第6話 本当の家族
──血縁関係があれば、家族になれる
「待って!!」
陸が手に持っているフォークは拓也ではなく、明美の手を切り裂いていた。
「っ!!」
拓也はさっきまでの緊迫した様子とは裏腹に、腰を抜かして床に倒れていた。
「……母さん」
陸が母の手のひらに刺さったフォークを抜こうとすると、手首を掴まれた。
「陸……大きくなったわね」
明美は両腕を力強く掴んで、陸の顔を見る。
やっぱり私には似てないけど、この子を愛してあげたい。本当の愛情を教えてあげたい。
冷たい床にポタポタと温かい血が落ちていく。
陸は目を見開いて母の顔を見る。
痛いはずなのに母さんは目を離さず、ただ愛おしそうに俺の目を見つめていた。
最後に母さんの顔を見たのはいつだったか。頭の中で妄想と現実が混乱して、上手く思い出せない。
それでも、この人が自分の母だということはなんとなくわかる。
だけど
僕は母の手を振り解いて
「陸なんて名前で呼ぶな!!」
「みんな…!みんなそうだ!!誰も僕をっ!本当の家族として見てはいないんだ!!!」
心の中の塞がりかけていた傷口が大きく開く
僕は放心状態になっている父の目を見る。
昔からその「目」が嫌いだった。家族ではない他人を見るかのようなその目が。
きっと、母も同じ目をしている。
母の目を見ようと思って、一度目を離す。そして、もう一度母の目を正面から見た。
その目には、たった一人の家族が写っていた。
多分、母さんの目にも同じものが写っているはずだ。いや、僕は心の中でそうあって欲しいと思っているんだ。
母は僕から目を離し、床に膝を付ける。
そして
床に垂れた自分の「血」で名前を書いた。
────莉空
「……莉空?」
「莉空。私が最初、あなたに付けようと思っていた名前よ」
「僕の名前?」
「そうよ……もっと前からこうしてあげるべきだったわ。」
少し強い力で体が後ろに傾く
「莉空、私はあなたを愛しているわっ…!!
今も昔も……あなたは私の大切な家族なのっ…!!」
小さい頃から同年代の子供と遊んだことがあまりない僕は、母の泣き崩れる姿に目を離せなかった。
なんだ、この気持ちは……
二人の枯れていた心が同じ血で潤う
莉空は初めての感情に戸惑いながらも、自然に腕を母の背中に回す。
どうしようもなく嬉しくて、こんなにも……暖かい。
僕は疑えなかった。
母の愛情が本当の愛情なのか。
自分が求めていた「本当の愛情」というものを、疑うことはできなかった。
その日、僕と母さんは血の繋がった家族になった。
活動報告で第6話記念イラストを投稿しました。




