第4話 家族を妄想した人形
昔から、リクという名前が嫌いだった。
ミクとソラは「美空」と「空」という名前で、僕は空には届かない「陸」。
たしか、母さんの養子が欲しいという願いを受け入れる代わりに、父さんが言った条件がそれだった。
名前で差別され、養子の立場でいじめられ。僕がこの家に来てから数年が経っても、ミクとソラとは本当の家族にはなれなかった。
昔からミクとソラの顔が嫌いだった。
父さんと母さんに似ていて、見るだけで疎外感がする。ソラが笑う時、父さんが笑い。ミクが楽しそうにする時、母さんも楽しそうな顔をしていた。
羨ましい
その感情が僕の心を支配した。
家族というのは血縁関係の有無だけで決まるものではない。
──僕たちは壁を超えて家族になるんだ
「もう18時をすぎてるわよ?みんなは?」
「いや、さっき声をかけたはずなんだが…まだ外で遊んでいるんだろう」
「夕飯冷めちゃうから呼んできてくれる?私は料理の時は手が離せないのわかるでしょ?」
「もちろんだ、今呼んでこよう」
血縁関係があれば、家族になれる。
例え、どんなに落ちこぼれでも、人格が多少捻くれていても、自分の子供として接することができる。
血が繋がっていることが、正真正銘の家族である証明なのだ。
だから私は陸を養子として迎え入れることに反対したんだ。昔の自分は結婚してから日が浅かったからか浮かれていた。自分の信念さえ薄らいでしまうほどに。
今の状況を見てみれば一目瞭然じゃないか。
陸の居場所はここにはなく、他人が家にいるのと同然だろう。この家には美空と空がいることが何よりも重要だ。
外を見渡しても二人の姿がない
部屋で遊んでるのか?
拓也は家の二階にある美空の部屋に行くために、狭い階段を登る。
───ドンッ
硬い物が落ちたような鈍い音
二階に大きな荷物はなかったはずだが、きっと誰かが物を落としたんだろう。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと右に回すとそこにいたのは
陸だった
正確には陸と倒れている二人
美空と空が大きな段ボールの箱の中に入っていた。
「あっ、お父さん。」
「何をっ!何をやってるんだ!?」
「ミクとソラがね、自分が遊んだ人形を床に置いたまま片付けないから……僕が片付けたの。」
今思えば、あの日からだった気がする。
記憶が曖昧になり、現実が妄想のように思えるようになった。僕は「ミク」と「ソラ」と家族になった。
どんな形でも、僕たちは「家族」になったんだ。




