうが生き返らない。


 ……だから『今日から僕がヒジカ・トージス』。そう言ったアイツを、俺が受け入れているのかどうか。イッサは自分でもわからない。


 アイツは魔族だ。《獣度調整》も使えるようだが、本来の姿は、あの100メートルは有りそうな五頭を持つ白い巨蛇の姿だろう。


 正直、得体は知れない。


 それでもわかることがある。


「イッサさん、二時の方向に狼型二匹、いますよ」


「了解」



     《虚弱化》



 俺はスキルを使用し、小さくなった。


《虚弱化》は、弱くなるスキルだ。3メートル近くある俺が、ヒジカと同じくらいの身長1.5メートルくらいの体格になる。


 腕は細くなり、胸板は薄くなり、ステータスは弱くなる。村を出て国を見て獲得したスキル。


 王都に来るまでのヒジカとの旅で、亜人を見て来た。亜人だけでなく、虐げられる弱い人々を。


 今日の人間達には腸も煮えくり返ったが、それで人間すべてを嫌おうとは思わない。あの《聖女》をはじめ、王都に来るまでの道中、優しくしてくれた人たちもいたのだ。


 俺は産まれた時から大きかった。子どもの頃から強かった。同年代はおろか、年上にさえ喧嘩を売られたことはない。


 見るからに俺が強く、大きいからだ。そういう者にはみな敬意を払う。だから俺は、世界がみんな好い人だと思っていた。


 見るからに弱く、小さい者が虐げられるのを見ても、何か悪いことをした人なのだろうと思って見過ごしたことが、今までの人生で三度あった。なぜならこの世は、みないい人だと思っていたから。


 実はあの三度も、理由なく虐げられていたのかもしれない。魔物との闘いのように、弱肉強食でもないのに。


 今、小さく弱い俺に二匹の魔物が襲いかかっている。


「バゥ!」


「ちぃぃ!」


 身の丈以上の大剣で薙ぎ払う。掠りもせずに避けられる。


「バゥン!」


 振るった大剣の勢いに自分の身体が流され、バランスを崩す間にもう一匹が俺に噛みつきにくる。


「ぬぅ!」


 バランスを崩したまま、脚を無様に上げて蹴った。間が良く顎に当たり狼の顎を揺らすが、爪で脚を引っかかれる。


 痛みが走る。大きな太い体では、こんな些細なダメージなど歯牙にもかけなかったが、この体では小さくないダメージになる。身体は恐怖を感じる。


 もう一匹に視線を向けたが、ソージがすでに襲いかかっていた。


 蹴った魔物が体勢を立て直し、再び俺に向かってくる。



    《虚弱化・解除》



 俺の身体が徐々に元の大きさに戻って――大きくなっていく。


「バ! バゥ!?」


 狼が驚いたような顔をして俺を見る。その眼には恐れが混じる。前のヒジカは狼だった。


「オラぁ!」


 振り上げた、身の丈に合った大剣を振り下ろすと、狼の身体は両断された。


 ……結局、俺には弱く小さな者のことなんてわかりはしない。


 俺は《恵体》を持って生まれた人間だ。《虚弱化》で小さい振りをしたところで、解除すれば強大な体に戻れる。


 そんな俺には、本当には弱い者の気持ちなどわからないのだ。やろうと思っても大きく強くなれず、外敵は多いのに排除できない身になど、なれないからだ。


 一時的な恐怖に震えても、結局産まれ持った大きさでどうにか出来る俺には。


「……同じ狼でも、アイツとは違うな」


 前のヒジカは、二百人の精兵にも立ち向かっていった。囲まれ、全身を矢で射られながら戦おうとした。喧嘩を売った相手が大きくなれば怯むこいつらは、違う。


 今のヒジカは、大きな体でそれ以上に大きな相手、国や体制に立ち向かおうとしている。それが、蛇の魔族であってもヒジカと重なってしまう。


 時々思う。王都のクズどもは、俺達が手を出しにくいと知りつつ喧嘩を売ってくる。奴らは勝算があるか、こちらから手を出せないと勘違いした時だけ手を出してくる。そのクズと、体型で常に勝てる勝負しかしない俺とは、何か違うのだろうかと。


 それでも、今はこのまま戦うしかないのだ。いつか来る俺より強大な敵に出会った時、正面から堂々と戦うことを誓いながら。


 タマソン村はお人好しが過ぎるとヒジカは言うが、少し違う。俺達だって、人は見ている。そいつが自分の善性を向けるに値するかどうか、よく見ろというのが村の教えだった。


 ただ、幼い頃から教えられてきたそれが、本当にわかったのはつい最近だが。


 見ているんだ。


 ヒジカ、お前が何を考えて何をしようが、ヒジカが死んだ時に心の底から悲しんで、腹の底から敵を憎んだ姿を俺達は見ている。


 神官でもないのになぜか《鑑定》まで持っているヒジカは、本当に得体が知れない。






  《イッサ・コドム 亜人族(大猩々) ♂》

   【ステータス】

    LV 18

     HP 1012/1211

     MP   53/53

     POW  316

     DEF  302

     SPD   91

     MAG   42

     INT  153

     LUC  292




   【職業】

    勇者の護り手



   【状態】

    不眠症


   【スキル】

   《獣度調整》

   《虚弱化》

   《持久LV1》

   《突進LV2》

   《殴るLV6》

   《隠密LV3》

   《眼力LV2》

   《威圧LV3》

   《統率者LV3》

   《かばうLV7》

   《並列意思LV1》


    【パッシブSKILL】

     《武道の素養》

     《集中LV4》

     《恵体》

     《強力LV5》

    《強固LV4》

     《恐怖耐性LV1》

     《痛覚軽減LV2》

     《苦痛耐性LV3》

     《南の森の知恵LV1》

     《守護者》



    【成長スキル】

     《見取稽古LV2》




   【称号】

   《大器》

   《旅の道連れ人》

   《復讐者》




   【美徳】

    《義》






 だが得体の知れなくとも、大雨の中ヒジカが死んで泣いているのを見た。


 あの涙を見ているから、俺はヒジカに付いていく。





 人化後から書き直すか悩んでおりました。が、色々考えた結果、一旦第二部終了までは毎日投稿するつもりで書き進めようと思います。読み続けていただける方には、お目汚し失礼します。

 離れる方も多いかと思いますが、2ヶ月経てば書き直しも済んでいる予定です。もし気が向いたら、その時にでも読んでいただければ嬉しいです。またお会いしましょう。

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