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食卓上、機械摂理夢遊論。  作者: 未曲
一章 『転生少女と廃棄聖女』
42/49

41 『大まかには迷宮入り』



                ▼△▼△▼△▼




『《闇魔法》を取得しました』

『《魔力操作》を取得しました』

『《咬合力強化・III》を取得しました』

『《鑑定遮断》を取得しました』

『《闇使い》を取得しました』


『《初級細剣術・VI》を取得しました』

『《初級短剣術・VIII》を取得しました』

『《初級大弓術・V》を取得しました』

『《初級盾術・VII》を取得しました』

『《初級大盾術・VI》を取得しました』

『《初級鎌術・VIII》を取得しました』

『《初級大鎌術・IV》を取得しました』

『《初級鞭術・II》を取得しました』

『《初級糸術・X》を取得しました』

『《回復属性適性》を取得しました』

『《食道強化・V》を取得しました』

『《舌強化・III》を取得しました』

『《調教》を取得しました』

『《緊縛》を取得しました』

『《命乞》を取得しました』

『《空中呼吸》を取得しました』

『『《毒呑》を取得しました』

『《崖登り》を取得しました』

『《糸上歩行》を取得しました』

『《泥上歩行》を取得しました』

『《統率》を取得しました』

『《突貫》を取得しました』

『《前転》を取得しました』

『《記述》を取得しました』

『《合気》を取得しました』

『《指揮》を取得しました』

『《俊足》を取得しました』

『《防御》を取得しました』

『《拡大眼》を取得しました』

『《色覚知識》を取得しました』

『《時間知識》を取得しました』

『《空間知識》を取得しました』

『《風向知識》を取得しました』

『《石工術・序》を取得しました』

『《細工術・序》を取得しました』

『《採取術・序》を取得しました』

『《社交術・序》を取得しました』

『《釣魚術・破》を取得しました』

『《剣使い》を取得しました』

『《弓使い》を取得しました』

『《盾使い》を取得しました』


『各種スキルに対し、熟練度の振り分けを行いました』


『《初級大剣術・I》が《初級大剣術・IV》に変化しました』

『《初級暗器術・I》が《初級暗器術・III》に変化しました』

『《演算領域拡張・I》が《演算領域拡張・II》に変化しました

『《三半規管強化・I》が《三半規管強化・IV》に変化しました』

『《巧緻性強化・I》が《巧緻性強化・IV》に変化しました』




                ▼△▼△▼△▼




 んー、やっぱダブってくるよねえ。


 まあ、五十人分のスキルに加えて、選択しなかったキマイラのスキルが熟練度として入ってくるから、特に大した問題では無いんだけど……ちょっと不満。そもそも、この分だと熟練度への変換効率はあまり良くなさそうだし。

 んー、いつの間にか――多分キマイラの口内で拳銃誘爆させた時とかの経験で手に入れたであろう《短縮詠唱》があるから良しとしておく。

 いつもの閾値超過のアナウンスは無かったけど。


『目的設定者の置かれていた状況を踏まえ、一時的な消音状態(マナーモード)に設定していました』


 なるほどね。つまりサボっていた訳ではないと。

 まあ、そういう諸々があるから、私の機嫌はそんなに悪くはない。だからと言って良い訳でもないけれど、それは常日頃の物だから問題無し。

 何一つとしてスキルを中級に至らす事も出来なかったのが、すこーし機嫌に影響している。


 恐らく、キマイラが端から全力を出していれば私は死んでいた筈なんだけど、せめて中級スキルの指標ぐらいはさあ。盾で身体を守ろうとして、それが意味を大した意味を成さずに胴体へと爪痕残された事ぐらい?

