最終話 血塗られた愛
この世界に本当の愛情を知っている人は、どれくらいいるだろうか?
決して少なくはないが、多くもない。
「田舎で野菜でも育てよう」
「えっ?」
唐突な言葉に理解が追いつかない
「今の時期なら旬はジャガイモとかアスパラガスだね。夏になったらトウモロコシを育てるのもいい。」
「ま、待って。……気が動転してよくわからないんだけど?」
「母さん、昔は畑をやるのが趣味だったよね?だったら僕と二人で田舎で畑でもやろうよ。」
「でも、外に出たら莉空は──」
「万が一の時には地下室を作っておけばいい。そこに僕が住んで、母さんは地上で暮らせば大丈夫だよ。」
莉空の言っていることは多分、正しいことではない。でも、私には「正解」を言えるような資格はない。
次こそは莉空と正面から家族として向き合おうと誓ったことを思い出す。
例え、どんなに高い壁があろうとも、私はその壁を超えて莉空と「本当の家族」になろう。
莉空の気持ちに答えるために、今の私ができることは──
あれから数年経って、母さんは父さんがいなくなってから笑顔が増えた気がする。
テーブルの向こうにいる母は、とても幸せそうな顔をしている。
具が沢山入っているカレーを食べながら、莉空は考えた。
この選択が間違っているのか、正しいのかは正直わからない。ましてや、こんな生活が長く続けられる保証なんてどこにもない。
でも、僕はやっと本当の家族を見つけることができた。今はただ、この充実した生活が長く続くことを望んでいる。
こんな僕でも真っ当な人間として、これからは正しく家族を想って生きていけるはずだ。
だって
──もう地下室に人形は居ないのだから
ふと、私は旬の野菜と果物がたくさん育っている畑を見る。
「やっと、いっぱい育ってくれた……」
明美は完全に治ってしまった手のひらを優しく触りながら、枯れていた心の中で小さく呟く。
──土の下に人がいないとよく育つわね
【完】
活動報告ににあとがき・解説を投稿しました




