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ただの後衛職だと見捨てられた俺、『ステータス改竄』で覚醒する〜俺を溺愛する最強の氷の魔女と、辺境で温泉スローライフを始めます〜  作者: KIZUNA


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甘い朝と氷の正妻のマウント



チュッ……、という生温かい水音で、俺は目を覚ました。


「おはよう、アイン……ううん、私の『旦那様』」


視界のピントが合うと、俺の顔を覗き込むようにして微笑むリリアがいた。


昨夜の狂気じみた、けれど蕩けるように甘かった初夜の余韻が、彼女の艶やかな素肌から匂い立つように溢れている。


「おはよう、リリア……って、お前、朝から元気すぎるだろ」


俺が苦笑して身を起こそうとすると、腰のあたりにズシリとした疲労感があった。


無理もない。昨夜のリリアは、俺に対する限界突破した愛情と独占欲、そして思わぬSっ気をフル稼働させ、文字通り俺が気を失う直前まで貪り尽くしてきたのだから。


「ふふっ。だって、嬉しかったんだもの。アインが私の奥まで全部受け入れてくれて、本当に『私だけのもの』になったんだって思ったら……愛しさが止まらなくなっちゃった」


シーツからこぼれる白い肩を寄せ、リリアが俺の胸にスリスリと甘えてくる。


その瞳には、かつてのような「捨てられるかもしれない」という不安や焦燥感は一切ない。 『アインの正妻』としての自信と、満ち足りた余裕が漂っていた。


「さあ、着替えましょう。今日は飛空船のドックに案内してもらう約束でしょ?」


「ああ、そうだったな」


俺がシャツに袖を通そうとすると、鏡に映った自分の首筋を見て思わずため息が出た。


見事に、首元から鎖骨にかけて、無数の真っ赤なキスマークが刻み込まれている。


リリアが「他の女が絶対に寄り付かないように」と、昨夜念入りにマーキングした跡だ。


「うん、完璧な仕上がりね♡」


自分の『作品』を見て満足げに頷くリリアに苦笑しながら、俺たちは朝の宮殿へと足を踏み出した。


・・・


獣人連邦の首都アニマリア、第一浮遊ドック。


ここは、俺たちが技術提供を求めた『飛空船』の建造と整備が行われている心臓部だ。


「こちらが我が国の誇る最新鋭の飛空船ですわ。……どうか、これ以上氷を向けないでくださいませ……」


昨日すっかり心が折れ、完全服従を誓ったレオナ女王が、冷や汗をかきながら俺たちを案内していた。


リリアは俺の右腕にこれ見よがしに胸を押し付け、ピタリと寄り添って歩いている。


「すごいな。浮遊鉱石の出力を風魔法で制御しているのか。これなら帝国の空路を完全に……」


俺が巨大な木造船の構造に見惚れていると。


「……え? 嘘……?」


飛空船のタラップの下で、スパナを持ったまま立ち尽くしている一人の少女がいた。


油まみれの作業着(オーバーオール)に身を包んだ、栗色の髪の小柄な少女。頭には獣の耳がない。純粋な人間の女の子だ。


「その声、その顔……アイン? アインなの!?」


少女の手からスパナがカランと落ちた。 彼女は信じられないものを見るように目を丸くした後、弾かれたように俺に向かって駆け出してきた。


「おい、待て……!?」


「アイン! アイン、アイン!! ずっと、ずっと会いたかったぁっ!!」


ドンッ! と勢いよく、油まみれの少女が俺の胸に飛び込んでくる。 俺は一瞬戸惑ったが、その栗色の髪と、泣きぼくろのある顔立ちを見て、すぐに過去の記憶がフラッシュバックした。


