ボクとエルフたち
「ボクのセカイは狭い。里のミンナのことはよく知っているけど、外にいるミンナのことをボクは知らない。
里には里の、外には外の、決まった掟があるってことをボクは知らなかった。
……知らなかったでは済まさないことがあるってことも、ボクは知らなかった。
無知だったボクの罪で、容赦なく降された罰はボクの身を焦がした。
罪には罰を……そこに文句はない。
でも、優しい目をした巨神はボクの罪を許した。
……ならばボクは知らなくてはならないと思う。
正しいこと、間違ってること、色々学んでセカイを広げよう……それがボクにできる贖罪だと思うから……」
-マース大森林 賢眼の巫女”ティリア=マース”―
自分の足元を取り囲む殺気立った武装集団を見下ろし、ボクは思った。
これまでの経験から、彼ら人形たちが何をしようと大して怖くはない。
矢を射られても、魔法を放たれても、剣で切られても、槍で刺されても、ちょっと痛いだけだとボクは学んだから……。
ーーーでも、この子は違う。
流れ弾一つが致命傷になってもおかしくはない、とボクは思った。
だからボクはこの子を抱きかかえ、ボクらを取り囲む集団を蹴散らそうと足を振り上げた。
でもその時、ボクの手をすり抜けて女の子が集団の前に飛び降りてしまった。
「lcfrfhcxt!!」
焦るボクを置いてきぼりにして、彼女は集団に向けて何か叫んでいる。
え? どういうこと?
ーーー
ーー
ー
深い深い森林の奥深く。生きた木を、その活力を損ねることなく住居として使えるように加工された奇妙な家が立ち並び。
大森林の中に溶け込むようにひっそりと、それでいて広大な”里”が今、ボクの前に広がっている。
ボクの眼から見ても大きな木を中心にした……エルフの隠れ里? っぽい土地にボクと女の子は足を踏み入れた。
案内したのは、ボクらを取り囲んだ武装集団。
日が昇り、明るくなった今ならよくわかるけど、彼らは女の子と良く似た姿……耳が長かった。
そう、敵だと思ったのはボクの早とちりで、多分だけど、女の子を探しに来ていた救助隊か何か、だったらしい……蹴散らさなくて本当に良かったぁ……。
救助隊の人たちも含めて、里にいるエルフっぽい人たち……もうエルフで良いや。
ーーー彼らのボクを見る眼は様々だ。
畏怖、畏敬、興味、これまで出会ってきた人々と大して変わらない。嫌われてはないけど、疎外感を否定できない残念な状況……。
でも、前の時は姫様が居たから寂しくはなかった。
姫様はボクを対等に……若干、下僕扱いされてた気もするけど……ボクと普通に接していてくれた。
……………。
なんとなく膝を抱え、空を仰いだまま苦笑していると、ふと指に温かいモノが触れた。
「hgjだsh?」
ボクの指を両手で掴んだ女の子が何を言ってるか、相変わらずボクにはわからない。
……わからないけど、なんとなく励ましてくれてるような気がする。
ボクを心配そうに見上げる女の子の眼には、怯えも、過度の尊敬も見えない。
スケールサイズを考えずとも、女の子は小学生くらいだと思う。
小学生女子に励まされる男子高校生……これは、ダメすぎないだろうか?
さっきとは違う意味で、ボクは苦笑して女の子を持ち上げる。
「ありがとう」
「jcfつdj? ……gjっdっ!!」
ボクが笑えば、女の子も笑ってくれた。
うん、そうだね。とりあえず今は、これで良いや……。
澄み渡る青空の元、ボクと女の子は笑い合う。それをエルフの人たちが複雑な顔で見上げていたけど、ボクは気にしないことにしたのだった。




