第2話 家族
プニ プニ プニ
「もうやめろって!」
「いいじゃん、こんなのただのスキンシップでしょ?」
ミクは人の頬をつつくクセがある。大して柔らかくもない僕たちの頬をつついて何が楽しいのか。変に落ち着くから本気で抵抗はしない。
部屋の温度が1度、2度上がるような感覚が心地よくて、柔らかい指が忘れかけていた家族の絆を思い出させる。
家族とは何か。
血縁関係がある人が必ずしも家族になれるとは限らない。客観的には家族でも、主観的な家族にはなり得ないことはよくあることだ。
仲のいい家族がいれば、仲の悪い家族もいるのが自然の摂理だろう。そして、僕たちは仲のいい家族だと思う。
仲のいい家族──同じ食卓を囲んで、つまらない話をして、落ち着く。そんな場所だった気がする。
毎日同じ姿を見て、毎日同じ声を聞くような、ただそれだけの存在が家族なんだろう。
僕にもそんな家族がいたはずだ。
──頭の中の妄想をやめて、目を開く。
そこには誰もいなくて、ミク向かい側の壁に寄りかかって目を閉じている。多分、寝ている。
最近は起きてる時間の方が短い日が続いている。僕も例外ではなくミクやソラと同じように現実にいないことが多くなっている。
ふんわりして、霧のように掴めそうで掴めない感覚がする。いつからだったか。時々、ここが現実か、夢か、妄想か、わからなくなることがある。
この地下室だと時間の感覚が曖昧になって、当然、朝か夜かは空を見て判断することもできない。
天井を見上げると、灰色の中に一つの明るい光が目に入る。大きすぎず、少し小さな光がこの地下室を丁度よく照らしている。
あれが点灯したら朝、消えたら夜。そして、今は朝だ。──数時間前は夜だったのに。
最近はすぐ朝になってすぐ夜になる。おかしい。前はもっと1日が長かったはずだ。俺でも流石に気づいている。これは現実だ。
さっきまで淡々と光っていた灯りがもう消えようとしている。さっき付いたばっかりなのに、灯りが弱々しく消えていく。
1日が早すぎて、僕たちの体内時計も完全に狂っている自覚がある。眠たいというより、寝てしまうという感覚に近い。
頭の中でしか声を出せず、僕の意識は途切れた。
眩しくて目を覚ますと、今日の「2回目」の朝が訪れていた。




