ボクと世界樹
数多の伝説に語られる黒衣の巨神とは何か?
地に貶された天使は語るーーーアレは邪神である、と。
天に投げ捨てられた悪魔は語るーーーアレは魔神である、と。
海に還された怪物は語る……アレは虚神である、と。
そして、人々は語るーーーアレは……。
ー旧約 神話大典 三十二章 七目 一項 〜序文より抜粋ー
今、目の前に、ボクの視界を遮るように一本の木が立っている。
膝下に生える雑草のように見える木々と違い、まるで普通の木のようにそびえ立っていた。
その木……超をつけるべきかもしれない大木を中心に、その木陰に保護されるかのようにエルフの里が広がっている。
これはアレだろうか? ゲームとかに出てくる世界樹ってこと?
久しぶりに見る、ボクよりも大きな存在に圧倒され。
ぽかんと口を開けたまま、この〜木なんの……と脳内で口ずさんでいたら、頭上から、ピカピカ光る何かが飛び降りてきた。
コケコッコー! ……正確には違うけど、そんな感じに高い声で鳴いた金色の鶏は地上に降り立つと、世界樹の根本を掘り返し始めた。
何をやってるのかと思ったら、どうやらミミズを掘り出して啄んでいるらしい。
あれ? ちょっとまって! ミミズのサイズおかしいよ!?
それを言ったら金色の鶏もサイズがおかしい上に、色もおかしいけど!
あ、でもミミズもよく見たらピンクより紫、黒っぽい毒々しい色合いで……いや、これミミズじゃなくて蛇?
そんなどうでも良いようなことで混乱するボクを置いてけぼりに事態は進み、今度は大トカゲが出てきた。
貪り食われているミミズっぽ蛇たちと同様に……ううん、それ以上に毒々しい色合いのトカゲ……もしかして竜?
そして始まる哺乳類VS爬虫類の怪獣決戦。
ここの近くに住んでるらしいエルフの皆さんは慣れた様子で……それでもかなり慌ててどこかに避難していったから大丈夫だとしても……。
案内してくれた、ボクの肩に乗っている女の子はどうしよう? 巻き込まれないうちに離れた方が良いのだろうか?
そうやって、どうするかボクは考え。何か無いかと辺りを見渡した時、世界樹の枝の上で、争う二匹の存在を見下ろし嘲笑っているモノがいることに気がついた。
反射的にボクは、ポケットに入れていた小石……大岩を取り出し華麗……だったら良いな……フォームでソレに投げつけた。
キャッチボールとかは苦手な方だったんだけど、まぐれか隠れた才能が目覚めたのか、投げた石はクリーンヒットした。
枝の上から撃ち落とされた獣……リスっぽい何か拾い上げ。ボクは考える。
リスって食べれたっけ? 食えないなら一応、お墓でも作った方が良いのかな?
そういえばココ最近まったくお肉をを食べてないな……唐揚げとか……チキン……。
色がちょっとどころじゃないくらいにおかしいけど、鶏は鶏だよね?
さばき方は、田舎のおばあちゃんが〆てるところを見ててからなんとなくわかるから……。
と、そんなことを考えてたら、元凶っぽいリスを打ち倒したからか、ボクの不穏な考えを読んだか、金色の鶏は争うのをやめて、木の上に飛び去っていった。
相手がいなくなったからか、ボクという捕食者の存在に気づいたからか、トカゲの方も慌てて地面に潜って消えていった。
争いが収まり、避難していたエルフたちが恐る恐る戻ってくる様子を尻目に、ボクは頭上を見上げ。
鶏でも、金色なら飛べるんだな……と、ちょっとズレたことを考えていた