 あの時は、だーいぶアドレナリンで誤魔化したからなんとかなった。なんとかなっている時点で強さが分からない。

 中級程度のスキルが直接的な火力に通じるのかと言われれば首を傾げざるを得ないし。


 技量が上がる感じ? 対象の武器を初級より更に使いやすくなる、みたいな感じではあると思うんだけど。

 とりあえず現時点での体感としては、他人から奪った物(スキル)であるのが原因なのか、スキルレベルが初級であるのが原因なのか、初めて使う武器とかは流石に違和感があったりする。

 まあ、そこはほら、慣れだよね。


「……考え事ですか?」

「んー? うん。そんな感じ」


 宿の中で言葉を交わす。

 ベッドから起きて、準備して、朝食を食べて、そして今。


「と言ってもね……」


 これからの事について考えようが、手足の無い組織に一体何が出来るのかーという話ではあるんだけど。


 上が存在するには、必ず下が存在しなければならない。

 土台や基礎の無い建築物はいずれ容易く崩壊し、それは組織という枠組みもまた同じ。

 だから、組織という名の身体。その末端が欠損した状態で走り逃げる私達を追いかけられる訳が無い。出来るとしたら、精々が痛みに悶え苦しみ、身体の断面を手でみっともなく抑える事だけ。


 だからといって、ずっとここに留まっている訳にも行かない。

 大元の何か・誰かが盗賊ギルドとかの規模の大きそうな組織に頼らないで、普通に追手とか掛けてるかもしれないし。


「私、周辺の地理とか知らないんだよねえ」

「だから地図を買ったのでしょう?」


 うん、買ったね。四角銀貨二枚(二万円)でね。

 出費が嵩んで辛い。


 フィアと私の半分半分で出したとは言え、身を切るような思いをしたよ。私に最低限の倫理観があって良かったよね。

 でなければ今頃、強盗殺人でもしてただろうし。


「……えーと」


 私が色々と治安の悪い事を考えていると、フィアは地図を見ては90°回して、また矯めつ眇めつと見ては90°回している。数十秒そうして漸く正位置を見つけたのか、目を縦横に走らせていた。


「私達は今、ここにいます」


 と、ベッドの上にぱさりと置いたばかりの地図、その一点をびしりと差している。《言語完全知識》がインクで書かれたその都市の名前を、『ボーダー』だと脳に書き記していった。


 ボーダーて。

 この都市は国境に近いらしいから、まあ分かりやすくはあるんだけど、あるんだけど……そんなんで良いのかと問いたくなるね。


「で、諸々を考慮した場合、私達が行けるのはどちらかです」

「どちらかって?」

「どちらかです」

「どちらかなの?」

「どちらかです」


 どちらからしい。まあ私の奴隷が私に不利益を及ぼすとは思えないから、びしりと地図の一点を差していた指が、次に指し示した二つの地点に目を向ける。


『アルゼンタム』『フォルミーカ』。脳内に浮かぶのはその二つ。


 ほら、久々の仕事だよナビ。

 この街か都市について知ってる事はある?


