尾行する男
「何っだかスッキリしました!」
そう言って、伸びをする金髪狐の美少年は、子どもらしい。子どものあんな姿を見ていた僕とイッサはたまったものじゃないけれど。
げんなりするが、これも必要なことだと諦める他はない。見たくなければ、ソージの憎悪の元凶であるこの国を変えるしかないのだ。
死体は、僕が《丸呑みLV6》して消しておいた。『人誅ゆえ必殺』と書こうかと思ったが、着いてきている男がいるのでやめておいた。
何かしたことはわかるだろうが、何をしたかまでわかるほど、近づけさせてはいない。
「……まぁ、これからしばらくないと、安心は出来るんだろうからな」
一番辛いのはイッサだ。出来れば二度とあのソージの姿を見たくないだろう。僕だってそうだ。
「堪え切れないストレスは、出来れば魔物で発散させてね。……二人とも」
そう言いながらも、二人が苦しむよりは何人かクズみたいな人間を殺した方が、ずっとマシだと思っている。
別に人族より亜人族の命を大事にしたいとは思ってはいないが、こちらに挑んで来る敵なら、容赦をする必要がない。友人の心を殺そうとする相手なら、心や人生を壊すのに躊躇する理由はない。
傲慢かな? 別に相棒からもらった《傲慢》の悪徳のせいにするつもりはない。僕がこういう人間っていうだけだ。
「ここで、最後か」
先の二軒に比べれば、小さな商店だった。二軒目はスーパーのようだったから、規模感はどんどん小さくなっている。ヒナに渡されたメモの、最後の店だ。ここで駄目なら諦めるしかない。
「最悪、採集クエストをやってもらうことになるかもね。自分たちで《調合》できるようになることも、無駄とは思わないけど」
「まぁ、それも楽しそうですよ」
そう言って笑うソージに、曖昧に微笑む。憎悪が抜けたからか、いつもより毒も抜けている。記憶がないので、怒り疲れて眠ったのだと言っておいた。無理はあるが言い切ったので、ソージは追及してこない。
そんなソージのためにこそ、速くことを進めたいのだ。出来れば採集は、それ専用の仲間を作って任せたい。
「ごめんくださーい!」
「ひぃ! 亜人!!」
「お邪魔しましたー……」
上手くはいかなかった。笑顔で挨拶し、笑顔のままさよならを言って扉を閉めた。
「人のよさそうな夫婦だったのにな……」
きっと何か理由があるのだろう。そう思ってでもいなければ、やり切れない。
……実は今日の分だけなら、何とかなりはする。
さっき、死体が《ポーション》を持っていたので、回収しておいた。しかし、5個だけだったのでこれからのことを考えると、やはり入手先は欲しい。
「今日はとりあえず、そのまま魔物倒してきてよ。実は、ヒナがくれてたんだ」
よくはないことなので、そういうことにしておいた。
「お前はどうする?」
「……何とか《ポーション》や道具やら、買える店を探してくるよ」
腹の立つことは多そうだが、やるしかないだろう。イッサやソージの憎悪を膨らませるのもごめんだし、勇者の立場と《邪眼》がある分、僕の方が融通は効く。
「そうか、悪いな」
申し訳なさそうに顔をしかめるイッサに、僕は首を振る。
「ううん。適任だから僕がやるだけだから。イッサが適任のキツい仕事もやってもらうからさ」
ギルドから離れてしまっている。昨日通った北門より、西門の方が近そうだった。西門から出れば荒野に出られるらしいので、都合はいい。
また城門の兵が馬鹿な可能性があるので、僕も同行することにした。
「イッサ、ソージ。クエスト中に人間に襲われたら殺していいからね?」
念を押す。なるべくトラブルは回避してほしかったが、今日の感じだとそうは言っていられないだろう。
二人が肯くのを確認して、門へと向かう。
情報の共有がされていたのか、西門の門兵はすんなりと僕たちを通した。
用事が後ろから付いてきている。老け顔の冒険者だ。あまり気乗りのしない話になるだろう。さらにうんざりする。
いつまでも暗くなっていても仕方がない。せめて明るく送り出すとしよう。




