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ただの後衛職だと見捨てられた俺、『ステータス改竄』で覚醒する〜俺を溺愛する最強の氷の魔女と、辺境で温泉スローライフを始めます〜  作者: KIZUNA


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黒竜の魔核を使った『節約術』



「さて、この馬鹿デカい『黒竜の魔核』をどうするかだな」


領主の館、その執務室。 俺は机の上にゴロリと置かれた、漆黒に輝くソフトボール大の魔力結晶を見下ろしていた。


「アイン、お茶を淹れたよ」


コンコンとドアをノックして入ってきたリリアが、湯気の立つティーカップを俺の前にそっと置く。


「ありがとう、リリア。領地の見回りはどうだった?」


「みんな大喜びだったわ。アインが土壌を書き換えてくれたおかげで、一晩で野菜が山のように収穫できたもの。でも……」


リリアは少しだけ困ったように眉を下げる。


「いくら食べ物が豊かになっても、ここは帝国最北端の辺境。他の街から商人を呼んで経済を回すには、目玉になる『特産品』が必要ね」


さすがは次期皇位継承者として教育を受けてきただけあって、領地経営の基本をよく分かっている。


「その通りだ。だから、これを使う」


俺は机の上の『黒竜の魔核』を指差した。


「えっ……? それは、武器や防具の素材にするんじゃないの?」


「普通ならそうだろうな。でも、俺の【世界編纂】ならもっと面白い使い方ができる」


俺は分厚い本を開き、領地のステータスページに羽ペンを走らせる準備をした。


「ゼロから新しいものを創り出そうとすると、莫大なインク(魔力)を消費してしまう。でも、すでにある『高ランクの素材』を書き換えて世界に組み込むだけなら、インクの消費は劇的に抑えられるんだ」


つまり、一から文章を考えるのではなく、既存の文章をコピペして少し手直しするようなものだ。


俺は『黒竜の魔核』の項目をページに呼び出し、その使用用途を書き換えていく。


【対象:黒竜の魔核】

・属性:極大の熱源、大地の魔力

・状態:『固形』を取消し、領地の地下水脈と『融合』に変更。


「魔核の熱を地下水脈と結びつけて……よし、最後に領地のステータスに新しい施設を追加する」


【対象:北端の辺境領】

・追加施設:『魔力温泉(疲労超回復・全ステータス微増)』


「これでよし」


俺が本を閉じた瞬間、机の上にあった黒竜の魔核が光の粒子となって消滅し、床をすり抜けて大地の奥深くへと吸い込まれていった。


ズズズズズ……!


心地よい地響きとともに、館の裏手にある荒れ地がボコボコと隆起し始める。 やがて岩肌が自然な形に組み上がり、そこからとめどなく透き通ったお湯が湧き出してきた。


大気中に漂っていた魔力粒子がお湯に溶け込み、キラキラと幻想的な光を放ちながら、極上の露天風呂を形成していく。


「嘘……温泉が湧いた!? しかも、お湯から信じられないくらい澄んだ魔力を感じるわ……!」 窓からその光景を見ていたリリアが、目を丸くして驚愕の声を上げた。


「これならインクの消費も数パーセントで済む。


魔核のエネルギーが尽きない限り、無限に湧き続ける極上の温泉だ。これなら商人も客も呼べる特産品になるだろ?」


俺がペンを回しながら振り返ると、リリアは真紅の瞳をキラキラと輝かせ、俺の手にギュッと両手を絡めてきた。


「すごい! すごいわアイン! 疲労回復にステータスアップまで付与される温泉なんて、帝都の貴族だって喉から手が出るほど欲しがるわ!」 「ああ、少しずつ噂を流して、観光客を――」


「さあ! そうと決まれば、さっそく二人で一番風呂に入りに行きましょう!」


「……ん? 今、二人でって言ったか?」


リリアは俺の言葉などお構いなしに、俺の腕を引っ張って執務室を飛び出した。


「当然でしょ! アインが私のために作ってくれたお風呂なんだから、一緒に入るしかないじゃない!」


「待て待て、それにいくらなんでも混浴は……っ」


「大丈夫よ、誰も見に来ないように私が結界を張っておくから! 背中、綺麗に流してあげるね!」


帝国最強の竜騎士の筋力で引っ張られては、ただの書記官である俺に抵抗できるはずもない。


結局その日、俺は湯あたりするギリギリまで、ご機嫌な氷の戦乙女と一緒に魔力温泉に浸かる羽目になった。 だが、温かいお湯と彼女の弾けるような笑顔のおかげで、使いすぎた魔力と疲労がすっかり抜け落ちていくのを感じていた。


・・・


――そして、数日後。


「北の果ての死の土地に、緑豊かな森と、万病を治す『奇跡の温泉』が湧いたらしい」


その信じがたい噂は、風に乗って行商人のネットワークを駆け巡り、瞬く間に帝都の巨大商会へと届くことになる。


すべてを失い泥水をすする勇者たちとは対照的に、アインの開拓する辺境領は、栄華と発展への第一歩を力強く踏み出していた。


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