『該当無し』


 カスめ。


「アルゼンタムはどんな場所なの?」

「鉱山があるらしいです」

「何の?」

「そこまでは分かりません」


 興味無い。次。


「じゃあフォルミーカは?」

「迷宮都市らしいです」

「何の?」

「そこまでは分かりません」


 ……んー、迷宮。迷宮ね。


「まず根本的な話としてさ、『迷宮』って何なの?」


 肩とか胸とか、腕を掛かりながらも身体の正面に流れているフィアの銀髪を指で弄りながら尋ねると、何故だかすっごく難しそうな顔をされる。


「……リーナさん、貴女は――」


 言い切らずに、中途半端な言葉を飲み込んだ。


 なんなのだろうか、その後に続く言葉は。

 まあ、考えても意味は無いかな。

 髪を弄っていた手を下ろして、白いニーソに包まれた彼女の足をぺちぺち叩いて話を催促した。


 ……結構触り心地が良い、ぺちぺちのしがいがある。


 ぺちぺち、ぺちぺち。


 と叩いて、時折リズムを混ぜたりして楽しんでいると、フィアに両手首を掴まれる。少し視線を上に向けてみれば、赤い頬が視界を掠めた。

 重い空気とかつまらないからね。こうやって払拭すればいい。

 ぺちぺちしてね。


「……迷宮(ダンジョン)について、どこまで知っていますか?」

「何も。一から十まで無知。重度の無知」


 溜息を付いてからの問いに正直な答えを返すと、また彼女は難しそうというか、苦そうな顔をするから、またぺちぺちした。


 で、また手首が握られた。


「ちゃんと説明しますから、ぺちぺちするのは一旦やめにしてもらえると……」

「私だってしたくてしてる訳じゃないよ」


「ええ……」という困惑の声を聞き逃しつつ、手首を掴んでいる手を取って、指と指を絡ませ合って手を繋ぐ。


 いえーい、恋人繋ぎぃ。


「なんか今日、テンション高くないですか?」

「まあね」


 だって丸一日寝てないもん。寝付けなかったし、寝れなかったし、寝れたとしても悪夢見るし、見なくても眠りは浅いし。そりゃあ、変なテンションになるのも仕方ない気はする。

 でも別に、わざわざフィアに言う程の事ではない。

 別に助けを求めたい訳でも、相談したい訳でもないし。


「ほら、私のテンションなんかどうでもいいから、迷宮について話して?」


 恋人繋ぎのまま『ぺちぺち』を示唆するように手を下ろそうとしたら、多少だけど血相を変えた彼女が言葉を選び出す。


 なんかDVしてる気分になってきた。

 いいね、楽しいじゃん。


「まず、第一に――迷宮(ダンジョン)とは魔力溜まりに生成される建物……多くは遺跡のような形を取った〝ナニカ〟だとされています」

「魔力溜まりって?」

「端的に言えば、界脈に生じた循環不全地帯の事です。そして……界脈、それ自体の呼び方は『地脈』だとか『龍脈』などありますが、何れにせよ世界に通っている〝脈〟に巡る筈の魔力が滞ってしまっている地域を指す言葉ですね」


 んー、難しい。


 難しいというか、暗黙知が横行していて私の割り込む余地が無い。フィーリングでなんとなく分かるには分かるけど、それは本質的な所にはまるで至っていない、浅瀬止まりの理解。