「……クロエ? お前、クロエか!?」


クロエ。 俺が帝国の隔離の塔でリリアと出会うよりも前のこと。


劣悪なスラムの孤児院で、身を寄せ合うようにして一緒に育った、同い年の幼馴染だ。


彼女は手先が器用で、俺が孤児院を出た後、どこかの商人に買われていったと聞いていたのだが……まさか、獣人連邦で飛空船の整備士(メカニック)になっていたとは。


「うん、うんっ! 私だよ、クロエだよ! アインが生きててよかったぁ……っ」


クロエは俺の胸に顔を埋め、ボロボロと大粒の涙をこぼした。


「私ね、商人のおじさんに引き取られてこの国に来たの。いつか立派な整備士になって、自分の船を作って……絶対にアインを迎えに行こうって、ずっとそれだけを目標に頑張ってきたんだよ!」


「クロエ……」


「私、昔からアインのこと……ずっと好きだった。今度こそ、絶対に離れないからねっ!」


感動の再会。


そして、涙ながらの熱烈な愛の告白。 離れ離れになっていた幼馴染との再会劇としては、これ以上ないほど美しいシチュエーションである。


――だが。俺の背後から、大峡谷の底よりも冷たい『絶対零度』の吹雪が吹き荒れた。


ピキィィィィッ……!!


「……へえ。孤児院時代の、幼馴染。ずっと好きだった……なるほどね」


ドック内の気温が一瞬で氷点下に達し、周囲の飛空船にビキビキと霜が降り始める。


振り返らなくても分かる。俺の背後には、絶対零度の笑みを浮かべた『氷の戦乙女』が立っていた。


「ひぃっ!? な、なにこの寒さ!?」


クロエがブルッと肩を震わせ、俺の腕にしがみつく。


その瞬間、リリアがスッと俺の隣に並び立ち、クロエの手をピシャリと払いのけた。


「悪いけれど、気安く『私の旦那様』に触らないでくれるかしら。泥棒猫さん」


「だ、旦那様……!? アイン、この女の人、誰!?」


「……俺の、妻だ」


俺がそう答えると、クロエは雷に打たれたように顔を青ざめさせた。


「つ、妻……? 嘘、だってアインは私と……」


「嘘じゃないわ。証拠なら、ここにあるでしょ?」


リリアはふふっと優越感に満ちた笑みを浮かべると、俺のシャツの襟元をクイッと指で引っ張った。 あらわになった俺の首筋には、昨夜彼女が付けた生々しいキスマークが、これでもかとばかりに見せつけられる。


「あっ……」


クロエの顔が、絶望と羞恥で真っ赤に染まった。


「私たちは昨夜、心も体も永遠に結ばれたの。アインは私のすべてだし、私もアインのすべて。……孤児院時代に少し一緒にいたくらいの『過去の女』が、今さら入り込む隙間なんて一ミリもないのよ。分かった?」


完璧なまでのマウント。


以前のリリアなら、不安からただ暴走して相手を氷漬けにしていたかもしれない。


だが、昨夜の初夜を経て「自分がアインの一番である」という確信を得た今の彼女は、圧倒的な強者の余裕を持って、恋のライバルを冷酷にへし折りにきていた。


「う……うぅ……っ。だ、だからって……諦めないもん!」


クロエが涙目でボロボロと泣きながらも、必死に声を張り上げた。


「私の方がずっと前からアインを知ってるんだから! 幼馴染のヒロイン力が負けるはずないんだからぁっ!」


捨て台詞を残して、クロエはわぁぁんと泣きながらドックの奥へと走り去ってしまった。


「……逃げたわね。まあ、命があっただけ感謝しなさい」


リリアはフンッと鼻を鳴らすと、再び俺の腕にギュッと胸を押し付けた。


「なあ、リリア。クロエは大事な幼馴染なんだ。せっかく再会できたんだし、あまりいじめないでやってくれ」


俺が苦笑いしながら宥めると、リリアはジロリと俺を睨み上げた。


「ダメ。他の女に優しくするアインはお仕置きよ。……今夜も寝かせないんだから。私が世界で一番だって、骨の髄まで叩き込んであげるわ」


俺の首筋をペロリと舐め上げ、妖艶に微笑む最強のメガデレ妻。


幼馴染というフラグすらも、リリアの圧倒的な愛の重さとマウントの前では、ただ彼女の独占欲を刺激するだけのスパイスにしかならないのだった。


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