 私の悩んでいる表情を見て取ったのか、彼女も脳内で言葉を選ぶ為に悩み、私と彼女とで握り合っていた手の右だけを解いて、それが癖なのか人差し指をぴんと立てる。


「世界が人体だとすれば、魔力溜まりというのは血栓に当たります」

「なるほどね」


 やっぱ魔力とかそういうのより、身近な物の方が理解しやすいね。

 身近に過ぎるかもしれないが。


「じゃあさ、なんで迷宮(ダンジョン)って生まれるの?」


 私から逃げた右手を掴み直して、引き摺り下ろして、また恋人繋ぎに戻した。

 感触を確かめるように何度も握ると、徐々に指が強張っていく。


「一説に依ると、『龍が齎した呪い』だとか『邪神の前哨戦』だとか言われてますけど……私の知識の中で一番有力とされているのは、『瘴気』の所為らしいですね」

「らしいって何さ」

「確証が薄い、という事です」


 嫌悪と微かな憎悪が覗く声で、彼女は鈴の音を歪めて吐き捨てた。


 ぎゅっと眉を寄せて、不快そうに。


「『瘴気』ってなんなの?」

「災いを齎す夾雑物。害を与え、益を退け、世界に居座る害悪そのもの」


 言葉が強いね。


「【神聖魔法】の浄化対象であり、ここに在るべきではないもの……と、されています」


 今までの会話で分かるのは、迷宮(ダンジョン)に関しては大して解明が進んでいないらしいという事。あと、彼女が『瘴気』とやらを異様な程に毛嫌いしているのも。

 まあ『瘴気』については後で考える。

 やっぱり前提知識が欠けているし、フィアに聞いてもあまり話が進展するとは思えないから。なんというか、私との思考にズレを感じるんだよねえ。


「じゃ、次は現実的な話。迷宮(ダンジョン)からは何が出てくるの?」

「魔物、魔導具、スキルアイテムなどが主ですね」


 急な横文字。


「スキルアイテムって?」

「あれです、冒険者登録の為にした審査で、〈鑑定石〉とか使ったじゃないですか。ああいう物の事です」

「【カード】は違うの?」

「違います」


 違いが分からない。どっちも私からすれば理解の遠い原理で動いてるんだけど。


「迷宮(ダンジョン)から発掘されるスキルアイテムの中では、〈鑑定石〉が一番多く出るらしいですよ」


 じゃあ私の《行使鑑定》って、それほど珍しい物じゃないのかな。色々と見られると不味い私達なら、キマイラから《鑑定遮断》よりも《鑑定感知》を奪った方が良かったかなた……。


「《鑑定》は貴重ですから、〈鑑定石〉は幾らあっても困らないらしいです。買取価格はそこまで高くないと聞きますけど」


 ……んー。《鑑定》と《行使鑑定》の違いを比べたいけれど、《鑑定》を持っていないから出来ない。スキルアイテムの方の〈鑑定石〉を使えば体感として分かるかもしれないかな。

 現地に行って、拾ったら試してみよう。

 そもそも《行使鑑定》と《鑑定》に違いがあるのかも分からないけど。


「魔物と魔導具、スキルアイテムで迷宮(ダンジョン)からの産出品は全て?」

「いえ、もう一つあります」


 さっきみたいに人差し指をぴんと立てようとして、でも私の握力を前に諦めて繋ぎ合っている手を視線の所まで持っていって、下ろした。


「なんで手を繋ぐんです?」

「嫌?」

「嫌ではないですけど……」


 指と指の間同士を歯車のように噛み合わせ、その互い違いの結合を強めるようにぎゅっと両手を握り締める。

 その上でぶらぶらと揺らして、訴えかける。


「『もう一つ』の内容、早く教えて?」


 諦めたような溜息の分を補う為の、深い呼吸。

 その上で、ぎゅっと握り返してくる。


「迷宮核(ダンジョン・コア)、です。」


 フィアの手は、私よりも暖かい。

 推定二度の温度差は、握り合う事で多少は融和しているが、寒暖差が消え去る事は無い。


「それってどういう物なの?」

「迷宮(ダンジョン)に於ける存在核……みたいな物ですかね。どちらかと言えば魔石の方が近しいでしょうか」


 ……ああ、あの正八面体。脳幹の近くに張り付いている何かの結晶。という事は、迷宮(ダンジョン)はゴブリンと同類の生き物、延いては魔物という事なのだろうか。


 いや、それよりも――、


「ちょくちょく話に出てきてたけどさ、『存在核』ってなんなの?」

「――――」


 絶句。


 フィアの表情はそんな感じ。


「……知らないんですか?」

「うん」


 だってまだ〝ここ〟に来てからまだ三週間も経ってないし。

 仕方ないよね。


「だからさ。教えてよ、フィア」


 彼女を奴隷にした理由、その一端を果たさせる。


 あとついでに、手をにぎにぎする。

 だって柔らかいんだもん。


 やわやわしてて気持ちいいし。


「えーっと、存在核というのは、生身の【身体】の事です。眼に映る肉体という器や鋳型に則った純粋な精神体……を指す言葉です」

「……魂的な?」

「大凡は」


 魔石と迷宮核(ダンジョン・コア)が、魔物と迷宮の存在核という事なのかな。……いや、彼女がわざわざ迷宮核(ダンジョン・コア)は存在核よりも魔石の方が近しいと言ったのだから、違いがあるのだろう。


「存在核というのは実体として在る物なの?」

「無いですね。実体とは別に在ります」

「魔石は存在核?」

「後付けというか……存在核の派生形、ですかね」


 存在核の方がより根源的な感じか。で、そこから派生したのが魔石。であれば迷宮(ダンジョン)には前提として存在核のような物があり、そしてそこから迷宮核(ダンジョン・コア)が生まれた、みたいな流れなのかな。

 そこまで考えてから両手を離してあげて、ベッドに沈み込ませるように後ろの方に手を突く。


「じゃ、行こっか。フォルミーカに」




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